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ミズキの異世界物語  作者: すぺぇすふぁんたグレープ
二章 あるいはミズキチという名の犬
38/42

罪なボディ

 相棒が腰に無いこの2週間、何処か落ち着かない気持ちで過ごしていたけど、ようやくこの日がやって来た。


 俺は相棒を迎えに行くべく、城を出て街を歩く。向かうは真っ直ぐ、鍛冶屋のガルディさんの所だ。

 辿り着いた鍛冶屋の扉を開けて中に入ると、妖精スタイルなロナンシアがカウンターのテーブルに腰掛けてガルディさんと話をしている所だった。


「おう、兄ちゃん」

「主様!」


 俺に気付いたロナンシアが飛び込んできた。俺の腰の左に抱きついてきたロナンシアの頭を指で撫でて、借りていたブロードソードをガルディさんに返す。


「貸して頂きありがとうございました」

「あぁ。ロナンシアちゃんが不安がってたぜ?主様が私以外の剣と…って」

「ちゃんと約束は守ったよ。一度も抜いてない」

「本当ですか!?その子の悔しがってる顔が目に浮かびます!」


 ふんす!と得意げな顔をするロナンシア。


「で、どんな感じに仕上がったんですか?」

「ロナンシアちゃん、見せてやってくれ」

「はぁい!」


 光と共に鞘に入った剣の姿に変化するロナンシア。

 凄い、かなり変わっている。白い鞘に青い金属で補強されたカッコいい外見。へー、ほー、と色んな角度から眺めた後、剣を抜いてみるとまず目に入るのは剣身。前とは少し違う、剣の腹部分に文字らしき模様が刻まれている。多分読みはロナンシアかな?

 ガードは光に当てると蒼く光る金属で作られている。これがアダマス鋼か。それ程装飾は凝ってない無骨な感じだけど、それがまた良い。

 握りの部分は白い金属…ミスリルだな。今はまだグリップの皮を巻いてない状態。


「グリップは兄ちゃんの手に合わせて巻こうと思ってな。ちょっとこの剣を握ってもらえるか?」


 そう言われてガルディさんが取り出した剣を握る。


「どうだ?握った感じは?」

「これよりはもう少し太い方が良いかもしれません」

「そうか。じゃあちょっとロナンシアちゃんを貸してくれ」


 ガルディさんに相棒を渡すと、グリップ部分に皮を巻いてくれる。


「どうだ?しっくりくるか?」

「良いですね、これならしっかり握れそうです」

「もし気になったらいつでも巻き直してやるからな」


 相棒を持って構えてみる。良いね。これは実際に振るうのが楽しみになる。


『主様主様』

「うん?」

『私は生涯を掛けて主様に仕える事を誓います』

「ありがとう。こんな相棒を持って幸せだよ。大事にする」

『…ガルディおじ様、見届けてくださいましたか?』

「あぁ、2人の行く末に幸在らん事を」


 …神父様(但しムキムキのおじさん)の前で愛を誓ったのか。前にそんな事言ってたな。


 再び妖精スタイルに変化したロナンシアが俺の肩に座って満足そうに足をプラプラさせている。


「あ、代金です」

「おう。こんなに貢がせてロナンシアちゃんは罪な女だな」

「主様は私にメロメロですから」

「違えねぇ」


 ハッハッハと笑うガルディさんと挨拶を交わして鍛冶屋を後にした俺達は、早速探索者協会へ。折角相棒を新調したので試し切りがしたいのだ。でも1人だと門で止められるので、誰か一緒に来て欲しい。後お金が欲しい。


