千羽物語 壱
ボロボロの廃れた廃村に一人、男がいました。
「ここは、なにもないな」
そう一言呟き帰ろうと歩いていると、とある家で足を止めた。
「何だ?この家」
そう言い男はそのまま帰ろうとしたが、その家から放たれる独特の雰囲気になぜか魅了され、その家に吸い込まれるように入っていった。
家に入った男は何か無いかと思い探していると、色褪せて古びている箱を見つけた。
「何だ?この箱」
箱を開けると古びたカメラが出てきた。
「なんだこれカメラ?」
カメラを箱から取り出すと家に取り巻いていた独特の雰囲気がスッと消え去った。
「フィルムカメラか、俺、フィルムカメラの使い方知らないな」
そう一言男が言った瞬間、さっきとは別の凍り付いた雰囲気が男に重くのしかかった。
「何だ?この空気?」
男は初めて心から恐怖した。
男はカメラをそっと置き、逃げるように廃村を出た。
「なんだったんだ?アレ」
男は考えている間、睡魔に襲われそのまま眠ってしまい朝になってしまった。
「ん、もう朝か」
そう男は呟き自分の胸元を見ると昨日廃村に置いてきたはずのカメラがそっと置いてあった。
男は反射的にそのカメラを自分の胸元から払い除けてしまった。
「な...何でカメラがここに?」
男は不気味に思いながら恐る恐るカメラを手に取ってみるが、昨日のような、不気味な雰囲気はなかったものの、どこか不安な気持ちになる空気は消えることは無かった。
男はカメラを自分の部屋のテーブルに置き学校へ向かった。
学校へ着いた男は自分の席に座りあのカメラの事を考えていた。
「あのカメラ一度使ってみてもいいんじゃないか」
そう男は思った。
何を隠そう、この男は心霊スポットマニアなので休みの日は進んでそう言う曰くのある場所に行っている人物なのである。
「まずはフィルムカメラの使い方を知る必要があるな」
そう男が呟くとカメラに詳しい友達に聞くことにした。
「廃墟で拾ったカメラを見て欲しい、だって?」
「ああ、使えるか見て欲しいんだが、いいか?」
「ほぉ、じゃあ見てみるよ、しかし心霊スポット巡りだなんて物好きなものだなぁ」
友達は男を揶揄うと学校のチャイムが鳴った。
「放課後、俺の家に来いよ、このカメラ見せてやる」
「お、おう」
友達は男を不気味に思いながら勉強を始めた。
放課後、男の家に向かっている間、男とその友達はそのカメラについて話していた。
「お前が拾ってきたそのカメラ、何年前の物なんだ?」
男に尋ねた。
「そういえば、知らないな」
「え?」
「まあ、古いってことだけは言える」
「何だよそれ」
友達は男のさっぱりした返答に不満を浮かべながら、男の家に向かった。
男の家に着き、ドアが列のカメラを見ながら口を開いた。
「こりゃ酷えな、バッテリーは壊れてるし、カメラのレンズが割れてるし、何よりフィルム入ってないよ」
「そうか」
男はカメラが使えない事に落胆したが、心霊スポット巡りができなくなる訳じゃないので、気にしない事にした。
「ありがとうな」
「どういたしまして」
男はすぐに布団に包まった。
だが男は何故か諦めきれず、カメラの電源をだめ元でつけてみた。するとバッテリーが壊れているはずのカメラが勝手にフラッシュを焚いた。
「眩し!」
男が目を開けると、何故かたった今撮られたはずの写真が足元に置かれていた。
男が写真を見たとき、驚愕した。
「何だこれ!」
その写真には男の後ろに女性の顔が何個も重なっていた。男は恐怖に狩られ、その写真を破り捨ててしまった。
すると後ろから無数の手が苦しそうに男にしがみついてくる感覚があった。
すると手は引っ込んでいき、女性が居るであろう後ろから叫び声が聞こえた。男はその叫び声を聞いてしまい、自分のベッドに駆け込みベッドへ潜り込んだ。
翌朝、男は荷物をまとめて何処かへ向かう準備をしていた。