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瑠璃色硝子な人魚姫への追憶~そこはかとなくガールズラブっぽいあえかな想いを綴る3つの詩  作者: 壺中天
матрёшка,Петрушка 雪と氷のマトリョーシカ、死に踊るペトルーシュカ
3/5

Калинка カリンカ


 立てつづけな側近暗殺に、

 いたるところの反乱暴動。


 炎の背後で踊る魔女(ヴェデマ)の影。



 誰をも信じられぬ(ジュガシヴィリ)は、

 クレムリンの奥に閉じ込もった。


 脳髄に巣喰(すく)(むし)んでいく狂気、

 心臓を切り刻む恐怖に()かれ。



   ☁ ☁ ☁


 闇色な暗い月夜(つきよ)のさなか、

 厳重な警備が()(やぶ)られ、

 兵はすべて殺し(つく)された。



   ☁ ☁ ☂


 ふと男は目覚めた、

 余りにも静寂な故。


 遠い通路からの足音に、

 硬い軍靴の重さはない。


 それは小さな子供が、

 濡れそぼった裸足で、


 歩いているような…。



 扉がノックされる。

 拳銃を手にし誰何(すいか)


 応答なく解錠の音。

 掛金が外れて落る。


 ゆっくりと扉が…。



 拳銃を乱射する。

 乱射、乱射する。



 硝煙の匂いが、

 闇に立ち込め、


 驟雨(しゅうう)のやんだ後に似た、

 弾の空になった銃の音。



 ゆっくりとゆっくりと…、

 扉が…開いてゆく…………。




   ☁ ☂ ☽


 いつのまに月を(おお)叢雲(むらくも)が消えたのか、

 窓に()かるカーテンから月光が差込む。



 皓々(こうこう)たる月灯璃(つきあかり)の中、

 (ゆる)やかに波打ちつつ、


 頸筋(くびすじ)()かり更に(くるぶし)まで、

 (つや)やかに(たお)やかに流れ落る、


 黒髪だけを身に(まと)って(たたず)む、

 月虹色(げっこういろ)の瞳をした裸の少女。

 


 髪の分かれめから(のぞ)く、

 少し()せてみえる肩先(かたさき)


 薄い微かな乳房、

 淡く色づく乳首。



 雪花膏(せっかこう)のように白い肌、

 ()めらかな白堊(はくあ)の太腿。


 内腿の薄い皮膚に、

 透けて視える静脈。



 白い小鳩のように幻めいて、

 華奢な(すあし)(あしうら)で押印される、


 黒ずみべたつく血塗(ちまみ)れの(あしあと)



 扉向こうに(わだかま)る、

 暗闇から(ただ)よう、


 鉄錆(てつさび)じみた血溜(ちだ)まりの(にお)い、

 垂流(たれなが)した糞尿(ふんにょう)臓物(ぞうもつ)(にお)い。



 にもかかわらず……、

 それらに入り混じる、


 (きよ)らかなようでありながら、

 何処(どこ)となく淫靡(いんび)(あま)(にお)い。



 その自我を溶解(ようかい)させ、

 官能の(わな)(から)め取る、


 (かぐ)ぐ者を眩惑(げんわく)酩酊(めいてい)(おとしい)れる酒のよう、

 (どく)(ふく)んだ美しい花の(みつ)のような匂い。



 (かお)りの(さかづき)


   少女の股間


  (こぼ)れ落ち




甘い匂い



  入り混じって……、




鉄錆めいた 血


    汚物


 ……の臭い、



   此方まで漂って


にもかかわらず



  花の匂い

        肉の花




 拳銃(トカレフ TT-33)が手から滑り落ちる。




   肉 ……果肉


柘榴(ざくろ)…………血の味



          聖体礼儀


       血と肉



生命の水(ズィズネーニャ・ワダ)


   ……火酒(ウオトカ)




 蹌踉(よろ)めきながら少女へと……。




    吸血鬼(ウイプリ) ………水妖(ルサルカ)



  金銀花(スイカズラ) 花蜜


       ……赤い実(カリンカ)



    禁断(ザプリエートヌイー)()木の実(プロート)







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