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チョコマカロン

作者: しろかえで

今日も私の大好きな娘と義母のお話です!(#^.^#)

『手作りのチョコレートマカロンを入れるラッピンググッズを100均で買って来て』

 スマホに表示された義母からのメッセに思わず唸ってしまった。


 一昨日のお休みの日、瞳ちゃんがバレンタインデーに贈るチョコを手作りすると言うので、彼女に付き合って100均へ行き、割れチョコやシリコンモールドを始め、チョコペンに、カラーシュガー、アラザン、チョコスプレー、タルトカップと一通り買い揃えた。

「奏ちゃんも作ったら?」と言われたけど私は真っ向から否定して、ひたすら瞳ちゃんの助手に徹した。

「あげるあげない」以前の問題で、私は“バレンタインの輪”の中に入りたくなかった。

 それは私が“女がぶっ壊れている”からでは無い。

 まあ、少しはそれに関係してるかもしれないが……


 今でこそ肩に掛かっているけど、中学時代はベリーショートかつ部活で真っ黒に日焼けしていた私のジャージ姿はまるっと男の子だった。

 中二に進級してからは部活でも後輩の面倒を見る様になったのだが、その中の一人である結愛ちゃんからとても慕われた。

 私は一人っ子だし友達も多い方では無かったから部活の無い休日は結愛ちゃんと遊びに出掛けたりしていた。そう言えばその年のクリスマスイヴも結愛ちゃんと一緒だった。

 そうやって親交を深めては居たのだけど……翌年のバレンタインデーに部室の脇のイチョウの樹の下で結愛ちゃんから手作りチョコを差し出され告白された。

 けれど、それをたまたま通りかかった()()()()()どもに見られてしまった。

 ヤツらは私達の事を「レズ!レズ!」とはやし立て、結愛ちゃんが泣いてしまったので私は怒りに任せ、そこにあった箒でコイツらをボコってしまった。

 その結果は“ケンカ両成敗”にはならず、私は視聴覚室で謹慎と反省文。結愛ちゃんは学校へチョコを持って来た事を咎められ厳重注意の上、チョコ没収の憂き目にあった。

 それ以来、結愛ちゃんと何となく距離が出来てしまい一緒に遊ぶ事は無くなった。

 本来私は人に好かれるタイプでは無いのだ。

 だから私にバレンタインデーは必要無い!


 義母がメッセをくれたのは……一昨日、この話を義母にしてしまったからだ。


 優しい義母にこんな心配をさせてしまって……私はどう応えればいいのだろう……



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「ガナッシュはもう作って冷やしてあるの。取りあえず着替えて来て!私達二人で我が家の()()()()を驚かせてやりましょう!」と義母が言うので、私も務めて軽口を叩いてみる。


「驚かすのだったら……やっぱ裸にエプロン?」


 この“返し”に……可愛い義母は吹き出し、JKレベルでコロコロと笑った。



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「最初は泡を潰さない様にサクッ!サクッ!と切る感じで……」


 マカロナージュは、メレンゲにアーモンドプードルなどの粉類を混ぜ合わす工程からなかなかに難しく、額に薄っすら汗が滲む。


「奏ちゃん!顔を上げて!」

 義母から言われて我に返るように顔を上げると優しくハンカチを当てられた。


「代わろうか?」


 無言で頭を振る。


「じゃあ、少しだけ休憩! 私の思い出話を聞いて」


「はい」


「実は悠耀(はるあき)もバレンタインがNGで……チョコは皆お断りしているの」


「えっ?!」

 思わず、義兄にチョコを渡したであろう瞳ちゃんの事が頭をよぎり、ずっと押し込めていた嫉妬が胸を焦がす。


「やっぱり中二の時だけど……あの子は手作りのチョコレートマカロンを貰ったの。同じクラスの女の子から」


「チョコレートマカロンを、ですか?」


「そう!でも悠耀はその子の事をクラスメイトとしか思えなくて……あの子なりに悩んだのだろうけど、ホワイトデーに、お返しとして同じ手作りのチョコレートマカロンを贈ろうとしたの」


「贈ったんですか?」と訊くと義母は頭を振った。


「マカロナージュが上手く行かなくて皆割れちゃったの。私が代わりに作ろうかって聞いたら、あの子は『それじゃ意味が無い』って頑なに断って……」


「兄さんは……結局、どうしたんですか?」


「『絶スルーした』って……人に想いを伝えるのも……その想いを受け止めるのも……難しいよね」


「はい……」


「でもね!一所懸命!丁寧にやるしかないよ!マカロナージュづくりみたいに」


「はい」


 私は再びゴムベラを手に取り丁寧に丁寧に混ぜ合わせた。


 そう!瞳ちゃんや結愛ちゃんはこうやって心を込めて作ったんだ!相手の事を一所懸命に想って……



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 無事に出来上がったマカロンをバレンタイン当日の今日、義母と二人で父と義兄にプレゼントした。


 私の作った“自信作”の方はもちろん父の口には入れさない!

 けれど……

 兄さんはこの自信作を喜んでくれるかなあ

 瞳ちゃんを裏切る様な事をしてしまったし……

 色んな思いが胸に沈殿する。

 そしたら並んで立っている義母が背中から手を回して私の肩をそっと抱いてくれた。


「私達の愛情がいっぱい詰まってるんだからね!ホワイトデーでのお返し、期待しているよ!」って義母の言葉に、父より先に

「任せておいてよ!」言ってくれた義兄の言葉が嬉しくて……

 思わず涙ぐんだ。


 そうだ!


 私もホワイトデーにお返しをしよう!

 結愛ちゃんの為に()()()()()()()を作ろう!


 私が作るのは……

 ショコラマカロンと呼ぶほど本格的では無く、チョコレートマカロンと言うには気恥ずかしいから。





                            おしまい




お休み前になんとか間に合いました(^^;)


このお話は「義兄のいる風景」 https://ncode.syosetu.com/n4287jp/  のスピンオフ作品です。



ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!

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― 新着の感想 ―
 このシリーズを読んでいていつも思うのは義兄さんは奏ちゃんをどう思っているんだろう❔  なのです。  シリーズを読み続けて行く内にきっと明らかになって行くのだろうなと思っていますが、やっぱり気になりま…
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