〈file5〉
「ちっ!こんな所に呼び出しやがって……!」
「まぁまぁ、お父様。
どうせ誰かさんが雇った下らない探偵でしょう。座っていれば、話しは済みます。
どうせ、クソ見たいな推理しか出来ないのだから」
「……貴方達、それはいくら何でm―――」
「お待たせ致しました。それではこれより、謎の死を遂げた三兄弟の事件の真相を、明らかにしましょう」
この家にいる皆に、応接室に集まって貰った。
やはり、長男と旦那様は似た者同士だった様で、僕達への文句を口々に言っている。
が、今はそんな事どうでもいい。
手前に座った中年の男性が旦那様で、その旦那様の隣に座る長男。
それからその2人とは離れた所にオロオロと所在無さそうに座られている方が貴婦人。
先程の使用人と料理人にも立ち会って貰っている。
皆の瞳に映る人物像はどんな人なのだろうか。
生意気なガキ?
それとも探偵気取りの男?
考えてもしょうがない。
「まず初めに、皆さんにはこの「食事記録ダイアリー」を見て頂きたいと思います。
―――もちろん、お子様が亡くなった日の食事を」
「わかったわ」
こんなただの一般人の言う事、しかも命令など、世間の言う偉いお方は誰一人として耳を傾けない。
貴婦人は、元々心お優しい方なのだろう。
「ったく、こんな事をして何n―――」
「……!あら、陽矢が亡くなった日のお食事、変じゃないかしら?
この日、確かに貴方は鮭アレルギーの陽矢に配慮してタラを煮込んだと……」
旦那様基、依頼人の弟君がまた失礼な言葉を発す前に、貴婦人がそう話した。
先程から事件を解く僕や店長に対して失礼な言葉を並べていた旦那様のお陰で眉間にシワが溜まっていたが、奥様のその言葉で僕の眉間はいつも通りに戻り、少し口角が上がる。
「……!」
「……やはりそうですか」
「どう言う事か、教えて下さる?」
「もちろんです」
奥様がそう話された時、微かながらに料理人の肩が反応を示した。
やはり、そういう事なのだろう。
「そこに置いてある母子手帳と合わせて見て貰って分かる通り、お子さんの死は毒によるものではなく、アレルギーによるアナフィラキシーショックで呼吸困難になり、その後数分で死に至った、と言う事です。
アナフィラキシーショックは、今この世で聞くことはない言葉。
それもそうですよね、食物アレルゲン失症制度があるのだから。
使用人さんからお聞きしました。
亡くなったお子さん、アレルゲン失症制度を受けられていなかった様ですね、旦那様」
「旦那様……っ」
僕の長々とした説明を聞いている奥様の顔色は、みるみる内に青くなり、対して旦那様は顔を赤く染め、まるで茹でダコの様なさまになっていた。
そう、食物アレルゲン失症制度を旦那様は長男にしか受けさせていなかった。
その主な理由は後継者を失くす為の長男の策略。
その事を奥様が知らなかった理由もただ一つ、長男と旦那様、それから料理人の3人が共謀して兄弟達を殺すその日まで、隠蔽しなければならなかったから知らされていなかったと言う事。
奥様には事前に「食物アレルゲン失症制度は受けさせた」と事実を偽っていたのだろう。
使用人がその事を知ったのは偶然か必然か、今は誰にも解らない。
「お前っ……何を根拠n―――。……!」
「申し訳ないのですが、うちの看板息子に手を出すのはお辞め頂きたい。
警察には訴えたくありませんので、少々彼から離れて下さいますか?」
「あ……、信じられないと言うのでしたら、もう一度警察か探偵を呼んで調べて貰っては如何でしょう?
知り合いのかしこ〜い探偵なら、伝手がありまして2人紹介出来ますので、お電話番号と事務所名をご教示しましょうか?
もちろん、旦那様の態度に怯まないような、つよ〜い探偵を!」
「……えぇ、お願いするわ」
「お前までっ……!〜〜〜っくそ……!」




