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13話



「………本当に、もふもふだ」


「気に入ったか?」


「うん、ぽかぽかするし心地良い」


「それは良かった。それじゃあ夜だからもう寝よう」


「………眠くない」


「ちゃんと眠らないと大人になれないぞ?」


「……アズールは、それで良いの?」


「………眠ったら、明日になってしまうもんな。また、一日近付いてしまう」


「……明日、どこかへ遊びに行こうか?」


「想い出作りの為に? それは良いな、でもそんな余裕はあるのか?」


「……無理をすれば」


「私は、音廻と一緒に居られればそれで良いんだ。想い出作りはそれのついでにすぎない。こうして喋っている時点で私にとっては想い出なんだ」


「それもそうだね」


「…………」


アズールの表情が曇る。


「どうしたの」


「…別に」


「言いたいことがあるならちゃんと言って」


「……もうすぐ、なんだなって」


「帰るのが?」


「私にとっては数日でも、音廻にとっては十年後のことだ。でも、この時代の音廻とは、この一瞬とでしか関われない。だから、少し悲しい」


「十年後の私は、どうなってるんだろうね。見当もつかないや」


「………たくない」


「アズール?」


アズールの喉が震えた。濁声が口から溢れる。


「帰りたくない……帰りたくないよ……俺は音廻とずっと一緒に居たいのに……」


「………でも、戻らないといけないルールなんでしょ? 大丈夫だよ、貴方のこと忘れたりなんかしないから」


「…………」


「未来からやってきた美少年で、しかもその正体は虎ときた。情報量が多すぎて忘れようにも忘れられないよ。それに、せっかく作った想い出をこの先再開した時に語らずしてどうするの」


アズールの頭を撫でて落ち着かせる。私にできることは、笑顔でアズールを送ることだ。


「アズール、未来に帰る時どんな感じなの?」


「わからない」


「せめて何か前兆が欲しいね。徐々に身体が透けていくとかさ」


「いつに消えるとかもわからないんだよな」


「朝起きたら居ない可能性もあるのか……」


「それだけは避けたいものだな。せめて別れの言葉くらいは言いたいものだ」


「その日はずっと起きてることにしよう」


「良いのか?」


「エナジードリンクたくさん飲んでカフェインマシマシにしないとね」


「中毒にはなるなよ」


「……………ぁぁ」


身体が少しふらつく。


「流石に長話しすぎたか。疲れたろう、さぁ寝よう」


「うん……おやすみ……」


私はアズールの体毛に埋まって目を閉じた。もうそろそろ、覚悟を決めないとな……



――――――――――――――――――



「……想い出作りに良い場所、見つからないなぁ……」


こんなことになるならアズールとだらだら過ごすべきだったか。せっかく意気込んで色々出向いたっていうのに収穫が無しだなんてため息が出る。


「人間さん、最近アズールとよく一緒にいるね」


「……それが何か問題でも?」


「僕が声をかけられなかった。二人の仲を裂くのも無粋じゃん? アズールの前で話せると思う? 特に人間さんのことは」


「……今日はそれについてなの?」


「まぁね。時間はそんなにとらないから話をしよう。何から話そうかな……まずは、秘密はアズールには言った?」


「言えると思う?」


「いつまでヘタレなのさ」


「別に良いよ、ヘタレで」


「……アズールとは付き合ってるの?」


「アズールは女だって」


「嘘」


「ほ?」


「少し前から、人間さんのアズールに対する態度が変わった。まるで恋仲を相手にしているような……僕は猫だから、そういう環境の変化には敏感なんだ」


「無理やりなこじつけだね」


「どうしてそこまで否定するのさ」


「話が終わりならもう帰るよ」


「待ってよ、じゃあ何か相談に乗るから」


「………想い出を作るのに、良い場所とかある?」


「それはまたどうして?」


「なんでもいいでしょ。相談してるんだから乗ってよ」


「……僕としては場所はそんなに重要じゃないと思う。例えば、彼氏が突然優しくなったからその日のデートは楽しく思えた、とか。いつもと違うことをして相手の反応を窺うんだよ。プレゼントとかでも良いんじゃない?」


……そんなことをして、彼は困惑しないかな。でも


「わかった、参考になったよ」


「どういたしまして」




最近、こう考えるようになった。秘密を打ち明けるのは十年後でも良いんじゃないかと。そうすれば

彼は怒ってくれるだろうか、どうして黙っていたんだと。今か、十年後か、まぁ今はまだ考えなくても良いだろう。私は店に入って、想い出になりそうなものを探した。



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