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10話



目が覚めると、私は病室に居た。そうだ、私は子虎を助けに氾濫した河に飛び込んだんだ。


「ガウ」


声が聞こえる。子虎がやってきた、体色も蒼いのできっと私が助けたあの子なんだろう。


「無事で、よかった」


「ガウ」


子虎はたんぽぽを咥えていた。そのまま私の横までやってきて、枕元に落とす。


「くれるんだ」


「ガウ」


「ありがとう」


私がそう言うと、子虎は私の頬に頭を擦り付けた。どうやらお礼をしているつもりらしい。可愛いな……まるで……


「危険なところに行っちゃいけないよ。いくら虎でも、貴方はまだ小さいんだから」


「ガウ」


そして、子虎はどこかへ行ってしまった。それといれ違うようにアズールがやってくる。


「……大変な目に遭ったね」


「……アズール」


「うん」


「あのね、さっき小さくて蒼い虎が溺れていたから助けたんだよ」


「うん」


「たんぽぽを置いて、頭をすりすりしたらどこかに行っちゃった」


「音廻、少し外で話そう」


「わかった」


動けないほどの怪我は負ってはいない。私達は病室を出て、あの場所へ向かった。





そこは、私とアズールのお気に入りの場所。


「……それで、私が何者かって話だったよな」


「うん」


「……音廻」


「ん?」


アズールは、大きく息を吸って、覚悟を決めたような素振りを見せて、そして言った。



「もし、私が人間じゃないって言ったら、信じる?」



「………うん」


「……本当に? そんなにすんなり信じるのか?」


「……貴方が、初めて私の家に泊まってお風呂に入った日。お風呂に入ったならお風呂場は湿ってるはずなのに、乾いてた。それにその日の夜、廊下に蒼い毛が落ちてたの。最初はなんだと思ったけどさっきの子虎を見たら、あの子とおんなじ色だなって思い出したんだ」


「……………」


「あの子は、アズールが子供だった時の子……なんだよね?」


「………ああ」


すると、アズールの身体が淡く光り出した。人間の形が崩れていき、虎の形になっていく。蒼い虎の姿へと。口から蒼い炎が漏れ出ている。


「……体質でさ。水に触れるとダメなんだ。でも清潔で居るためには毛繕いをしないといけない、するにはこの姿に戻らないといけない」


「だから、私を外に出したんだね。あの時吐いていたのは……」


「毛玉と……つけ合わせの野菜。野菜は消化できなくて」


「ごめんね」


「音廻は悪くないよ」


「今の貴方は、未来の貴方。……本当に未来でタイムマシンができたってこと?」


「その通り、人間っていうのは凄い生き物だって実感したよ」


「タイムパラドックスは起きなかったの?」


「過去の私が今の私を見たって、何も起きるわけがないさ。自分は自分、それ以外は他人なだけなんだから。しかも、タイムマシンはこれから十年後にできるんだ」


「……凄いね」


「時間が経てば物変わる、建物も娯楽も何もかも。これが、私の秘密。音廻に隠していた秘密だよ」


「じゃあ、貴方が言っていた、貴方を救った人間って………」


「もちろん、音廻のことだよ。ついでに言うと、私はオスだ。メスじゃない」


「……どうして性別を偽ったの?」


「……同性なら、隔てなく接してくれるかなって。異性の人間は誰も彼もぎこちない様子だったから。でも、杞憂だったみたいだ」


「………どうして、過去にやってきたの?」


「……どうしても、音廻に会いたかった。音廻に恩返しをしたかった。音廻と一緒に過ごしたかった。そもそもおかしいとは思わなかったか? 家は近所のはずなのに、一度も会ったことがなかったなんて」


「ああ、あの時感じた違和感はそれだったんだね」


「……俺は、音廻と話をしたかった。あわよくば、音廻と繋がりたかった。だから、頑張って人間の言葉を覚えた。人間の言葉を喋れるようにした。幾年が経って、人間の姿を真似れるようになった。人間の姿なら、音廻に会っても違和感ないかなって。でも、未来に音廻は居なかった。どこを捜しても居なかったんだ……」


「だから、過去に」


「まず言っておく、俺はもう少ししかこの世界に居られない。タイムマシンはビジネスになった、金を払えば払うほど、過去に居られる時間は長くなる。俺は頑張って仕事をしてお金を稼いで……ようやく一年分のお金が貯まったんだ」


「……なるほどね」


「……音廻。人間じゃなくても、関わってくれるか?」


「……何言ってんのさ」


私はもふもふとアズールの頭を撫でる。


「人間だろうが虎だろうが男だろうが女だろうが、アズールはアズール。私の大好きなアズールだよ」


「音廻………」


「……でも、虎ってわかっちゃったらペットとして見ちゃうかも……」


「なっ!? 人間に戻る!!」


「あはは、ごめんね? でも、アズールがかっこよくて素敵なのは変わらないよ」


私はアズールに手を差し出して


「アズール、お家に帰ろう」


「……うん」


そうして手を繋いで家に帰った。アズールは自分の秘密を教えてくれた。私はまだ教えてない。言う勇気がない、言えるわけがない。……どうしたものかな、本当に………




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