「ミズキ君いらっしゃい」

「ミスティさん、こんにちは」

「その肩の妖精さんみたいなのは?」

「俺の相棒です。ロナンシア、剣に戻って」

「はぁい」


 ずっと肩で足をプラプラ機嫌良さそうにしていたロナンシアが剣の姿に戻る。驚くミスティさん。物珍しそうに相棒を見ている。


「何それ、変身する剣?そんなの初めて見たんだけど」

「ルナーティアの力を分けて貰った剣なんです」

「ルナーティアって言うと欠月山の?行ったの?」

「他の騎士の付き添いで」

「へぇ〜」

「で、鍛冶屋でこの相棒を作り直して貰ったので、試し切りに街の外に出たいんです。誰か手の空いてる人を紹介して貰えると嬉しいんですが」

「成る程ね。ちょっと待ってて」


 と、言い残してカウンターから出て併設された酒場でご飯を食べていた探索者達と何やら話をし始めるミスティさん。少しして戻ってきた。


「ご飯食べ終わった後で良いなら2人程一緒に行ってくれるって」

「ありがとうございます!」

「それまでカウンターで話でもしてましょう。その相棒ちゃんの事も聞きたいし」


 ロナンシアの事で話に華を咲かせていると、2人の探索者が近づいてきた。


「姐さん、ミズキ君、待たせたな」

「姐さん言うなし」

「噂のミズキ君と一緒に街の外とかワクワクするね!」


 1人は赤い肌をしていてかなり筋肉質な鬼系種族の男性。大きな剣を背負ってて強そう。ドンガさん。

 もう1人は細身で少し鱗が肌に生えている女の人。杖を持ってて魔術師らしい服装。ニコルルさん。

 2人ともBランクの猛者で、2人でタッグを組んで街の外の依頼をこなして生計を立ててるんだそう。


 早速3人で協会を出発、街の門を抜けて街道を歩く。


「試し切りなら人型タイプの魔物が良いか?」

「そうですね…うーん、正直どっちでも良いですけど」

「あっちの草原なら色々出てくるよ」


 ニコルルさんが指差す方に進むことにした。少しすると草が見渡す限りに生えている草原が見えてきた。


「ほらあそこ、アレはジャイアントだね」

「デカいなー」


 結構遠くでも存在感を放つジャイアント…まぁ巨人という奴だ。デカい、タフい、以外と速いと中々お強い魔物。


「あっちにはガルムが何体かいるな」

「数がいるからちょっと厳しいかな?」


 ガルムは要はデカい狼だな。単体でもかなり強くて厄介なのに群れる。あの数を3人で狩るには骨が折れるどころか頭を齧られかねない。


「ペガサスもいるぞ?」

「珍しいね?」


 ペガサス。想像通りの翼の生えた白い馬。魔物では無く妖魔の部類で、人語を理解し普通に喋る。強い者に従い、認められれば背に乗せてくれるんだとか。強い弱いで言ったら結構強いらしくて突進と後ろ足による蹴りが強力、更に魔法を駆使してくるらしい。


「お、あそこに丁度良さそうなゴブリンいるよ」

「手頃だな。アレで良いんじゃないか?」


 ニコルルさんが指差した方向に2メートル強でムキムキのゴブリン。棍棒みたいなの持ってて確かに丁度良さげ。


「じゃあちょっと行ってきます」

「俺達は見てるよ」「ミズキ君の戦い…ワクワクするね」


 相棒を抜いて真正面から堂々と歩いて行く。当然にこっちに気付いたゴブリンが棍棒を振りかざして突進してくる。

 その勢いのまま体重を乗せて振り下ろしてきた棍棒を剣の腹で左から右に叩いて逸らす。おぉ、グリップがしっかりしてるお陰か力が入れやすいな。

 逸らされて地面に叩きつけられた棍棒。地面の土が勢いよく飛び散る。あ、ちょっと服が汚れたじゃんか、もー。

 そこからすかさず棍棒をカチ上げてきたゴブリン。それを右手で柄を、左手で剣の腹を抑える様にして正面から受けてみる。ガァン!と大きな音と共に俺が数メートル程吹き飛ばされる。流石この過酷な地域で生きてきたゴブリン、パワーがあるな。


『ふふん、こんなのへっちゃらなのです!』


 相棒は特になんともない様子で元気よく喋る。今の受け方、普通の剣なら少しぐらい曲がったり折れたりしてもおかしく無いけど、剣先から柄頭まで全ての面においてパワーアップしただけあってとても安心できる強度。

 更に追い込みをかけてくるゴブリンが振り抜いた棍棒を避けながらサクッと首を刎ねる。良いね、振りやすい。


 討伐証明になるゴブリンの耳を削ぎ取って(正直気持ち悪い)ドンガさん達の所へ戻る。


「流石だねー。強い」

「その剣頑丈だね?どこでゲットしたの?」

「コレは…」

「うわ!ちょっと、あっちにデモンウォーカーいる!」

「マジか。少し隠れよう」


 ドンガさんとニコルルさんに腕を引っ張られて背の高い草むらに隠れる。草の隙間から遠目に見えるのは…

 こないだのゲヘナを少し丸々させた見た目。邪気と言った感じの黒い魔力を漂わせている悪魔を2人は真剣な顔で見つめている。


「悪魔は見つけたら協会に報告するんだ」

「神聖魔術の類いか凄い威力の魔術を使える人を連れて来ないとマトモにダメージ与えられないんだよ」

「放っておくと、そこらの魔物を餌にどんどん強くなっていくから見かけたら早めに討伐しないといけないんだ。ミズキには悪いけど一旦戻ろう」

「俺、倒せますよ?」

「え?ミズキ君、神聖魔術使えるの?」

「まぁ、はい」

「おぉ、それは助かる」

「じゃあちょっと行ってきますね」


 相棒を抜いて、悪魔の方へダッシュする。


「ちょっとミズキ君!1人で戦うつもり!?」

「大丈夫ですよー」


 ニコルルさんに言葉を返しながら、ミスリル銀の神像…シン様を服の下から取り出して祈りを捧げる。


「シン様、ロナンシアに破邪の力を」


 神像が光り、相棒が白く輝き始める。こっちに気付いた悪魔が俺に向けて黒い炎の塊を連続で放ってくるのを適当に避けながら近づいて行く。


『ニンゲン!ソレイジョウチカヅクナ!』

「カタコト過ぎて聞き取れないなぁ」


 俺の一足の間合いに入った所で闘気を纏って地を蹴る。爆発的な加速と共に目の前まで到達、踏み込んで飛び上がりながら勢いそのまま、股下から頭の先まで真っ二つにぶった斬った。


