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とある少女の潜入調査の始まり  作者: アメムラ
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プロローグ

日が沈み暗くなった世界を月光が照らす夜。

本来なら人々は活動を止め寝静まり静寂に包まれるはずの夜だが、現代においてはその限りではない。

人々は科学技術を発展させることにより人工的な光を作り出すことに成功した。

今や世界中の主要都市や町はネオンや街灯などにより明るく照らされ人々は夜でも活動することができるのである。

そんな明るい夜が作り出されている日本のとある町。

その町の外れにある廃ビルの一つに人影があった。

静寂に満ちたビルの中にコツコツと乾いた足音が響く。

その人影は町を一望できるような窓を見つけそこを覗き込む。

暗がりで見えなかった姿が月光により照らされ徐々に露になってくる。

肩より少し下まで伸びた茶色い髪、顔立ちは整っており綺麗な容姿をした少女だ。

年齢的には16から18といったところだろうか。

しかし纏う雰囲気は今時の女子のものではなく、例えるなら研ぎ澄まされた刃物のような感覚を覚える。

彼女は窓から顔を出すと目の前に広がる街を見渡す。

遠くに見える道路では車の出すライトが廻るましく動いておりいまだに活動している人の多さを感じさせる。

そんな光景を眺めていると彼女の持っていた携帯電話の着信音が鳴り響いた。

彼女はかかってきた番号を確認して通話ボタンを押した。


「目的地には着いたか?」


電話の向こうからは男の声が聞こえる。


「先ほど到着しました。今町外れの廃ビルに潜伏中です」

「無事到着したか。町に入って何かおかしい点などはあったか?」

「地図の場所は一通り見て回りましたけれど別段おかしなところ。ただ報告にあった通り、主張所は完全にダメです。警察がいて中は見れませんでしたが外から確認しただけでも酷い有様でした」


そう答えながら空いた片方の手で持っていたカバンから地図を取り出す。



「そうか、やはり報告どおり前任者は殺されたと見て間違いはないか」

「はい、そうだと思われます」


向こうから重苦しい雰囲気が電話越しでも伝わってくるのがわかる。

以前この街の調査を担当していた人物が殺されたという情報は事前に耳に入っていた。

だがその現場を確認することで改めて認識させられたのだろう。


「了解した。俺が向かえるようになるにはあと数週間はかかりそうだ。それまであたりの調査を頼む。それと以前の主張所が使えない以上、新たな拠点を見つける必要がある。もし良さそうな場所があればそこも調べておいてくれ」

「わかりました。引き続き調査を続行します」

「任務については以上だ。またなにかあったらこちらから連絡する。それと……」

「何でしょう、まだお話があるのですか?」

「いや任務の話は以上だ。ここからは君の保護者としての話だ」


その言葉に少し複雑な心境をいだく。先ほどまで大人びた雰囲気をだしていた彼女ではあったが、その話を聞くと同時に表情に曇りが見える。


「……どんなお話でしょうか?」

「今回の任務はおそらく長期滞在という形で行われることになるだろう。従ってこの町に早めに慣れることは重要だ。それを踏まえてお前には町にある高校に通ってもらう」

「ちょっちょっと待ってください。学校ですか、私が?」


突然のことにどう反応したらいいのかわからずに動揺した声を上げてしまう。

静だった廃ビル内に大きな声が谺する。


「あまり大きな声出すな。誰かに気づかれるぞ」

「そ、それはそうですが。突然どうしたんですか学校なんて、私は養成所で必要な知識は学んだはずなのですが」

「あの場所はただ知識を詰め込むような場所だ。勉学に関してはいいが、それ以外何も学べない。それに昔言っていただろう、普通の学校に行きたいと」

「確かそういったような気はしますけどいきなりだなんて……」

「とにかくすでに転入手続きは済んである。明日から早速学校へ通え」

「明日からですか!?まってくださいまだ制服とかそういう準備が」

「心配はない。持ってきたカバンを見てみろ」


そう言われ足元においてあるカバンを調べると自分の下着や日用品などの下に隠れるよう真新しい制服がしまってあった。


「いつのまにこんな物を……」

「君の友人に頼んで仕込んでおいてもらった。お前をびっくりさせるためのプレゼントだと説明したら快く受けてくれた」



彼女が向こうを出る前に別れの挨拶をしにきたと唯一の友達が部屋をおとずれたのだ。

何か袋のようなものを持っていて中からプレゼントと称して服などを渡されたのだが、着ているところがみたいといわれ仕方なく別の部屋で着替えることになった。

おそらくはその時にでも仕込んだものなのであろう。


(だからあいつ出発する前私の部屋に……)


友達の妙な行動に合点がいき、思わず大きなため息をつく。

おかしいとは感じていたがまさかこんなことを企んでいようとは。


「制服におかしな点はないと思うが、何か不都合があるならそちらで対処しろ。その他必要品に関しては現地で手に入れてくれ」

「すいません、これは質の悪い冗談というわけではないのですよね」

「無論だ、そんな面倒な冗談を言うほど私は暇じゃない。任務のこともあり大変かもしれないが、楽しんできてくれ」

「わかりました、……お心遣いありがとうございます」


そういって再度通話をきろうとすると待てという声が向こうから聞こえた。


「最後に一つだけ言うことがあった。その転入先の高校なのだが、俺の甥が通っているはずだ。もし学校生活で何かわからないことでもあればそいつを頼るといい」

「甥……、もしかして妹さんの?」

「そうだ、前に話したことがあるだろう。長い間会ってはいないが俺の名前を出せば通じるはずだ。俺の方からも明日一報入れておく」

「わかりました、何かあれば彼を頼ることにします」

「ただ注意してくれ彼はまだ一般人だ、こちら側の人間ではない」


最後につけたすように注意を促す。

彼女はその言葉の意味をすぐに理解し了承の返事をした。


「では司令いろいろとありがとうございます」

「ああ、がんばれよ。くれぐれも無理はしないようにな」


そういい残して通話は切れた。


(学校か……)


心の中でそうつぶやく。突然の指示に戸惑いはしたが昔夢見た民間の学舎に行けることに自然と顔に笑みがこぼれる。

嬉しさと未知へ不安が交じり合った感情胸に抱き、また窓から町を眺める。

ネオンの光で照らされる町とは対照的に光のない廃ビルを月光がやさしく照らしていた。

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