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ミズキの異世界物語  作者: すぺぇすふぁんたグレープ
二章 あるいはミズキチという名の犬
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散財

 いつも通りなんの用事もない休日。俺は自分の部屋のベッドに座って相棒に油を塗っていた。


 以前ならこんな日はリリスの屋敷の掃除をしに行ってた所なんだけど、テトが使用人になった事もあって最近は屋敷もすっかり綺麗になってする事が無い。


 暇だなぁ…と、気もそぞろに刃に油を塗っていると、唐突に相棒…ロナンシアが妖精スタイルに変化した。びっくり。


「主様!そんな適当な感じで私の繊細なボディにオイルを塗りたくらないで下さい!」

「えぇ?」


 前傾姿勢でプンスカプンプンしてくる。


「愛が感じられません!もっと集中して欲しいです!」

「そうは言ってもなぁ」


 ロナンシアの神鋼のボディ…剣身は本人曰く錆びない。正直油を塗る必要があるのか分からないが、本人…本剣がしきりに油を塗って欲しいと頼んでくるのでこうやって日々布で磨いて油を塗っている。


「隅々まで、私の大事な所まで優しく、丁寧に、時には力強く!」

「大事な所ってどこよ?」

「それは勿論、鍔と剣身の境ですよ」

「どうしてそこなの?」

「私は元々は数打ち品のロングソードですから、神鋼となった剣身部分は兎も角、ガード(鍔)やグリップ(握り)等は従来の安普請なのです」

「そうなの?一緒に変化したんじゃ無いんだ?」

「ええ。ですからそこは私にとってのウィークポイントで」

「ふぅん?」


 そう聞くとなんか気になり始める。鍛冶屋のおじさんに作り直して貰うのもアリか?結構お金も貯まってきてるし、少々奮発してもいい気がする。


「今から鍛冶屋のおじさんの所へ行こうか?」

「え?本当ですか?そんな…鍛冶屋のおじ様の前で私達2人の愛を誓うんですね?」

「ロナンシア的に鍛冶屋のおじさんは神父様扱いなんだ?」


 割と筋肉ムキムキのガテン系なおじさんなんだけど。


「はっ…私を主様好みの身体にするつもりですか!?もしかして私にあんな事やこんな事を…」

「はいはい、ロナンシアは既に俺好みだよ。行くよー」


 戯言を適当にあしらって、腰帯を付ける。そこに吸い込まれる様に収まっていくロナンシア。


『うー!楽しみです!』





「お、兄ちゃん久しぶりだな!」

「お邪魔します」


 テクテクと街を歩いて鍛冶屋に辿り着いた。店に入ると店主さんがお客さんと話をしている所だった。

 白い髪に白い肌の女性…このお客さんは多分この街の上流階級の人…貴族様だな。気品のある高級そうな服を身に纏ってる。

 この街の貴族というのは、多少の差はあれど妖鬼族の血をその身に宿している。所謂傍系王族。分家とも言うか。血の濃い、直近に王族から分たれた人達はかなりシャニ様達に似た姿を持っている。ある程度血が薄くなると妖鬼族の特徴が現れなくなり、そんな人は平民と言うか一般市民として扱われる様になる。余り人数は多くなくて、10万人近く住んでいるこの街の中に精々数十人いるかと言った所だそうで。

 大体の貴族は城の周辺に居を構えていて、白い髪や白い肌をした人達が庭を箒で掃いていたり、畑を弄っていたりする光景が見られる事がある。貴族というには割とのほほんとした感じだが、やはり妖鬼族の血筋とあって強い人が多いらしい。


