52話 軟弱者の国
「なるほど、己の道は己で決めろ、か……」
鏡面の妖精さんが占いを邪魔する理由をアサツキさんに話す。
この人は占いとか興味なさそうよね。
「まあそれで、占いとか聞く人は意外と自分の中で進むべき道は決まっていて、妖精さんが考えるよりも他人任せに生きてはいないよって話をしました」
妖精さんも納得してきているみたいだし、あと一押しね。
ここでマイペース代表みたいなアサツキさんの意見を聞いて、妖精さんを説得しきってみせるわ。
「まあ、自分の人生を他人の判断に依存して生きてる人はたくさんいるけどね」
「えっ」
あれ、ちょっと流れが変わってきたわね……
「占い、やっぱり悪かー?」
「そ、そんなことないわよ。アサツキさん、一体どういうことですか?」
「確かに、ビャクヤの街で占いを利用する人たちはベルベルちゃんが考えてる通り、意外と自分の考えはしっかりしている人が多いのは事実だよ」
「ほら、やっぱり……」
「でもね、世の中にはいるんだよ。自分のことを自分で決められない軟弱者が」
「な、軟弱者って」
アサツキさんもウォーリーちゃんみたいなこと言ってる。
意外と根性論とか好きなタイプ?
「で、その軟弱者が行くのは占い屋じゃないんだよ」
「じゃあ、どこに行くんですか?」
「教会さ」
__ __
「というわけで、わたしたちはビャクヤにある女神ミミエリ様の教会にやってきました」
「誰に向かって言ってるの?」
「んー……天界にいるミミエリ様?」
ミミエリ様、お久しぶりです。ベルベルです。
せっかく素晴らしいスキルを貰ったのに勇者になれなくてすいません。
あ、でも異世界暮らしはとっても楽しいです。ではまた。
「よし、お祈り完了。それにしても……全然人がいないですね」
ビャクヤの教会はヘイリオスにあるものよりもかなりこじんまりとしていて、あまり整備もされていないようにみえる。
教会を訪れる人もほとんどいなくて、かなり廃れているように感じた。
「ビャクヤの住民はあまり信仰心のようなものがないからね」
「魔法使いってそういう人多いんですか?」
「多い多い。教会で祈ったって新しい魔法が授かれるわけじゃないし」
意外と理系な考えというか、現実主義者が多いのね。
「しかし、ここは魔女が多いから例外だけど、他の街や国ではまた事情が変わってくる。女神を信仰し、教会の意向や神託によって身の振り方を決める人はかなりいるよ」
「そうなんですか」
「それは軟弱者だなー」
鏡面の妖精、ウォーリーちゃんにアサツキさんの話を伝えると、やっぱりちょっと憤っていた。
「というわけで、そこの水晶にいる妖精くんが本当に行くべきなのは、教会というわけだね」
「でも、ここには鏡や水晶はありませんよね」
そもそも妖精さんは邪魔してくるわけだから、教会に行かせちゃだめだと思うけど。
「それじゃあ、ボクがオススメの教会を教えてあげよう」
「邪魔するのにオススメの教会?」
「そうだよ」
そうなんだ……えっ良いのかなそれは。
「ウラハイル聖国の聖都、ラノスにある大教会に“神託の大聖鏡”という巨大な鏡があるんだ」
「ウラハイル聖国、ですか? サンベルク王国じゃなくて?」
「そうだよ。前に話したけど、ボクの出身国だね。おそらくこの世界で最も女神信仰の盛んな国さ」
宗教国家って感じなのかしら。
うーん、厳格というか、清貧というか……なんだか窮屈そうな国ね。
「神託の大聖鏡から定期的に神託を貰い、それを聞いた司祭の言葉に従い生活する……そういう人がたくさんいるんだ」
「それは、まあ……占いとかそういうレベルの話じゃないですね」
良く言えば敬虔な信徒たちの国ということかしら。
「てなわけで、妖精くんにはその神託の大聖鏡にお引越ししてもらおうか」
「なるほど」
……なるほど?




