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魔界から堕ちた魔物は、獣型、獣と人型との融合型、人型の3種類。獣型は下界の人間に対してあまり手は出さない、人間には見えないのをいい事にせいぜい面白がって突き飛ばしたりする程度だ。

融合型になると人間から精気を吸い取ったりする。精気を吸われすぎた人間は意識不明になったりするから要注意だ。一番厄介なのは人型、人型となるとかなり強いうえに人間を喰らう。


喰らう・・・そう文字通り魂と肉体全てを喰らい尽くし自らの糧にするらしいが、その人を喰らう姿はなかなかにおぞましい。


無理やり目を閉じた割りにいつの間にか眠ったのか、夜中に喉の乾きを感じてハッと目を覚ました。

キッチンへと向かい、キッチンの片隅にある大きな冷蔵庫を開けると中には、透明のビンに入った赤い液体。


これは魔界から定期的に供給されている、我々ヴァンパイアには無くてはならない物。


我々は任務の為に人間のフリをする事もあるので人間の食事も摂ることは出来るが、やはりこれがないと喉の乾きは潤せない。


だが、供給されているコレはたいして美味くない。だからそれを飲んだ後には必ず口直しにワインを流し込む。


ベッドに戻りまた横になると、少し体内に入れたアルコールのせいか、瞼が自然と閉じていった。



朝、目を覚まし居間に向かうと、すでに起きて待機しているモルベル・ブライン・ジルシアの3人。

「ローゼス、やっと起きたのか」

「珍しいですね、あなたが寝過ごすなんて」

「もう、ローゼス遅いよ~」


それから4人で会議が始まったが、とりあえずは久しぶりの日本に慣れる為に2人1組で街を見て回る事にした。

回る途中、獣型と融合型の魔物は見つけたら殲滅する。人型と遭遇した場合は、力が半減される日中に2人では厳しい戦いになるので、他の2人が合流するまで尾行となる。


「もし人型に遭遇したら、すぐに念話を送れ。決して無理して戦おうと思うなよ、いいな」


モルベルとジルシア、俺とブラインに別れて窓から飛び出した。我々に高層ビルなど関係ない、どこでも高く跳べるし、飛び降りても問題ない。


俺らの部隊はヴァンパイアの中でも高貴な存在の集まりだ。昼間だろうが晴れていようが関係なく動き回れるが、日中は力が弱まるから厄介だ。


だがそれは魔物も同じ。

お互い夕刻から本領発揮となるのだ。


窓から飛び降りてすぐに目に入ったのは高層ビルの群れ、日本も暫く見ない間にかなり近代化したようだ。

街ゆく人達の服装も随分と変わったものだ。

昔は男も女も着物だったよな、あれはあれで風情があって良かったけどな。


「ローゼス、あそこ見てください。日本は随分と様変わりしたけど、変わらない物もあるのですね」

ブラインが指差したのは少し賑わう河川敷。


「満開の桜か。綺麗だな」

そいや昔、琴と夜桜見物したな・・・



『ローゼス、桜凄いね~』

『そうだな』

『なーに?つまらない?』

『いや、そうじゃない』

『はっきりしないわね~。言いたい事があるならはっきり言いなさい?』

『俺はもうすぐ外国に異動になる。日本を離れる事になる、桜もこれで見納めだ』

『そうなんだ、寂しくなるわね~』

『寂しいのか?なら一緒に来るか?』

『・・・はぁ?何言ってるの?』

『俺の血を飲めば、一緒に居られるぞ?』

『あんたばっかじゃない?そういう事は本気で惚れた相手に言うものよ』

『本気か・・・そんな気持ちとうの昔に忘れたな』

『ま、たとえあんたが私に本気だとしても一緒になんて行かないわよ。ローゼスは私の好みじゃないもの』

『くくっ、酷い言われようだ』

『私にとってローゼスは一緒に戦う盟友だから』



殆どの女は、俺の見た目に惑わされるというのに、俺相手にあんなズケズケと言う女は、きっと後にも先にもあいつ1人だな。くくっ



ブラインと街の様子を見て回っている間にも、見つけた魔獣と融合型数匹。


「今の日本は思ってた以上に魔物が多いな」

「この国には昔のように、力のある巫女のような護り手がいないのですかね」


この状況を見ると、そういう事だろう。

即ち、琴の子孫は力を受け継いでいないという事になる。なのに何故保護対象なのか謎だな。


「ブライン、少し寄りたい場所がある」

「えぇ構いません。行きましょう」


ブラインと共に街から離れ、まだ少し緑が残る都会の喧騒とは縁のない静かな場所へとやって来た。


「この上は神社ですか?」

「あぁ、ここはかつて琴がいた神社だ」


さほど大きくない神社だが、階段下の鳥居を潜ると途端に、かつて琴の全身から発せられていたような神聖な空気が辺りに広がるのを、ヒシヒシと感じた。やはりここは力のある場所なのだと再認識させられた。







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