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14話



「アズール、未来だとここらはどうなってるの?」


「気にしたこともなかったな。だが覚えている限りでは今のこの光景とは全く違うものだ。よければ教えてやろうか?」


「大丈夫。ネタバレされたら面白みがなくなっちゃうからね」


「ネタバレ絶対許さない人間だろ」


「当たり前じゃん、楽しみを奪われるんだよ? 予測できないから面白いのに、予測できたら面白くないじゃん」


「それもそうだな」


そうしてお互いに笑う。そこで私はこの前買ったアレをアズールに渡した。


「はい、これプレゼント」


「これは……首輪?」


「違うって! トゲのついたチョーカーだよ! かっこいいでしょ? アズールに似合うと思って。それと……これ」


私はあるストラップを取り出した。それを見た瞬間大興奮するアズール。


「うおおおおおおお!! なんだこれめっちゃかっこいいじゃねぇかあああああ!!!」


「あはは、気に入ると思ったよ」


剣にドラゴンが巻き付いている、旅行先のお土産屋さんによくあるアレ。少年心をくすぐる良い代物だと思って買ってきたのだ。


「つけてあげるからおとなしくしてね」


「………んぐ、苦しい」


「首につけるやつだから仕方がないよ。ほら、どう?」


「…………んふ」


チョーカーにストラップをつけてみた。アズールは誰がどう見ても幸せそうに笑ってた。けど、急にぐずり始めて……


「ど、どうしたの?」


「嬉しいのに、こんなにも嬉しいのに……どうして、今日なんだろう……」


「あぁ……」


そういえばそうだったな。今日がその日なのか……


「……アズール、その時がくるまで今日はうんと遊ぼう。ほら、泣かない泣かない」


「………うん」


「それじゃあ手始めに何か美味しいものを食べようー!」


私はアズールの手を引っ張って、想い出作りの旅に出た。




楽しければ楽しいほど、時間はすぐにすぎてしまうもので、あっという間に夜になってしまった。私は思わず文句を垂れる。


「一日終わるの早すぎない?」


「同感。でも、とても、楽しかった。……十年後の音廻は、どんな感じなんだろうな」


「どうだろうね」


「………音廻、最後は二人だけしか知らないあの場所に行こう」


アズールはそうして虎の姿になる。私を背中に乗せると、力強く地面を駆けた。



相変わらず、たくさんの蛍達が舞っていた。私はアズールから降りると、彼の前に立つ。アズールは利口にエジプト座り。


「覚えているか、初めて会った時のことを」


「もちろん、鮮明に覚えてる。いきなり声をかけられてびっくりしたよ。あの時はまだ桜が咲いてたね」


「あの出会いが偶然ではなく必然だったんだ、驚いただろ?」


「うん、それはとても。まるでストーカーみたいに」


「……嫌だったか?」


「全然。貴方なら大歓迎だよ」


「ははは、それは嬉しいな」


「……早かったね」


「ああ……早かった。今は何時なんだろう」


「もうすぐ子の刻になるね」


「女の子がこんな夜中まで遊んでるんじゃありません」


「今日くらいは良いじゃない」


「そうだな、今日は特別な日だし、何より保護者もいるものな」


「アズールが保護される側でしょ」


「それでも構わないぞ。少しだけ言うとさ……」


「ん?」


「……怖い。ちゃんと、帰れるかな」


「過去に来れたんだ、ちゃんと帰れるよ」


「……そうだと良いな。……自分の一番の理解者は自分っていうのは本当のことなんだな」


「どういうこと?」


「もう、わかってるんだ。もうすぐだって」


「……そうなんだ」


その直後、アズールの身体が透け始める。


「……お別れだな。だから、聞かせてくれないか?」


何を、と言おうとした瞬間アズールが遮るように


「音廻の、秘密」


それは、私がずっとアズールに隠していたこと。言うべき、なのだろうか。


「言えないか」


「それは……」


「私ではダメなのか」


「ちょ、ちょっと待ってほしい」


「……無理して言わなくても良い。まぁ、どんな秘密であろうと、私は音廻のことを嫌いになることはないよ」


「………嫌いにならない、か」


わかってる、アズールがこれを聞いて私のことを嫌いになるはずなんてないということは。それでも、言えるわけがないだろう。どうすれば……


「………何かしら事情があるんだろう。なら、今言わなくても良い」


「………良いの?」


「その代わり、約束だ。必ず、十年後。十年後に音廻の秘密を教えて。時間も経ってるし、音廻も大人だから言えるだろう?」


……わざわざ、十年もアズールは待ってくれるんだ。なら、私も


「できれば、この場で聞きたかったけどさ」


「……ヘタレでごめん。絶対に伝えるから、どんな内容であれ、その内容を受け止めてね?」


「ああ、もちろん」


「約束ね」


私は小指を差し出した。


「……どうすれば良い?」


「同じようにして」


言われた通りにアズールも小指を出す、私は指と指を結んだ。


「人間は、約束をする時こんなことをするのか」


「そうだよ。破ったら一万回打たれるんだ」


「はは、おっかないの」


「…………最後の日だっていうのに、どうしてこう盛り上がりに欠けちゃうんだろう」


「………言いたくなったから、言わせてほしい」


「ん?」


「大好きだ」


「うん、私も大好きだよ」


「……意味わかってるのか?」


「……え?」


「………っと、もう時間切れか」


アズールの身体がさらに透けていく。


「ちょ、待ってよ!!」


「こんな終わり方もアリじゃないか? 返事は今じゃなくて良いからさ。十年後、音廻が大人になった時、この場所で、秘密と返事を聞かせてくれ」


「アズール!!」


私はアズールの腕を掴もうとした、けど空気を掴むかのようにするりと抜けた。


……消えてしまった、アズールがこの世界から、消えてしまった。


「……これは」


アズールにあげたストラップ付きのチョーカーが地面に落ちていた。どうやら、持ち帰ることはできないみたいだ。私はそれを拾い上げ、携帯電話を取り出して



「…………姉さん、一生のお願いがあるんだけど」




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