2話
お弁当も食べて、日も暮れたので私は家に帰っていた。アズールと一緒に。
「まさか、帰り道が同じだなんて」
「すごい偶然だな」
「まぁ、途中でどっちかが別れるだろうね」
「流石にそうじゃないと不味いだろうな」
「アズールは苦手な家事とかある?」
「料理が下手だから料理かな。やっぱり外で食べるより自分で作った方が楽に済むし」
「一人暮らしなら自分で作る方が大変なんじゃない? 私はそういうこと考えたことあんまりないけどさ。前作ったご飯はどんなやつだった?」
「かつおぶしを白米に乗せてまんまにした」
「ねこまんまやんけ」
「作っているのだから料理だろう」
「そりゃ、誰でも作れる料理ではあるだろうけど……」
「逆に音廻はどんなものを作ってるんだ?」
「どんなものって、自分の食べたいやつ。肉じゃがだったら肉じゃが作るし、カレーだったらカレー作るし」
「肉じゃがの肉だけで満足できそう」
「ちゃんと野菜も食べなきゃだめ」
「野菜あんまり食べられない……」
「嫌いなものはちょっとだけで良いから食べなさいって姉さんよく言ってた」
「音廻は嫌いなものとかないのか?」
「私は基本なんでも食べるからなぁ」
「羨ましい限りで」
「………っと、それじゃあ私ここで右行くから」
「おっと奇遇だな。私も右なんだ」
「偶然が強すぎる。私達もしかして変な糸で結ばれてる?」
「かもな」
繋がれてるとしてもなー、この人女だからなー。男だったらもっと喜べてたかもしれない。……惚れかけてたし。
「音廻は将来何かやりたいこととかあるのか?」
「唐突だね」
「ふと聞きたくなってしまってな」
「そうだねぇ、特に今は考えてないかな」
「そうなんだ。音廻のような年頃の女の子ならてっきり色んなことを考えていると思っていたけど」
「なんにも考えてないよ。未来のことなんて考えても意味ないし。逆にアズールは?」
「……将来、やりたいことがあるんだ」
「やりたいこと?」
「命の恩人に恩返しがしたいんだ」
「ほぇー、ロマンチック。お礼を言うために今を生きるだなんて。私はこの先したいことはあんまり思いつかない。でも残り少ない人生だもんなぁ」
「……病でも抱えてるのか?」
「……そういう意味じゃないよ。人間の人生は短いものだし、それに加えて私は長生きしようとは思っていないし」
「なるほどな。まぁやりたい事はそう簡単には見つからないものだ」
「そう、私は夢無しってこと」
「……見つかると良いな、応援してるよ」
と、アズールと会話をして、やがて私の家が見えてきた。
「「それじゃあ、私ここら辺だから」」
「あ?」
「ほ?」
「ちょっと待って落ち着こう。あれは私の家」
「……私の家はもう少し先にある」
「え、私達ご近所だったってこと?」
「そういうことになるな」
なんというミラクル。神よ、どうしてアズールをおっぱいのついたイケメンとして産まれさせたのですか。
………あれ、この違和感はなんだろう。
「……あはは、なんだか笑えてきちゃうね」
「そうだな」
「これなら料理を教えることができるね。いつが良い?」
「できるなら今日少しだけお願いできるかな。音廻の食べたいものでいいから」
「それじゃあ材料をこの後買ってこよう」
「買い出しなら私に任せてくれ、頼んだのは私だから」
「一人よりも二人で行った方が楽しいと思うよ。それじゃあ今から一時間後にここに集合ね」
「わかった」
そこで私達は別れた。自分の家に入ると、私は大きく深呼吸をした。
「もう、あれ男の人でしょ……絶対そうだよ……」
声も、体格も、性格も、全てが男の人にしか思えない。あれが男と言わずして何と言う? そうだ、あの人は女なんだ。
「ガチ恋は、避けないと」