「おや、君は…」


 そんな貴族様なお客さんがこっちを見た。よく見ると城で見かけた事のある顔だ。確か治癒術師団の人だったような?名前までは知らない。


「どうも、こんにちは」

「うん、こんにちは。君はミズキ君だね。お話はよく耳にするよ」

「俺の事知ってるんですね」

「ミズキ君は有名人だから」

「そうなんですか?」

「前にイツ様と殴り合いをしたでしょ?あれ、城内じゃ凄い話題になってたから。他にも色々あるけど、城に勤めててミズキ君の事知らない人そういないと思う」

「そうなんですか…」


 俺は珍獣扱いらしい。


「私はチェリって言うんだ。まぁ平時に関わる事あんまり無いかもだけど。ミズキ君救護室に来ること無いし」

「まぁ、吸血鬼モドキですから怪我しても勝手に治っちゃいますしね」

「凄いよねその身体。そうだ、店主に用が有ったんじゃない?私に構わず先に話を終わらせるといいよ」

「いいんですか?」

「私のは大した用事じゃないから」

「じゃあ…店主さん、俺のロングソードの剣身以外の部分を作り直して欲しいんですけど」


 と、いいながら腰帯から相棒を鞘ごと外して店主さんに渡す。店主さんが剣を抜いて確認し始める。


「おう、そりゃ構わないけど…別にガタがある様には見えないが?」

「その相棒が言うには作りが甘いんだそうで」

「うん?相棒って言うのはこのロングソードの事か?どう言う意味だ?」

「それはですね…ロナンシア説明して」

『はぁい』

「!?」


 店主さんの手の上で剣の姿から妖精スタイルに変化するロナンシア。店主さんもチェリさんもメッチャ驚いてる。


「チェリ様は初めまして。店主様は3度目まして。主様の相棒を務めさせて頂いています、ロナンシアと申します」

「お、おう。ガルディだ」

「チェリ…です」


 自己紹介と共に深くお辞儀をするロナンシア。それを見て店主さん改めガルディさんとチェリさんが頭を下げる。


「それでは説明をという事ですが…」


 処分されそうだった数打ちのロングソードだった頃から悪魔を倒して神鋼になった事、そしてルナーティアに力を分けて貰って変身出来る様になった所まで澱みなく説明していくロナンシア。


「…という話でして。で、私の身体を新調して欲しくて来た次第です」

「確かにこの前金槌で確かめた時に変な手応えだったが…長く鍛冶してるが神鋼なんて金属初めて聞いた」

「私も初めて聞いたよ。何か心踊るね」

「主に聖剣や神剣と言った、名のある剣に良く使われている材質です」

「成る程な。つまりロナンシアちゃんは聖剣や神剣の類いという事か?」

「どちらかと言えば神剣でしょうか?ですが主様の力が無いと丈夫さが取り柄でちょっと神聖属性が付いただけのロングソードですね。悪魔一匹倒せません」

「はぁー、兄ちゃん凄えんだな」

「面白いね。ミズキ君は話題に事欠かないなぁ」

「それ程でも…で、新調して貰えます?」

「あぁ!任せとけ…と言いたい所だが」


 ガルディさんが顎に手を当てて唸っている。


「俺も見た事が無い折角の神剣だ。どうせなら最高クラスの素材を使って拵えてやりたく無いか?」

「と、言いますと?」

「ブレードの繋ぎ目からポンメル…柄頭にかけて丈夫で魔力伝達率の高いミスリル、ガードの一部に世界最高硬度と靭性を兼ね備えたアダマス鋼、グリップ表面に山脈象の薄皮、鞘はブトゥバスの木とブルーエル鋼の複合材と言った所か」

「聞くだけで超高そう…おいくら掛かるんです?」

「逆に聞くがいくらなら出せそうなんだ?」

「えぇーっと、100万ぐらいまでならなんとか」

「本当ならもっと掛かるんだがロナンシアちゃんの為だ、その100万で手を打ってやるよ」

「殆ど貯金全額なんですけど」


 ロナンシア10本分の金額だ。決してお安くは無い。


「兄ちゃん、男を魅せる時だぜ?」

「主様…」


 ロナンシアの目がキラキラしている。断りづらい。


「じゃあそれで…」

「ヨシ決まり!素材集めも含めて2週間ほど掛かるからその間ロナンシアちゃんを預かっても良いか?繋ぎの剣は貸してやるからよ」

「はい…」


 ガルディさんにすぐそこに有ったブロードソードを渡される。


「主様、浮気はしないで下さいね?そんなポッと出の子を抜いちゃダメですよ?」

「何のための代用品…」


 ブロードソードを腰帯に付ける。相棒と比べると少し重たいな。いや、相棒の方がちょっと重たい性格してるな。


「結果を楽しみにしてな。しっかりキッチリ作っとくからよ!」

「はい、お願いしますね」

「何か見てると私もそんな剣が欲しくなってきたよ。店主、お話できる剣とか無い?」

「あるわけが無い。そんな剣ロナンシアちゃん以外で見た事ねぇよ」

「…私もルナーティアを抜きに行ってみようかな?」

「やめといた方が…ちゃんとした目的が無いとティアさんは断るでしょうし」

「そうか、残念」


 ではまた2週間後に来るという事で俺はその場を後にした。何かバイト探さにゃ一気に金欠だよ。

 探索者協会にでも行ってみるかな。

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