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過去の後悔  作者: ヒカリ
2/2

放課後。

花とつるんでいる女子数名がこちらにきて、教室で待っておくようにと言いにきた。

ここは素直に待つしかないと思い、待つ。

数分経ったところで凛という子と花が来た。

急に大声で花が喋る。

「お前のせいで恥をかいた!どうしてくれるの!?」

と言ってきた。

「恥を見せてるからいけないんじゃないの?私は何もしてない。」

正直に思っている事を話す。

「私はあなたが悪いんじゃないか、と思うんだけど?」

突如、凛が言う。

「なんで?」

私は凛に問う。私は悪くないはずだ。

「だって、最初は花も普通だったでしょ?でも、あなたが小声で意味不明な事を言って、本当のことも違うと言ったからイラついた、と聞いたわ。つまり、あなたが悪いと思うんだけど?」

全く、不公平な事だ。本当のことを言ってはダメなのか?

いつも、この人たちは上に立ちたがる。自分が悪かったとは認めない。一回清算をしたほうがいいのではないか?

私は立ち上がり、筆箱を開ける。

「ねぇ、何してるの?」

花のイラついた声が聞こえる。

もうちょっとで、その声も消える。

私はハサミを持ち、花目掛けて振り下ろした。私のハサミは鋭く、花からは血が溢れ出す。

そのまま花を倒し、顔面に突き刺す。そこからも血が吹き出して、花の顔は真っ赤に染まった。

花は声にならない悲鳴をあげたっきり、何も言葉を発することはなくなった。

「きゃああああ!!」

隣で呆然とその光景を見ていた凛は、思い出したように悲鳴をあげ、腰を抜かした。

私は何をしている?花を殺したのか?

私は凛を見つめながら呆然と立ち尽くす。

私の意思でやったわけではなかった。

やりたかったわけではなかったのに。

戻らないと……。

あの力を思い出す。

不安もあったが今すぐに戻りたかった。

戻りたい、戻りたい。戻りたい!

そう強く思って、目を瞑った。


目を開ける。

目の前には花と凛がいる。

良かった、戻れたんだ。

少し安堵する。

「お前のせいで恥をかいた!どうしてくれるの!?」

花の大声が聞こえる。

慎重に、謝らなければ……。

「ごめんなさい。」

謝れたことにも安堵する。

花の顔色を伺うと、私の返答に驚いたようで、目を見開いていた。

なんでだろう?

「おまえ、なんなの?反抗したと思ったら素直に謝って……。」

「へ?」

私から間抜けな声が漏れる。

そんなに驚くことなのか?

「ま、まぁ、おまえが謝ったんならそれでよし。」

花は焦った様子で凛に「行くよ。」と声をかけ、教室を出て行った。

1人取り残された私。思いっきり?を浮かべていた……。


その日からと言うもの、力を使わない日はなかった。

学校のテストがあった時も、やり直して高得点を取ったり、大きなパフェを食べたがもう一度食べたくなり、過去に戻ってもう一度食べたり。

パフェはとてもおいしかった。

この力のおかげで、友達もできた。

喧嘩になるようなことを起こさず、無難に対応することができた。

花たちからのいじめも徐々になくなっていき、楽しい生活となって行った。

スリルを追い求めるが故に、犯罪を犯したこともあった。でも、この力のおかげでやり直すことができた。

しかし、犯罪は1、2回で辞めることにした。

犯罪を犯した後、とても後悔をしたのだ。

殺された側がとてもかわいそうだ、と。

自分がされたら嫌なんだからやめたほうがいいのだ、と。

とても軽くそう思った。

それっきり、自分にまつわることしか使わないことにした。

力を使うことは日常で、手足を使うことと同じことだった。

もう、使わない過去には戻れない。そう思うぐらいだった。

その後、何年もたったある日。

もう夜で、布団の中で寝ようとしていた。

ふと、そこで思ったことがあったのだ。

私がなかったことにした過去はどうなっているのだろう、と。

テレビを見ていて気づいたことがあった。

時間には、1日、1時間、1分、1秒、とそれごとに自分がいるらしい。

並行世界というものもあるらしく、自分は複数いるのだ。

その時はただ興味深く聞いていただけだった。

しかし、寝る前に思い出してしまった。

どうなるのか?

そのまま消えるのか、それとも別の自分が過ごしていくのか。

その思考がぐるぐると回る中で、私は無理矢理寝ることにした。


朝、目を覚ます。

今日は友達と遊ぶ予定だった。

時間は後30分もない。

急いで身支度を済まし、家を出ていく。

全速力で走る。

前の十字路では信号が変わりそうだ。でも、このまま走っていると渡り切れると思い、そのまま全速力で走ることにする。

あれ?これはどこかで……。

そう思いながらも、走る。

横から車が飛び出してくる。

あの時と同じように、私は轢かれた。

同じように跳ね飛ばされ、同じように地面に横たわる。

全身から血が出てくる。

痛い、痛い。

すぐに戻ろうと目を瞑る。

しかし、目を開けても、そこには車と私の赤い液体だけだった。

戻れない?なんで……?

視界が暗くなっていく。

走馬灯が流れる。

それはほとんど、力を使ったばかりの記憶だった。

いや、違う。

力を使わずにこの結末まで辿り着いた私だった。

この時にようやくわかった。

なかったことにされた過去がどう言うものか。

この私も、なかったことにされたのだ。

別の私によって。

そのまま真っ暗になっていく。

音をうまく拾えなくなる。

体がピクリとも動かなくなっていく。

組織が死んでいく。

冷たくなって。

心は深く後悔している。

また、走馬灯が流れ出す。

あの日のことを鮮明に思い出す。

そうだ、あの日は。

私は青かった。


そう。あの日は、私の青さと空の青さが混ざり合っていた___。

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