〈file2〉
静かな夜風が僕らを仰ぐ。
ここは延朴塔の頂上へ続く、終わりなき階段。
塔の電気は消え、エレベーターは動かない。
夜闇に浮かぶ一歩一歩が予想以上に重く、僕らの足を苛んだ。
終わりなき階段を登りきり、頂上へ続く扉のノブに手をかける。
何度深呼吸しても、心を落ち着かせても、手の震えは止まらない。
僕は震える自分に語りかけた。
〝今から望命くんを救うのに、そんなに弱気になってどうするんだ。
彼の心も身体も、全部救う……それが真のヒーローの役目なんじゃなかったのか〟
ノブに手を掛けてから数分経った。
後ろには何も言わず待ってくれている眞人くんがいる。
後は僕が一歩踏み出すだけなのに、どうしても震えが止まらない。
いや、きっとこの震えは望命くんを見つけたとしても止まらないだろう。
僕の心に不安が残り続ける限り、震えは止まらない。
でも、それでも良いんだ。
アニメや映画に出て来る様なヒーローは、きっと僕みたいに意気地なしじゃないし、弱くはないのだろう。
もし、そんなヒーローになれる様な完璧な人がこの世にいるとすれば、その人と僕らは死ぬまで相容れない存在なのだろうと深く思う。
でも、僕みたいに弱いヒーローだからこそ、誰かの痛みを分かってあげられるんだ。
望命くんの弱さを、絶望を分かって、心も身体も救ってあげられるヒーローは、この世に僕と眞人くんしかいない。
「……開けるよ」
「うん」
そして僕らは扉を開けた。
今にも散って行きそうな幼馴染を救う為に―――。




