表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/60

6話 勇者候補、取り消し!?



 勇者候補から、わたしを外す……?



「いや、それは」



「そんな! どうしてベルベル様が勇者候補から外されなければならないのですか!?」



 理由を聞こうと思ったらメイドさんのハイパーボイスで食い気味にかき消された。まあいっか。



「……召喚された勇者候補様の今後の予定ですが、王国内にある勇者育成学校へと入学して頂き、そこで数年間の学びを得た後に勇者として各方面でご活躍いただく……という流れになっております」



「そうですか」



 まあ、なんとなくの流れは召喚された時に説明してくれた人から聞いていたので理解できる。

各方面……魔王や魔物討伐以外にも何かあるのかしら。



「その勇者育成学校ですが、運営費用の大部分が貴族の方々の寄付金により成り立っています」



「貴族様……先ほど謁見の間にいた人たちですか?」



「そうです。国民がそれぞれの領地を任されている貴族に税を納め、そこから寄付を頂いております」



「それって、寄付というより徴収……」



「細かいことは良いのです。気に入った勇者候補様が現れると多めに出してくれる方もいますから。しかし今回、ヒカル様とマモル様は非常に好評だったのですが……」



「わたしのスキルが微妙だったと……」



「まあその、なんというか……そうなりますね」



 そうなっちゃうんだ。たしかに、あの2人みたいにザ・勇者向きって感じのスキルではないものね。

なんならわたしもまだ何が出来るのかよくわかってないし。



「あんな意味のないスキル持ちでは勇者として活躍など到底不可能。金をかけて育成する価値はない、と……」



「ひどいです! こちらで召喚しておいてそんなことを言うなんて……!」



 メイドさんがわたしの代わりに怒ってくれているので、逆に冷静になって説明を聞けている。

それにしても、勇者候補ではなくなるとどうなるのかしら。



「貴族の反発を恐れた国王陛下は、断腸の思いでベルベル様を勇者候補から外し、放逐することを決定いたしました」



「放逐……」



 まあ、有体に言えば追放……いえ、内定取り消しって感じかしら。



「明日の朝には城を出て行ってもらいます。本日はこのまま部屋を使っていただいて構いません。こちらの都合で召喚したこともありますので、しばらく生活できる分の資金はお渡しします。今着ている衣服も差し上げますので」



「あ、それはありがたいです」



 街に泊まれる場所とかあるのかしら。一人旅行なんてしたことないから、不安も大きいけどちょっと楽しみね。

というかそうでも思わないとやってられない。



「それではまた明日に。失礼いたします」



 そう言って大臣は部屋を後にした。



「ベルベル様、私……」



「あなたが気にすることじゃあないわ。それより、こんな素敵な服をありがとう」



「ベルベル様~……! やっぱり私、国王陛下と貴族様に直談判してきます!」



「やめなさい」



 お仕事クビになっちゃうわよあなた。メイドさんなのに意外と無鉄砲ね。



「女性の勇者候補様はほとんどいないので、今回ベルベル様が来てくれてようやくお世話出来る方が……と思っておりましたのに」



「きっとそのうち、ちゃんとした勇者候補の女の子が来てくれるわ。わたしのように妖精さんとお話し~みたいな脳内お花畑じゃなくてね」



「ベルベル様、意外と卑屈ですね」



 __ __



「ふう、それにしても、明日からどうしようかしら」



 メイドさんが退室して一人になると、急に不安が襲ってくる。

なんとなーく、勇者候補として召喚されたし、衣食住は心配しなくて大丈夫でしょ。とか思ってたら、早々に崩れてしまった。



「ベルベル、きえるのか?」



「いや消えはしないわよ。でもそうね、明日の朝には出て行っちゃうわ。あなたも一緒に行く?」



「とことこと……」



「そう、あなたはここにいたいのね」



 靴……おさんぽの妖精さんは、今はわたしの足から離れて部屋の中を自由に歩き回っている。

結構お高そうな靴だけど、元々は誰かの物だったのかしら。



「……あら? この絵の女の子が履いてる靴って、あなたじゃない?」



 壁に掛けてあった絵画をなんとなく眺めていたら、そこに描かれている女の子の靴が妖精さんと同じデザインだった。

女の子はバラ園のような所で楽しそうに遊んでいる。お城の中庭とかかしら?



「ともだーち。さいきんあえてない」



「へえ、あなたのお友達なのね。最近は会えてなくて寂しい、か……また遊んでくれると良いわね」



 絵画の女の子をどこかで見つけたら、妖精さんの事を話してみよう。

そんなことを考えながら、わたしは眠りについた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