1-4 契約の発覚と村での目覚め 前編
湖畔の村の酒場。朝日が差し込む木造の建物の中、村の男たちが集まり、昨夜の出来事について話し合っていた。
「……で、結局あの娘は何者なんだ?」
「さぁな。ただの旅人にしちゃ、ずいぶんと上等な服を着てたぜ」
「見たことのない生地だったな。ありゃ貴族のもんじゃねぇか?」
男たちはそれぞれ酒瓶を傾けながら、口々に憶測を交わす。
「いや、まさか誘拐されて逃げてきたってオチじゃねぇだろうな?」
「……もしそうなら、厄介なことになりそうだな」
「まぁ、念のため神父様に相談しとくか」
「そうだな。最悪、神殿に報告することになるかもしれんしな」
場が少し静まる。誰も軽率な判断を下すことはできない。
「そういや、昔話にあるだろ……“聖女様”ってやつ」
「ははっ、そんな伝説が本当にあるなら、俺たちの村も栄えるんだがな」
冗談めかして笑う村人たち。だが、その視線の奥には、どこか慎重な色が滲んでいた。
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同刻――
静かな木造の部屋。
遠くで鶏の鳴き声が響き、微かな風がカーテンを揺らしている。
ルイナはゆっくりと目を開けた。
(……ここは……?)
天井に走る木の梁、簡素ながらも温かみのある家具。陽の光が穏やかに差し込み、空間全体が落ち着いた雰囲気に包まれていた。
(……夢、じゃないんだ)
身体を起こそうとするが、まだ重い。昨日の影響が残っているのかもしれない。
だが、異変に気づいた。
胸元に触れる、冷たい感触――
(……これは?)
指先に触れたのは、透き通った青い宝石のペンダント。
(あ…昨日の…ペンダント……)
不思議に思いながら、そのペンダントをそっと握りしめる。
「……スオリス?」
試しに名を呼ぶと、ペンダントが淡く光を放ち、かすかな声が響いた。
「……ルイナ……?」
驚いて瞬きをする。
「スオリス……? どうして、ペンダントの中に……?」
「……私にもわからないの……気づいたら、ここにいたの」
スオリスの声は弱々しかった。
「……無理しないで、少し休んで」
「うん……でも、ルイナ、あなたの方こそ……」
スオリスが言葉を濁す。
「……あなた、何か変な感じしない?」
ルイナは自分の体調を改めて確認した。
確かに、昨日よりは体が軽い。ひどい吐き気も、今は収まっている。
「……昨日よりは、良くなってる気がする」
「……ルイナ。あなた、自分の魔力を感じることはできる?」
スオリスの言葉に、ルイナは戸惑った。
「魔力……?」
「ええ。目を閉じて、ゆっくりと呼吸を整えてみて」
言われた通りに、ルイナは静かに目を閉じた。
ゆっくりと息を吸い込み、自分の内側へ意識を向ける。
すると――
(……あれ……?)
心の奥で、微かに何かが流れているのを感じた。
それは、水のようにゆるやかで、澄んでいて――
「……これは……」
驚いた瞬間、ペンダントが再び淡く光を放った。
スオリスが息を呑む。
「……やっぱり、そうなんだ」
「……?」
「ルイナ……あなた、私と“契約”してる」
その言葉に、ルイナは思わず息を呑んだ。
「契約……?」
「普通、契約はお互いの意思が必要なの。でも……こんな形で契約が成立するなんて、聞いたことがない……」
「……じゃあ、私は?」
「……普通の人間とは、違うみたいね」
スオリスの言葉に、ルイナは強く困惑した――。
村の女性→マーサ




