〈file8〉
「貴方しかいないと言うことです」
「………」
「なるほど……」
「亜蘭さん、自首しましょう?今ならまだ間にa―――」
「あーあ〜。瀬凪くん、結局自首を勧めてくるんだぁ〜。そういうとこが嫌だから翠花の居場所だけ見つければ良いって言ったのに……。そうすれば、翠花も殺して全てを片付けられたのにな……。探偵とか出してくるんだもん。それ、規約違反じゃない?」
「っ……それは……っ」
「亜蘭さん、それは私の責任です。彼は何も悪くない。責めるなら私を責めて下さい」
全ての事が終わる時、時刻はもう日暮れ時。
陽が差し込み、照らされた僕と店長。
そして、照らされた僕達の向かいに鎮座している亜蘭さんは対になっている状態だ。
これが、僕の解決。
これで正しいとか、望命くんの意思に添えたとか、そんな事は一つも思っていない。
でも、この街でも少しでも、笑顔になれる人が増えてくれる様に。
自首を勧める僕に、亜蘭さんは顔を歪めた。
醜い愚かな殺意に呑まれたその顔で、僕を睨む。
探偵に捜査協力を頼む事は規約違反。
確かにそうだ。
今まで望命くん達にごまんと捜査協力を頼んできたが、本当は良くない事。
3人には3人のやらなければいけない事があって、いくら依頼が来ないからと僕たちの依頼の解決を手伝ってもらう事は本当なら………。
「規約違反ならば、俺達も最初から話しに乗ったり何てしてません!」
「……!望命……くん……、?」
「せや!瀬凪くんが俺らに頼んでばっかって言うとるけど、俺らやって事件解決を手伝ぅてもろたりしてんねや!何も知らん癖に、俺らの事に口出しせんといてくれるか!?」
「2人の言う通りだ。それは貴方の逆恨み、というものでは?」
「3人とも………どうしてここに?」
店長が僕の前に立って亜蘭さんを止めてくれたその時、まるで漫画の1ページの様に、コルリスの扉が勢い良く開かれ、鈴の音が鳴り響いた。
そこに立っていたのは、クレインサーベイの皆。
しかも、望命くんと眞人くんだけでなく、冬李さんまで来てくれていたのだ。
望命くんの言葉に続き眞人くん、冬李さんも亜嵐さんに詰め寄る。
じりじりと後方に下がる亜蘭さんは、逃げる気満々と言った様子でこの探偵と助手、それから僕達から逃亡出来ると思っているらしい。
何て浅はかな熟考しか出来ない人なのだろう。
僕と体力皆無な眞人くんはともかく、大柄な店長と日々殺人犯を追いかけ回している望命くんと冬李さんから逃げられるわけがない。
あーあ、だから望命くんが僕に「解決」を委ねてくれている隙に自首を勧めたのに……。
「くそっ………、くそぉぉぉぉぉぉぉ!」




