11話
どうして時間というものはあっというまに過ぎていくのだろう。桜で溢れていた世界は緑に染まって、枯れ葉で舞って、すっかり今では凍てついた。
「……寒いなぁ」
「僕は寒くないけどね」
「……尻尾に火を灯してたらそりゃぁねぇ?」
私は呑気にあくびをするブレイズに向かってそう言った。
「貴方は懲りずにアズールのことを探ってるんだ」
「最近は微妙なんだよね。不可解なことはあったけど、これといったものはなかったし」
「不可解なこと?」
「不可解というか、ちょっとした違和感?」
「あぁ……」
きっと、アズールがここにきた時に多少の歪みができてしまったのだろう。何のリスクもなく過去に戻るだなんてありえないだろうし」
「その言い草、何か知ってるね?」
「知ってる。でも言えない。アズールから直接聞いたことだから」
「じゃあアズールの性別もわかったんだ?」
「それは元から知ってるでしょ。アズールはれっきとした女の子。あんな感じでもね」
「僕は信じないよ」
「早めに信じた方が良いと思うけど。ま、勝手にしなよ」
「………人間さんは、自身の秘密をアズールに言ったわけ?」
「……言ってない」
「なんで?」
「言う必要がないから。でもいずれちゃんと言うよ」
「僕から言ってあげようか。もどかしすぎて身体がむずむずする」
「やめて。私自身から言うべきでしょ」
「へたれ人間。アズールって本当に可哀想だね。自分は秘密を曝け出したのに、相手は教えてくれないんだもの」
「あっちが勝手に暴露したんだよ」
「あっ、今最低なこと言った! 責任をアズールになすりつけた!!」
「うるさいな、言葉の綾だって」
「それでも最低なことには変わりない。ちゃんとわかってるの?」
「……はぁ」
自分の秘密をアズールに言う、か。彼と過ごすにつれて、言うべきなのかわからなくなってきた。言わない方が良いんじゃないか、だって、私は―――
「ああ、時が経つのが早すぎる。もう少し遅くても良いのではないか」
「期限が来たら帰っちゃうんだよね。……ねぇ、期限が来たらどうなっちゃうの?」
「ん?」
「突然、消えたりしないよね?」
「さぁ、都合よく改変されるんじゃないのか。ま、消えたとしても私のことなんてきっと誰も覚えてなんかいないさ。音廻を除いてね」
「アズール………」
私の表情を見たアズール。空気が重くなると理解して冗談を言い始めた。
「今更だけど、私をホイホイ家にあげていいのか? 私は男なんだぞ?」
「慣れちゃったし、もういいよ。私達が恋人同士ならこうしてても問題ないし、付き合う?」
「おいおい、パートナーは慎重に選ばないとダメだぞ?」
「……貴方は私を恋愛対象として見れるの? 私はいけるよ、ていうか見てた」
「正直に言うなよ……」
「アズールは?」
「…………」
「あっ、ずるい! 私は言ったのに!」
「音廻が勝手に暴露したんだろ!」
「アズールはどうなのさぁ〜!」
「うるせぇ!」
そうしてアズールは私のベッドに潜ってしまった。
「ちょっと私のベッドなんだけど」
「今日はここで寝る。意地悪するから」
「言うて最近はずっと私の家で寝てるじゃん……」
仕方がない。狭いけど我慢するか。
……音廻。面と向かっていうのは恥ずかしいから心の中で言うけれど、俺はお前に恋をしているんだ、あの日からずっとお前に会いたかったんだ。けど、今言ったって俺はすぐにこの世界から居なくなってしまうから、だから未来の、大人になったお前に花束を持って告白するよ。人間の女っていうのはサプライズが大好きなんだろう? 俺の歳は人間に例えたら100歳を余裕で超えるだろうけど、それでも俺はお前を愛しているよ。お前は俺を愛してくれるかな、音廻?




