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一度亜月に接触してからというもの、3人は俺を無理矢理にでも土曜が休日になるよう仕向けてくる。

だがあの亜月の甘い香りが恋しいのも事実なので、そこは有り難く素直に従おう。


そして休みとなった土曜日、亜月に会うと思うと高鳴る鼓動を抑えつつ、神社へと向かった。

今回は始めから姿を現して鳥居を潜った。


境内に上がると、お参りをする一人の女性の後ろ姿が目に入った。パーカーにジーパンとスニーカーというラフな格好だが、見覚えのある綺麗な立ち姿と艶やかな黒髪、そして微かに辺りに漂う甘い香り、亜月で間違いない。


砂利を踏みしめる足音が辺りに響くと振り向き、こちらに微笑んだ亜月の顔にやたら心臓がギュッと締めつけられた。

今回は無視されずにちゃんと認識されたという喜びなのか、それとも微かに香る甘い匂いのせいなのか。


「おはよう、ローゼス」

「あ、あぁ、いつもここには早い時間から居るのか?」

「うん、毎週土曜日は午前中のうちに、この神社の裏に住む宮司さんの所に寄ってお茶するの」


宮司って、神社の管理をしている人か?

俺の顔が不思議そうな顔でもしていたのか、亜月は笑いながら「先代の宮司さんと茶飲み友達なんだ」と言った。


なるほど。本当に常に1人で孤独ではなく、ちゃんと話し相手が居たことに少しホッとした。


先代の宮司か・・・先代ならもしかしたら琴の事も、会った事はなくても知っている可能性があるな。


「前回聞いた時には、ここに来るのは思い出だと言ってなかったか?」

「もちろん、ここは思い出の場所だよ。辛い思い出の方が多いけどね」と苦笑いした亜月。


あっちこっち引っ越しを繰り返した一之瀬家だが、まだ亜月が幼い頃はこの神社の近くに住んでいた、そして常に霊や魔物が見える友達のいない亜月は、いつも一人でここの境内で過ごしていたのだと。

亜月曰く、ここには今まで霊や魔物が現れた事がない安全地帯なんだとか。


「その時にね、先代の宮司さんが良く遊んでくれたんだ。だから私のお爺ちゃんみたいな存在なの」

それがこの神社に通う理由なのか。


「その宮司は幾つなんだ?」

「えっと、確かもう90近かったかな?」


90歳か、その年齢ならやはり琴の事を何かしら知っているかもしれないな。


「その宮司に会ってみたいんだが、可能か?」

「そういえば、ローゼスもここは思い出の場所って言ってたね。宮司さんと知り合いかもしれないってことよね?来週で良ければ私が会えるように話しておくよ」


「そうか、助かる」

「そうだ!良かったら連絡先の交換しない?そしたらメッセージで有無を知らせるよ」と亜月はジーパンの後ろのポケットからスマホを出した。


ス、スマホだと!

我々は念話が出来るから今までスマホを持つという概念が全くなかった。


「あ、ごめんっ、持ってないんだね」

く、くそっ!失敗した。

「ま、まだ日本に来て間もないからな、そろそろ買わないとと思っていた所だ」

「そうなんだ、なら買ったら番号教えてね」


そうだ、良い事を思いついた!

「亜月、今日これからの予定は?」

「特にないよ、ブラブラ散歩して帰るだけ」

「ならスマホを買いに行くのに付き合わないか?ほら、いま日本で流行りのやつとか知らないしな。なんならまた一緒に食事でも・・・」

「行く」


かなり被せ気味に食いついた亜月。

また『食事』に釣られようだ。


そこから二人で街へと向かい、ショップとやらで契約を済ませて、亜月おすすめの亜月とお揃いで色違いのスマホを手に入れた。


ショップに行く前に「ところで買えるの?」と聞いてきた亜月だが、もちろん我々は全員、人間の世界で活動しているから偽装の身分証なども持っているし、なんなら永く生きてる分だけ普通の人間より金持ちだ。


そして何が食べたいか尋ねると『ファミレス』に行こうと言った亜月。ファミレスはかろうじて俺も知っている。


「ファミレスなら広いからのんびり出来るし、スマホの操作も教えつつご飯も食べれて一石二鳥でしょ」


スマホの契約に少し時間がかかったので、ファミレスは既にピーク時を過ぎて席に余裕があり、俺達は四人掛けの席に案内された。


なるほど、ここなら牛丼屋の時のように急いで出る必要はなさそうだ。


俺は人間の食べ物は何を食ってもさほど変わりないので、適当にカレーを頼んだ。

「えっと私はシーフードグラタンと、唐揚げとポテトの盛合せ。あと二人ともドリンクバーのセットで」


勝手に俺の分のドリンクバーを頼んだ亜月は「私持って来るよ、何が良い?」と確認すると取りに行った。


そして俺が頼んだアイスコーヒーと自分のオレンジジュースを持ちながら席に戻ろうとこちらに向かって来た時に、俺と目が合うとニッと笑顔を返した。


綺麗な顔立ちしてるのに何だか可愛いんだよな・・・


・・・ん?可愛いって何だ?いや、これはやはり香りにやられているんだな!・・・危険な香りだ。


食事が運ばれ、二人で他愛ない会話をしながら食事をし、食べ終わると亜月はオレンジジュースのグラス片手に俺の隣りに移動してきた。


「スマホの操作は隣りの方が教えやすいからね」


亜月は真横にピッタリとくっつき、スマホの操作を説明してくれたが、距離が近いうえに香りがっ!あまり深く吸い込むとまたバレるから静かにスンスン・・・この香りたまらないな。


香りのせいでスマホの基本操作以外は全く覚えられなかった。


そして夕方となり亜月を途中まで送る道のり


「ローゼス、あれ・・・」

「あぁ、人型か。まずいな」






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