メギドフレイム
「今日はここまでだ。解散!」
ガイさんの号令により今日の訓練が終わり、残って訓練していく人以外はガヤガヤと雑談をしながら出口へ歩いていく。
「おーぃ、ミズキ君〜」
ん?誰だろう?訓練場の入り口から呼び声がする。あれは…
「久しぶりだね」
「フィナ様、ご無沙汰してます」
筆頭魔術師のフィナ様だ。
「どうされました?何か御用ですか?」
「うん、此間言ってた魔術を教えるって件覚えてるかな?」
「あぁ。魔力がスムーズに動かせる様になったらって話の」
「そうそう。私、ちょっとお出かけする事になってね。暫く戻ってこないからその前にちょっとだけ教えとこうと思って」
「お出かけですか?」
どこ行くんだろ?領地の視察とかかな?
「此間城に敵が侵入してきてユイ姫も君も危なかっただろ?シャニ様が首飛ばしちゃったから尋問は出来なかったけど、覆面ハグったら獣人だったし、その時の敵襲も獣人の軍団だったし、まぁ十中八九獣王の差金だろうって事で、アイツらの所にお返ししに行く事になってさ」
「お礼参りって奴ですね」
「そうそう。魔術師全員連れてって大規模魔術でアイツ等の城吹っ飛ばしてくる。ふふ、今から楽しみで仕方がない」
「マジっすか。そんな事して大丈夫なんですか?」
なんと恐ろしい…城吹っ飛ばしたらノンストップ戦争になるんじゃなかろうか?
「はは、もし争いになったとしても獣王国如きに負ける要素が無いさ。ま、そんなわけで教えるなら今なんだけどどうする?」
「是非お願いします」
「よーし、じゃああの木人を的にして火球の魔術をやってみようか。多分今のミズキ君なら出来る。と、思う。先ずは手本を見せるね。魔力を練って掌に集めて…原初の火よこの手に宿り、力纏いて巻き起これ、敵を穿ち、燃え上がれ、ファイアボール」
ヒュ、ドォォォン!とフィナ様の掌から火の玉が打ち出され、木人にぶち当たって激しく炎が燃え上がる。
「おぉー、凄い!」
「こんな感じ。本当はもっと呪文を圧縮して素早く撃つんだけど先ずはコレで練習してみると良いよ」
「はい、やってみます!」
えぇーっと…さっきのフィナ様の出したファイアボールをイメージしながら…
「原初の火よこの手に宿り、力纏いて燃え上がれ、ファイアボール!」
ゴォォォォッ!「うわぁぁっ!」
急に俺の手元で燃え上がる炎。すぐさま離れたので火傷はしなかったけど、ビックリした…髪の毛に燃え移ったりしてない?大丈夫だよね?
「あはは、駄目だよ省略しちゃ。呪文は言霊だから、ちゃんと詠唱しないと思った通りの魔術は撃てないんだ。もう一回行くよ?原初の火よこの手に宿り、力纏いて巻き起これ、敵を穿ち、燃え上がれ、ファイアボール」
ヒュ、ドォォォン!先程と同じように木人にぶち当たって燃え盛る。
「や、やってみます。原初の火よこの手に宿り、力纏いて巻き起これ、敵を穿ち、燃え上がれ、ファイアボール」
ヒュ、ドォォォン!フィナ様が撃ったファイアボールと同じように火の玉が木人に突き刺さり燃え盛る。
「そうそう。一言一句間違えちゃダメだよ?魔力を練る練習も欠かさずに。続きは帰ってからね。またねミズキ君」
「ありがとうございました!フィナ様も気をつけて!」
手をヒラヒラさせながら訓練場から出て行くフィナ様。颯爽としててカッコいいぜ。
うむ、忘れないうちに反復練習しとこ。
………
あの後延々とファイアボールを木人にぶつける練習をしてた俺。
でも練習してるうちにちょっと疑問に思った。あの失敗したファイアボールは手元で燃え盛ったけど…炎自体はちゃんと出た。つまり不完全な呪文でも発動はする。
言霊は魔力を伴って発言すると物理法則を捻じ曲げて現象を起こす力って事かな?
だったら…こんなんはどうだ?
「炎の槍よ、敵を貫け!」
ボヒュッ…ボワッ 小さな火が槍状になって木人に当たって少し燃えた。
「んー、出るは出るんだな。威力はしょぼいけど」
何故威力が出ないのか…うーん?じゃあちょっと付け足して、
「原初の火よ、炎の槍となりて、敵を貫け!」
バシュッ!ゴォッッ!
おぉ、さっきよりマシになった。じゃあそれっぽくいっぱい付け足してみようか。
「原初の火よ、絶えず燃え盛る神滅の炎よ。我が内の力を喰らい、夢幻より来たりて、かの存在を滅却せよ!メギドフレイム!」
カッ!ゴァァァァァァァ…
超高速で飛んで言った炎の槍が当たった瞬間青色の炎が空高く立ち上がる。それと同時に俺の意識もブラックアウトした。