〈file3〉
扉を開けた瞬間、冷たい夜風が僕らの体を強く叩いた。
延朴塔の頂上は、すべての光を拒絶するかのように、闇に包まれていた。
遠くに見える街の灯りだけが、この場所が世界から切り離されていることを告げている。
―――そして、その暗闇の中に、彼は立っていた。
かつて、いつも笑顔で、未来を語っていた幼馴染。
彼の背中からは、もう、あの日の温かさは感じられない。
ただ、風に揺れる髪と、その細い肩が、今にも消えてしまいそうに震えているのが見えた。
「何で来たの……?」
絞り出すような声が、夜風に乗って僕らの耳に届いた。
その声には、怒りも、悲しみも感じられない。
ただすべてを諦めた、深い絶望だけが満ちている様な気がした。
「眞人達には、関係ないでしょ……」
眞人くんは何も言わずに、僕の一歩後ろに立ってくれた。
彼は、眞人くんは、自分だって望命くんに何か言いたいはずなのに、その言葉をキュッと押し込めて僕に発言権を与えてるくれる。
彼の沈黙は僕に勇気をくれた。
僕が今望命くんにに伝えるべきことは、ただ一つだけだ。
「関係ないなんてこと、あるわけないじゃん!」
僕の声は、少し震えていた。
でも、それでもよかった。
「望命くん……。君の痛みは、僕には全部は分からないかもしれない。でも……」
僕は、震える声で続けた。
「……でも、僕と眞人くんには、君のそばにいることはできる。君が一人で戦ってきた痛みを、僕らが一緒に背負うことはできるんだ!」
望命くんは、僕の言葉を聞いて、小さく笑った。
「…笑わせないでよ。
瀬凪くん達に、何がわかるって言うの……?」
その声には、嘲笑が含まれていた。
「…俺はもう、探偵じゃない。
何も出来ない、ただの人間なんだよ……」




