〜エピローグ〜
7年後―――カフェ・コルリス
「ふぁ〜」
「あれ、望命が欠伸?珍しいね、眞人ならわかるけど」
「聞こえてるからな、瀬凪?」
「あー……、うん。ちょっと朝まで調べ物してて……徹夜。
そう言う瀬凪くんもシャツのボタン、一つ掛け間違えてるよ」
「うぇ!?あ、本当だ……!」
カフェ・コルリス店内に和気あいあいとした会話が軽快なBGMと共に流れて行く。
今日はカフェ休業日。
いつもの様に仕事終わりにコーヒーを飲みに来た幼馴染達に、榮倉瀬凪はこれもまたいつもと同じ様に淹れたてのコーヒーと余ったチョコレートケーキを提供する。
今日は望命や眞人だけではなく、冬李も来ていたことから、店長は珍しくキッチンから出て来て冬李と話している様だ。
「瀬凪くんも眞人も、望命も立派になったなぁ」
「あぁ。でも、彼らの物語はこれからも続く。それを私達は見守って行こうじゃないか」
「そうですね」
店長と冬李、そして麗羽の3人が瀬凪達を見ながらそう会話を交わす。
七年前の瀬凪は日常に刺激を求めていた。
だが、あの夜の出来事を経験してからはいつまでも、こんな平穏の日常が続けば良いと願っている様で、その事には店長も満足げな微笑みを浮かべている。
「?あれ?こんな箱あったっけ?」
望命、冬李、眞人が帰ってから瀬凪はカフェを閉め、店長の部屋の掃除を念入りにしていたようだ。
店長は七年経った今でもポンコツで、掃除が苦手だから定期的に瀬凪がこうして掃除をしに来ている。
そして今日も今日とて店長の部屋の掃除をする為、全ての家具を退かすという作業から始めた瀬凪。
そこで、見覚えのない小さな長方形の木箱を見つけた。
瀬凪も瀬凪で、相変わらずの好奇心旺盛っぷりをここで発揮。
何と、その木箱を店長に無許可で開けてしまったのだ。
ガコッと言う見た目に似合わず硬い音が鳴れば、蓋と箱が分離する。
その箱の中から小さな紙切れが一つ、クーラーの風に乗って床へピラリと裏向けに落ちた。
「ん?これって……」
瀬凪が落ちた紙切れを拾うと、その裏面には「3018年12月6日」とちょうど七年前の冬の月日が店長の字で書かれており、表面にはここ、カフェ・コルリスで撮ったであろう集合写真がカラー印刷されていた。
満面の笑みの瀬凪を望命と眞人が両端から囲み、彼らの後ろから麗羽と店長、冬李さんが小さく微笑んでいる。
この写真を撮った時の事を、瀬凪は鮮明に覚えている。
〝望命くんがまた何処かに行っちゃうかもしれないからね、写真に残しておこう!
もしまたあんな事があれば、僕と眞人くんが証明してあげるよ。
君の帰って来る場所は、いつでもここにあるんだよって〟
確かにそう望命に言った。
記憶を書き出すまでもない。
今瀬凪は、この写真を通して望命と眞人とは強い絆で結ばれている事を再認識した。
瀬凪が今も薄い唇に弧を描くと、どこからともなく店長の聞き慣れた声が聞こえてきた。
「瀬凪く〜ん!相談所開けるよ〜」
「はーい、今行きまーす!」
ありがとう、とても長い年月を僕と共に過ごしてくれて。
泣いて、笑って、叫んで、怒って……。
全ての感情を僕に、僕らに感じてくれてありがとう。
いつか僕が僕自身の弱さを愛せた時、本当のヒーローになれるのだろうか―――。




