〈最終話〉
「さ、コルリスに帰ろう?
店長も麗羽も冬李さんも、きっと待ってるよ」
僕が差し出した手を流した涙を拭っていた望命くんは取らず、代わりにこう口にした。
「……立てない」
「「、は?」」
「ここまで登ってくる事に体力使いすぎて寒いし、眠いし立てない。
眞人、背負って」
「はぁ……?お前、俺が体力無いの知ってんだろ?」
「嫌だ。眞人がいい。
眞人が背負ってくれなきゃ、俺ここから動かないからね」
「子供かッ!……ったく、ほら」
望命くんが頬を膨らませて眞人くんに抗議すれば、彼はすぐに諦め、この頂上という場所でしゃがみ、望命くんを背負った。
先程とは打って変わって弱く仰ぐ風が僕の頬を優しく撫でる。
望命くんを背負った眞人くんが立ち上がると同時に、あの長い階段へ続く扉を僕が開いた。
今度は扉が重くない事に安堵しながら、眞人くんの行った道を辿って彼らに追いつく。
「……眞人」
また永遠に続く階段を下っていると、望命くんがカンカンと金属音しか響いていなかった延朴塔に、一つの音を響かせた。
「ん?」
「瀬凪くん」
「何?」
「……ありがと」
「「……」」
望命くんの突然の感謝の言葉に僕と眞人くんは顔を見合わせ、クスリと笑った後、2人揃って望命くんの名を呼んでからある一言を彼に差し出した。
「「胡琶/望命くん」」
「?」
「「おかえり!」」
まるで一人ぼっちの少年に手を差し出す様に、光を灯すように、傷付いた心を縫い付けるように、望命くんにその言葉を差し出す。
すると、彼は先ほどの鬱々とした表情ではなく、吹っ切れたような優しい顔で僕らを見つめた。
「!……ただいま」




