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5-6 契約者たちの夜


---


村へ戻る道中、ルイナたちはどのように報告するか相談していた。


「ノクスのことは伏せるとして、どう報告する?」


スオリスの問いにルイナは腕を組んで考え込む。


「うーん……やっぱり、浄化魔法で解決したことにするしかないよね」


ルークが淡々と頷く。


「確かに、それなら説明がつく。俺も適当に補足する」


ノクスは少し呆れたように二人を見た。


「つまり、私の存在はなかったことになるのか?」


「いや、そうじゃないけど……ほら、人間に精霊の話をしても通じないでしょ? それに、あくまで"依頼達成"が目的だからね」


ルイナが笑顔で答えると、ノクスは「ふむ」と短く頷いた。



---


村に着くと、長老らしき老人が出迎えた。


「おお、お帰りなさい。さて、黒い霧は……?」


ルイナは自信満々に答える。


「魔力の残留が原因だったので、浄化魔法で解決しました!」


ルークも頷きながら、適当に話を合わせる。


「ああ、あの霧には魔素が混じっていたな」


村人たちが感嘆の声を上げる。


「浄化できるなんてすごい! これで安心できますね!」


ノクスはその様子をじっと見つめ、わずかに眉をひそめた。


「……どうにも解せぬな」


スオリスがこっそり囁く。


「まぁまぁ、アンタもアタシも普通の人には見えないんだから。ルークとルイナに出会えてよかったじゃない!」


ノクスは一瞬考え、薄く笑みを浮かべた。


「フッ……そうだな。こんな愛おしい存在に出会えたのだ、逆に感謝するべきだな」


その言葉とともに、スオリスの姿をそっと掌に乗せ、慈しむように見つめる。


「……お前は、私にとって唯一の存在だ」


「えっ、えぇぇ!?!? いやいや、突然何!??」


スオリスの顔が真っ赤に染まり、ジタバタと暴れ出す。


「何が突然だ? 私は、最初からそう思っていた」


「いやいや、私たち、さっき出会ったばかりでしょ!?!?」


「出会いの長短は、重要ではない」


「いや、それ普通は重要だから!?!?」


スオリスの必死のツッコミに、ルークは淡々と傍観していた。


「……」


「ルーク、見てよコレ! ノクス、こんな感じだよ!?」


「……そうか」


「ちょっと!? もっと何かないの!?」


「……俺に聞かれてもな」


ノクスがルークの方を見て問いかける。


「ルーク、何か問題があるのか?」


「……いや、好きにすればいい」



---


宿に案内され、それぞれ部屋へ入ろうとしたとき。


「待て、お前はこっちだろう」


ルークがノクスの動きを阻止する。


「?」


「何でそっち(ルイナの部屋)に入ろうとするんだ」


「何か問題があるのか?」


「大ありだ」


スオリスが呆れながら説得する。


「ノクス…さすがにちょっと…ねえ?ルイナ」


「う…ん…」


ノクスはしばし考え、仕方なさそうに頷いた。


「……仕方ない……」


ようやくそれぞれの部屋へ。



---


ルイナとスオリスは部屋に入ると、すぐにベッドへ飛び込んだ。


「ねえスオリス、ノクス、あなたを見て懐かしいって言ってたけど、スオリスは何か感じた?」


「ううん…でもなんか…ヘンな感じはするかも」


「ヘンな感じ?」


「なんか…こう…むず痒いような…あったかいような…」


「へぇー?じゃあ嫌じゃないんだ?」


「なっ…ルイナまで!!…まあ…でも…初めて会った気はしない…ような…」


スオリスがモゴモゴと呟いていると、ふと真剣な顔でルイナを見た。


「そっちこそ!ルークとどうなのよ!」


ルイナは少し考え、ぽつりと答えた。


「ルーク?彼は…真面目で、責任感がすごく強い人だから…きっとまだお世話係の延長にいるんじゃないかな…」


そう呟くルイナの顔には、わずかな寂しさが滲んでいた。



---


一方、ルークとノクスの部屋。


ルークは隣の部屋から聞こえる楽しそうな声を聞きながら、壁に手を添えていた。


(ルイナたちの声…良かった…ルイナ楽しそうだな……)


そんな彼を、ノクスが冷静に見つめる。


「お前…気持ち悪いぞ」


「なっ……お前こそ初めて会った存在に随分熱を上げてるじゃないか」


「初めて会った……いや、スオリスとは恐らく昔に会っている。懐かしいと…いう感じは嘘ではない」


「お前も…記憶がないのか?」


「"お前も"?どういうことだ」


「スオリスはルイナに会う前の記憶がないらしい」


ノクスは静かに目を閉じ、何かを思い出そうとしていた。


「……記憶…」


「"聖女"や"封印"については?」


「……知っている気はするが…思い出せない」


ルークは慎重に言葉を選んだ。


「…お前には話しておいたほうがいいだろう。ルイナは"聖女"だ」


ルークはこれまでの事を彼に話す。

ノクスの目が鋭くなった。


「………神殿…聖女…封印……」


次の瞬間、ノクスの脳裏に走る光景。


「ッ!!」


「どうした!?」


「泣いてる…精霊…?…あれはスオリスだ…間違いない…なぜ泣いている…姿も…」


「……?(謎が多すぎるな……ミアが神殿に来た理由は十中八九この件だろう。制圧された今深く調べるには絶好の機会のはず…どうにか聞くことはできないか…)」


ノクスは静かに息をついた。


「……だが、私が思い出せないことが、何かの意味を持つのだろう」


ルークはその言葉を胸に刻んだ。


互いの夜は静かに更けていく。



---



翌日、ギルドへ戻り、新たな依頼へ──。







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