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《緊急事態です!融合型2体と獣型2体の計4体が合流して街を駆け抜けています!》
《融合型と獣型が合流?ブラインどういう事だ?》
《えっと、それがですね、計4体の魔物は一人の人間の女性を追い掛けているようです》
は?人間を追い掛ける?追い掛けるという事は、人間の方が逃げているという事だよな?逃げるという事は、それらが見えるという事になる。
《俺もすぐに向かう、そんなに離れていないからすぐに合流する、モルベル合流できるか?》
《今、すでに向かってますよ》
《僕も向かってまーす》
それぞれがブラインの報告の場所へと急いだ。
表通りから一本裏手の行き止まりの路地が良く見渡せる、5階建てのビルの上に居たブラインの肩に手を乗せた。
「ロ、ローゼス!あそこなんだが」
ブラインが指差した先に見えたのは・・・融合型2体のみ?報告では4体だったはずだ。
「獣型はどうした?お前が殲滅したのか?」
「い、いや・・・」
何やら歯切れの悪いブラインに何事か?と首を傾げながら融合型2体に視線を移した。
融合型と向き合っている女は、何故か怯えるでもなく真っ向から睨み合っているように見える。
融合型が2体同時に女に向かって足を踏み切った、と同時に女も地面を蹴り融合型2体に向かっていった。
「何これ、どうなってんの?」
合流したジルシアも驚きの表情で呟いた。
襲い掛かってきた融合型のまず1体の前で、少し上半身を屈めると、下から一気に右の拳を突き上げた女。その拳は融合型の鳩尾にヒットしてその勢いで軽く数メートルは吹っ飛んでいく融合型1体。その隙にとばかりに、もう1体の融合型が襲い掛かった。が、そこを待ってましたとばかりに女は裏拳で弾き飛ばした。
最後に合流したモルベルも現場を見るや、驚愕した様子で嘘だろと呟いている。
2体目を裏拳で弾き飛ばすと、すぐに1体目の方に向かい、ヨロヨロと立ち上がった1体目にトドメとばかりに下から突き上げた拳は、綺麗に融合型の顎に入り、そのまま融合型は塵となっていった。
それを確認するとすぐに、裏拳で弾き飛ばした方に向かった女は、フラフラと起き上がった融合型2体目の体にボディブローの嵐をお見舞いし、再び倒れた融合型の喉元に勢い良く踵を落とした。
そのまま2体目も塵となって消えていった。
女は、ふぅ~とため息を吐いた。その瞬間微かに香ってきたこの甘い匂いはっ!
「ブライン、この甘い香りって」
「あ、いつかの綺麗な女性と同じ香りですね」
モルベルとジルシアは、知り合いですか?と俺とブラインの会話に首を傾げた。
ため息を吐いた後に女は、伸びをするかのようなポーズで顔を上に上げた、だがすぐに態とらしいくらい素早く下を向き、その場から慌てて立ち去って行った。
いま絶対に俺らに気づいていたよな?
やはり階段ですれ違った時にチラッと見たと思ったのは気のせいではなかったという事か。
聞けば獣型は頭部にハイキックで瞬殺だったと言う。獣型と融合型のどちらも見えている時点で、俺らの事も見えているのは確定だが。
「ジルシア、あの女尾行。あれは俺らの事が絶対に見えてるから気をつけろよ」
「了解~!」
いったい何者なんだ、あの女は
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ヤバー!さっきの化け物4体はキツかったけど、まさか赤い瞳が4人もいるとは!
あの4人まで合流してたら私、死んでたな。
良かった~ただの野次馬で・・・
ん?あれも野次馬っていうのか?
ていうか、最近たまに見かけるようになったあの赤い瞳の連中は何なのだろう・・・
これからは、もっと気を引き締めて見えないフリしないと。でもいきなり目の前に化け物が居れば誰でも驚くってもんよね。
突然目の前に化け物が居ても微動だにせずビクともしない方法って何かないかな・・・
あ~お腹空いた!
とりあえず夕飯何にしよっかな