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5-9 侵入と阻止



水の迷宮での依頼を終え、ルイナたちはギルドへと向かっていた。探索と戦闘の疲れが重なり、特にスオリスは眠気を隠せずにいた。


「はぁ……やっぱりルイナの魔力に包まれてるのが一番落ち着くんだよねぇ……」


スオリスはふわりと欠伸をすると、ふらつきながらルイナの肩へもたれかかる。次の瞬間、胸元に下げられたペンダントへと吸い込まれるようにして消えた。


ノクスは、その光景をじっと見ていた。


「……ほう」


その短い呟きに、ルークは嫌な予感を覚える。


「……まさか」


不安を感じたルイナが、慌ててノクスに視線を向ける。


「ちょっと待って、ノクス?」


しかし、ノクスはペンダントに収まったスオリスを見つめながら、静かに決断を下した。


「私も入れるようにしよう」


「はぁ!?」


ルイナとルークの驚愕の声が重なった。


「問題ない。スオリスができるなら、私にもできるはずだ」


ノクスの表情は真剣だった。


「いやいや、アンタはでかいし無理でしょ!?」


スオリスがペンダントの中から慌てて顔を出した。


「ならば、小さくなれば良い」


「は?」


「え?」


またもやルイナとルークの声が揃った。


突如、ノクスの身体が黒い霧のように揺らぎ、瞬く間にその姿が縮んでいく。気づけば、スオリスほどの小さな体になっていた。


「えええぇぇぇ!?!?」


ルイナが悲鳴を上げるのと同時に、ルークが慌てて声を張る。


「……おいやめろ!!」


しかし、ノクスはすでに行動に移っていた。


「……入るぞ」


その言葉と共に、ペンダントの中へと姿を消す。


「ちょ、ちょっと待っ……うわぁぁぁ!?」


スオリスが焦って止めようとしたものの、時すでに遅く、ノクスはペンダントの中へと完全に入り込んでいた。


「えええぇぇぇ!!!!」


ルイナは目を見開き、ペンダントをまじまじと見つめる。ルークはこめかみに手を当て、深い息をついた。


「……何やってるんだ」


ペンダントの中から、スオリスの怒声が響く。


「ちょっとおおお!? ギュウギュウなんだけど!!」


狭い空間で押し合いながらも、ノクスは冷静に状況を分析した。


「……ふむ、居心地は悪くない」


「いやいやいやいや! 悪いから! ていうか狭い!!」


ルイナはペンダントをつまみ上げ、困惑した表情で呟く。


「……ペンダントの中、密度高くなってない?」


ルークは眉をひそめながら、「狭いから出ろ」と至極まっとうな意見を述べた。だが、ノクスは首を傾げる。


「問題ない。広げる方法を考えればいい」


「いやいやいやいや!?」


スオリスが必死に抵抗する。


ルークは、じわじわと頭痛がしてくるのを感じながら低く呟いた。


「……やめろ」


その言葉に、ノクスはまじまじとルークを見つめる。


「ルーク、お前は何を気にしている?」


不意に、ルークの動きが止まった。


「……………」


沈黙のまま、視線を逸らすルークをじっと見つめていたスオリスが、ハッと気づく。


「あっ……」


スオリスの口元に、にやりとした笑みが浮かんだ。


「……まさか、ルーク」


ノクスが目を細める。


「まさか?」


ルイナがきょとんとしながら二人のやりとりを見つめる。


スオリスは確信したように、言葉を紡いだ。


「もしかしてルーク……ルイナの胸元にノクスが入るのがイヤとか……?」


その瞬間、ルークの顔が一気に紅潮した。


「……………」


「えっ!? こ、ここの問題!?」


ルイナもようやく状況を理解し、顔を真っ赤に染める。


「……ならば、ペンダントの位置を変えれば問題はないのでは?」


ノクスが真剣な表情で提案する。


「やめろ」


三度目の即断。その声は、もはや怒気を孕んでいた。


スオリスが耐えきれず、吹き出した。


「ぷっ……ルーク、嫉妬してる~~!!」


「なっ……!?」


ルイナはさらに顔を赤らめ、動揺しながらペンダントをぎゅっと握る。


「なるほど、これが嫉妬というものか」


ノクスが淡々とした口調で言う。


ルークは目を逸らしながら、短く否定した。


「……違う」


「違わなーい♪」


スオリスが即座にツッコミを入れる。


限界を迎えたルイナは、顔を真っ赤にしながら叫んだ。


「も、もういいからぁぁぁ!!」


その勢いのままペンダントを強く揺さぶると、中からノクスとスオリスが弾かれるように飛び出した。



こうして、一行は何事もなかったかのようにギルドへと歩みを進めるのだったーー。



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