『ガァァアッ……』


 軽やかに着地。悪魔の方を見るとそのままグズグズと崩れてヘドロになっていく。思ったより大したこと無かったなと思いながら鞘に相棒を収めて、2人の元へ。


「一撃…ミズキ君メチャ強」

「流石姐さんを下した男」

「あの悪魔が弱かったんですよ」

「いやいや、悪魔に弱いとか無いから。私達じゃ倒せないよ」

「切っても再生するからな普通。しかしどうやって剣に神聖属性を纏わせたんだ?」

「それは…」


 3人で話をしていると、何かが近づいてくる気配。振り向くとさっき遠目で見たペガサスがこちらに歩いてくるのが見える。


「ん?ペガサスが来るね」

「特に敵意は無さそうだな」


 俺達の前まで来て立ち止まるペガサス。なんだなんだ?


『そこのニンゲン。名をなんと言う』

「俺?ミズキだけど」

『ミズキか。さっきの悪魔を一刀の元に斬り捨てた動きは素晴らしかった』

「それはどうも?」

『私は強い者が好きだ。そんな強いお主について行きたいと思うのだがどうだろうか?』

「あ、いや、えー?」

「おぉ、ペガサスが一目惚れ」

「噂に違わずモテモテだな」


 ペガサスかぁ。確かに乗って空を駆けるってちょっと憧れるけど。でもなぁ…


「置いとくところが無いんだよなぁ」


 俺自身が城住まいだからこのペガサスを住まわせる場所が無い。騎士団の馬の厩舎はあるけど、確か空きは無かったような?

 そしてペガサスは大きい。食費に幾ら掛かるのか。金欠だしなぁ。

 …馬とか個人で飼うの無理じゃね?


「ちょっと俺に甲斐性が無いので今回は…」

「ミズキ君、城住まいだったよね?断る前にまずは城の偉い人にでも聞いてみたらどうだろう?折角のペガサスだし勿体無いよ」

「だよね。このペガサスさん意思疎通出来るし、寝るところに屋根さえ付いてれば柵とか要らないでしょ」

『左様。それに私は活動していなければそれ程食べない』

「取り敢えずもうちょっと魔物狩ったら終いにして城に戻って聞いてみては?駄目だったらその時は仕方ないだろうけど」

「まぁ…はい」







 あの後魔物を数匹狩って協会で報酬を貰いドンガさん達と別れ…今、俺は城に戻ってきて訓練場にいたアストルさんを捕まえて飼う場所が無いか聞いている所。隣にはペガサスもいる。


「で、この城の何処かにペガサスを置く場所が欲しいんですが…」

「良いぞ?そうだな、厩舎は空きが無いから、訓練場の隅にでも簡易的な小屋を建てようか」

「良いんですか?ありがとうございます」

『アストル殿、感謝する』

「はは、ペガサス君、ミズキ君の事を宜しく頼むよ。小屋が出来るまでは悪いけど外で寝てもらえるかい?数日の内には作るから」

『元々外で生活しているんだ、問題ない』

「そうかそうか。ミズキ君、ちゃんと世話してあげるんだよ」

「はい」


 アストルさんが立ち去って行くのを見送って、ペガサスをみる。ペガサスもこっちを向いた。


『ミズキ、コレから宜しく頼む。空を飛びたい時には言ってくれ』

「うん、その時はお願いするよ。あー、えーと、ペガサス君には名前はあるの?」

『いや、無い。出来れば付けて貰えると嬉しい』

「そっか、因みに雄?牝?」


 アレはついてない様に見えるけど…


『牝だ』

「女の子か、じゃあ…」


 空駆ける馬だからソラ?天馬だからテンテンとか?コレはちょっとパンダっぽいか。白馬でもあるからハク…やっぱ呼びやすい名前がいいよね。


「うん、ハクにしよう」

『ハクだな。悪くない…どうだ、折角だから一度乗ってみないか?』

「あ、うん。乗せて貰おうかな?」


 …俺馬乗った事無いんだけど乗れるんだろうか?と、ちょっと不安になりながらハクにピョンと跨ってみる。うわ、自転車の感覚で気軽に乗ったけど足の置き場が無いからか結構不安定と言うか、コレで走られると落ちそうな気がする。

 鞍とか鐙とかも用意しとかなきゃかな?またお金が掛かりそうだ。こりゃ稼がないとヤベェ。


『膝で私の腹を挟む様にして乗ると良い。では飛ぶぞ?』

「え?飛ぶの?今から?」

『大丈夫だ、そんなに激しい動きはしない』

「ゆ、ゆっくりでお願いします」


 ハクが翼を広げた。折りたたんでいた時のサイズを考えると明らかに大きくなっている。その翼をゆっくり羽ばたかせると、フワッとした浮遊感と共に少しずつ上昇し始めた。数百キロはあると思うペガサス+俺の重量が嘘の様に感じる軽やかさだ。どう考えても空力で浮かんでない、コレも魔力がアレしてる感じか?


 そのまま訓練場の上空をゆっくりと回る。下で騎士達がコチラを見上げている。


 …後でまた色々言われそうだなぁ。

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