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12話



「………ふわぁ」


大きな欠伸をしながら目を覚ます。アズールは……まだ寝てるのか。まぁ、虎は捕食者だから寝る時間が多いのだろう。


「…………」


ふと思って、アズールの手を揉んだ。肉球に値する部分だから柔らかいのかなと思った。うーん、確かに柔らかいけど私のとそんなに変わらないや。にしても、本当に気持ちよさそうに寝てるなぁ。


「……顔、綺麗だなぁ」


思わず撫でたくなってしまうくらいに。そんな邪な感情を振り払って、私はアズールを起こす。


「アズール、起きて」


「……ん、ふああ」


猫のように背中を伸ばして起きるアズール。口の中に指を突っ込んでやりたい。


「大きな欠伸だね、夜更かしでもした?」


「……考え事をしていたよ」


「どんな考え事?」


「秘密」


「えぇ、私達の間柄なのに?」


「じゃあ音廻の秘密を教えてくれたら教えるよ」


「……うぐ」


「いつになったら音廻は教えてくれる?」


「……その時になったら教えるよ。少なくとも、今は勇気がでない」


「できれば早めが良いんだけどな。まぁそんな言い草をするってことは期待はできないな。待つしかないってことか」


「ごめんね。……さ、ご飯食べよう」


「音廻のためにトーストを作ってやろう!」


「アズールの火は強すぎて焦げパンにすらならないからダメ! それに、火災報知器発動してスプリンクラー喰らって散々な目に遭ったでしょ」


「あれは大変だったわー」


「私が作るから大人しくしてて、からあげ出すから」


「やったぜ」


「…………ん」


そこで、携帯電話が鳴った。姉からであった。


「ごめんアズール、ちょっと一人にさせて」


「うん」




「……何、蒼冬姉さん」


「そんな言い方しなくても良いじゃない。せっかく姉さんが電話したっていうのに。音廻から全然連絡が来ないからね」


「え、そんなに?」


「数ヶ月はね」


「ふーん。まぁ、そんなに心配はしなくていいよ」


「……本当に?」


「?」


「……いや、音廻が良いならそれで良いんだけどね? 音廻、こっちに来る気はないの?」


「私はこの家が好きだから。姉さんがこっちに来れば良いんだよ、姉さんの家でもあるんだよ?」


「仕事が忙しくてそっちに帰る余裕はないかなぁ……仕事が休みの日はそっちに顔を見せるよ。音廻、気づいたら死んでそうだし」


「死なないって」


「死ぬよ」


「…………」


「人は簡単に死んでしまう。それは音廻もわかっているでしょう」


「……まぁね」


「とにかく、一ヶ月に一回は連絡頂戴よ」


そこで通話は切れた。


もう少し、もう少しでアズールは未来へ帰ってしまう。その前に、私はアズールに秘密を打ち明けられるだろうか。




「音廻」


「何?」


「私はもう、この世界から去るじゃないか」


「そうだね」


「だから、一分一秒も無駄にしたくない。音廻と一緒に居たい。だから、ここに住む」


「私の、家に?」


「音廻にとっては、十年私と離れ離れになるんだぞ?」


「ふむ」


「一緒に過ごす時間を増やすには、一緒に住むしかないと思って。近所なんてダメだ、一緒じゃないとダメなんだ」


「うん、私は別に構わないよ」


「本当?」


「私も、貴方と過ごす時間を無駄にしたくないからね。ベッドがキツいけど、問題なのはそれくらいだから」


「じゃあ今度私をベッド代わりにして寝るか?」


「あはは、ちょうど冬だし貴方もふもふだしで良い感じにぬくぬくできそうだね」


「………音廻」


「ん?」


アズールは急に畏まった姿勢をとって


「私は、未来に帰る前に音廻との想い出が欲しい」


「ああ、そういえばこれといったことは今までしてこなかったね。良いよ、どこに遊びに行こうか」


「単刀直入に言う、キスをしよう」


「……ふぁ?」


「だから、キスをしよう」


「………ファッ!?」


「人間は親密になったらキスをすると聞いた。私達は十分仲良くなったはず、だからキスの条件は満たしている」


「いやいやいや、親密の意味がちがぁう!」


「私は姉上とよくやったぞ」


「家族でするのはまた違うんだって!」


「……ダメなのか?」


……ぶっちゃけて言うと、私は大丈夫だ。異性として彼のことを好きになる自信はたっぷりある。アズールはどうだろう、獣である彼に恋愛感情はあるのだろうか。


「……音廻は、私とキスをしたくないのか? ファーストキスならちゃんと責任はとるぞ?」


「あーっ、わかった! わかったからそんなうるうるした目で私を見ないで!」


私は深呼吸をして、覚悟を決める。


「……ほら、するならして」


「うん」


アズールの息が顔にかかるまで距離が近づいて、そして………



つん



「………?」


私の鼻と彼の鼻がくっついた。


「……アズール、これ」


「キス。よく姉上としてた」


「あぁ……なるほどね……」


キスはキスでも鼻でキスするやつかぁ……猫がよくするやつかぁ……


「……もしかして、嫌だったか?」


「いや、思ってたのと違ったから。これならいつでもしていいよ」


「………私に音廻の唇を奪う権利なんてないだろ」


「何か言った?」


「大丈夫、独り言」





……なぁ、音廻。俺がこの世界から去ったら、お前はどうやって過ごすつもりなんだ?



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