21話 嫌なやつ
雑貨屋さんの帰りに偶然再会してしまった、わたし以外の異世界召喚者、そして勇者候補であるヒカルくんとマモルくん。
勇者育成学校の支給品だろうか、二人とも元々着ていた学生服ではなく、お揃いの制服を身に着けている。
「ペアルックだ……」
「う、うるせえな。お前こそこんな所で何やってんだ? 元勇者候補」
「か、買い物の帰りだけど……」
ヒカルくん、なんかちょっとトゲのある言い方してくるな。
「ふん、勇者候補を降ろされたのに、よくもまあ呑気に王都で暮らせるよな」
「ちょっと、ヒカルくん……」
「大体、妖精と話せるスキルってなんだよ。せっかくのミミエリ様から貰えるスキルにそんな役に立たなそうなのを選ぶとか、元々勇者なんてなるつもりなかったんじゃねえか?」
「そ、それは……」
「やっぱ女子って正義感が足りねえよな」
ああ、なるほど。この人は勇者にとても強い思い入れというか、使命感のようなものがあるのね。
たしかにわたしは、勇者候補として活躍するよりも異世界で健康的に暮らすことを1番の目的にしていたところはあるもの。そりゃあ気に食わないか。
「はあ、歴代の召喚者に女が少ないのもこういう事なんだろうな。腑抜けたスキルを選んで国の役にも立たない落ちこぼれ勇者候補……」
「ヒカルくん! ちょっと言い過ぎだよ!」
「だってよ、こいつ」
「おや、ベルベルちゃんじゃないか」
ヒカルくんがわたしに何かを言いかけたとき、わたしとヒカルくんたちの間に割り込むように一人の女の人が声をかけてきた。
「あ、アサツキさん……」
「そっちのお二人さんは知り合いかい?」
「ふんっ。落ちこぼれの元勇者候補のことなんて知らないぜ」
「それは知ってるって言ってるようなものだよヒカルくん……」
「マモルはちょっと黙ってろ」
「なるほどなるほど。ところで、その制服を見るに二人はこの国の勇者候補生だね?」
「ああそうだぜ。サンベルク王国、そして世界ネオテイルを魔王から救う勇者候補のヒ」
「はあ、嘆かわしいね」
「……なに?」
そう溜め息を吐いたアサツキさんは、わざと周りの人に聞こえるように声のボリュームを少し上げて話しだした。
「異世界からやってきた崇高な勇者候補様が、こんな所でか弱い女の子を嬲って悦に浸っているとはね。その労力を魔物退治にでも回して欲しいものだ」
「なっ……!! お、俺たちとコイツは!!」
「まさかボクたち国民が汗水流して稼いだ血税がこんな人たちを育成する為に使われているなんて、これは目安箱に苦情の投書を入れないとだねえ」
「ぬうっ……!!」
街の通りを歩いていた人たちの非難するような目が二人に向けられる。そういえば勇者候補の育成学校は国民の税金で賄われているんだっけ。
……アサツキさんは旅の魔女だから関係ない気がするけど。
「ヒ、ヒカルくん。ほらもう行こうよ」
「クソッ!!」
最後にこちらを睨むように一瞥すると、ヒカマモコンビは王城方面へと逃げるように去っていった。
「ふう。まったく、どこの国も勇者候補様は態度が大きくていけないね。国民を守ることが使命なんだから、みんなに優しくしないと」
「アサツキさん、あの、ありがとうございました」
「ベルベルちゃん大丈夫かい? あんなことを言われて、とても悲しいし、悔しいと思うけど……」
「あ、それは大丈夫です。あの子たちはまだ精神が幼いので、内から湧いてくる使命感のようなものをみんなに見せつけたり、その誇り(笑)を汚されたと感じたら八つ当たりをしたくなっちゃうんでしょうね。そんなものは幻想なのに」
「……ベルベルちゃんって、見た目に寄らないというか、心が成熟してるんだね」
「そ、そうですかね?」
生死を彷徨うような大手術を経験したからかな、色々達観しちゃうのかもしれない。しかもその手術失敗したし。
「じゃあ宿に戻ろっか」
「はい。あっそういえばわたし、夕ご飯をどうしようか考えている途中でした」
「それなら一緒に宿で食べようよ。そろそろ金の糸車の酒場が営業する時間だし」
「そうですね……うん、そうします」
……本当はヒカルくんの言動にちょっぴり傷ついたけど、美味しいごはんを食べて忘れよう。
あんな嫌なやつが勇者候補なのね。やっぱ候補外されて良かったかも。
「ベルベルちゃんはお酒好き? マスターの作るカクテルすっごい美味しいんだよ」
「の、飲みませんよ」
色々達観しててもまだ未成年なんです……




