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ミズキの異世界物語  作者: すぺぇすふぁんたグレープ
二章 あるいはミズキチという名の犬
35/42

ノノ




 お酒を割ったグラスを静かに傾けながら、ミズキチさん達の話を聞いているシリウスさん。その横で静かに座ってる私…

 私、3日前に入ったばかりの新人で、正直なんて話しかければ良いのか分からない。

 私の右隣がシリウスさん、左隣がミズキチさん。人間族系のイケメンと甘いマスクの2人に両脇から挟まれててとても緊張する。手汗が凄い。

 でも、折角この仕事に就いたんだから勇気を出して話しかけないと…


「あ、あの…」

「うん?」


 思わずミズキチさんに話しかけちゃった。本当は席順的にシリウスさんのお相手をしなきゃなんだけど、シリウスさんはなんかクールなイケメン系で敷居が高かったんだ。ミズキチさんは優しそうだし…?


「ご、ごご」

「ごご?」

「ご趣味は何ですか?」

「え?趣味?趣味かぁ」

「ミズキチの趣味?気になるなぁ」


 リリス様が合いの手を出してくれた。リリス様はとても優しい。入ったばかりで俯き加減な私を気遣ってちょくちょく助け舟を出してくれる。お陰でこの2日間何とかやってこれた様なもので。


「そうだなぁ…趣味…身体を鍛える事とか?血を操って色々創る事?あー、他に思いつかないな」

「身体を鍛えてらっしゃるんですか?」

「うん、騎士だからね。このメンバー全員そうだけど」

「あ、そうなんですね。確かにみんな強そう…」


 見回して他の人も見るけどみんな身体がガッチリしてる。ミズキさんやシリウスさんは細マッチョだし、トラクスさんやシャガルさんはムキムキ。レイダスさんは皮膚が鱗だからちょっと分かりにくいけどなんか強そう。


「ミズキチ、この中だと誰が一番強いの?ミズキチ?」

「シリウスさんかな」

「いやいや…普段のミズキならいい勝負になるかもだけど、変身したらダントツでミズキだよ」

「変身ってあの妖鬼族になるヤツ?確かにあの時のミズキチは凄いよね」

「妖鬼族に変身するんですか?見てみたいです」

「うーん、アレやると後ですっごい疲れるから出来ればやりたくは無いなぁ」

「もし疲れて倒れても私の屋敷で休ませてあげるから安心して?」

「それ、なんか全然安心できないんですけど…」

「ほらほら、私の可愛い後輩のノノちゃんのお願いなんだから」

「あー、じゃあちょっとだけ」


 そう言ってミズキチさんが目を瞑って集中し始めた。途端に黒から白へ一気に変わる髪の色。肌の色も透き通るような白さになっていって、額の上からツノが2本飛び出した。目を開いたミズキチさんの瞳は真っ赤だ。


「ふぅ。こんな感じ。どう?」

「す、凄くカッコいいです!」


 優しそうだった雰囲気が強く、鋭くなってちょっとドキドキする。なんだろう、怖い…のかな?

 じっと見つめてくるミズキチさんから目が離せない…なのでずっと見つめ合う私達。どんどん胸が高鳴っていく。


「…ちょっとミズキチ、ダメだよ?」

「でもノノちゃんがとっても美味しそうでさ」


 え!?美味しそうって何!?

 更にじーっと見つめてくるミズキチさん。私食べられちゃうの!?そう思うと更に心臓がバクバクし始めて、呼吸もしづらくって今にも意識が飛びそう。


「ミズキチ、変身を解いて」

「ちょっとだけ…そう、ほんのちょっと…」

「ダメ!いう事聞かないと後でミズキチに凄い事するからね?」

「えぇ?凄い事ってなんですの…」

「いいから早く変身を解きなさい」


 リリス様に言われて元の姿に戻っていくミズキチさん。ほっと一安心、だけどどこか残念な気持ちが浮かんでくる…?なんで?

 ちょっと自分の感情がよく分からないけど、ミズキチさんから目を離して、まだドキドキしてる心臓を落ち着けるようにお酒を飲む。うー、絶対頬が赤くなってる。


「ミズキチは必要な時以外変身禁止!」

「ミズキはアレだね、割と見境が無いというか。噂通りだ」

「シリシリ、それどんな噂?」

「女たらし的な?」

「あー、わかる」

「主様はそれはもうエロいですよ。ムッツリスケベの名を欲しいままにしていると言っても過言では無いくらいに。この間の夜に外食へ行った時だって可愛い店員さんの脚を目で追って「ちょっとロナンシアは黙ってて?」

「やっぱりミズキチは脚が好きなのか。私も結構自信あるんだけどなー?ほら、どう?」

「うん、リリスの脚もとっても綺麗だよ?でもこんな所でドレスを捲り上げないで?」

「じゃあ今晩屋敷で存分に見せてあげるね?」

「屋敷へ行くのはもう確定なの?」

「だってミズキチを酔い潰してお持ち帰りする事は決定してるから。はい、おかわりのお酒」

「知らない予定が入ってる…」

「リリスちゃんはガンガン行くタイプなんだね〜」


 ミズキチさん達が話をしている所にうまく口を挟めず、お酒を抱え込むようにしてチビチビと飲む。脚かぁ。私はかなり身長低いからイマイチ脚が長く見えない。短くは無いと思うんだけど…ちょっと太いかなぁ?ぺちぺちと露出している太ももを叩いてみる。その音に反応したミズキチさんが私の脚を見た。うぁ、恥ずかしい!


「お、ノノちゃんの脚はどうなの?ミズキチ」

「うん、綺麗。ちょっとムチっとしてるのもとても良い」

「え、あ、ありがとうございます…」


 恥ずかしくて俯いてしまった。でも褒められたのは嬉しい…褒められたの?ムチっとしてるって、つまり太いってこと?うー、これから毎日散歩して引き締めなきゃ…


「成る程、ミズキは中々エロいな」

「主様はそれはもう「ロナンシアは黙ってて」えー?私にも喋らせてくださいよぅ。そうだ、私の脚はどうですか主様?」

「うんうん、キレイだよー」

「なんでちょっと適当なんですかー!」


 ロナンシアさんがミズキチさんの肩でプンスカしてミズキチさんの頭をポカポカと叩いている。とても可愛い。私もあんな感じに元気いっぱいな感じになれればこの仕事ももっと上手くやっていけるのかも。


「モモカさん!俺と付き合ってください!!」 

「行ったぁー!」「レイダス渾身の告白!」


 唐突な大声に驚いて右を向くと、レイダスさんがモモカさんに頭を下げて手を伸ばしてる姿が。わぁ、告白シーンとか初めて見た!どうなるのどうなるの?


「レイダス君、ごめんね?モモカ的にはレイダス君の事可愛くて好きだよ?でも恋愛対象として見れるかと言われるとちょっと違うかな〜って」

「そ、そうですか…やっぱり種族の差が…」

「ううん、別に蜥蜴族だからとかじゃないんだけど、モモカは付き合うなら強い人が良いなって」

「それは…」

「レイダス君、まだ新人さんなんでしょ?」

「まぁ、はい…」

「そうだなぁ…ミズキチ君やシリシリさんレベルは難しいかもだけど、トラニャンぐらいには強くなって欲しいな?話はそれからかな?」

「…!っす!強くなるっす!」

「うんうん!強くなってまたモモカに告白してね☆」

「うおぉぉ!やるぞぉー!」

「おぉ、レイレイ君が燃えてる」「モンモン乗せるの上手いね〜」「シャガル、レイダスに抜かれるんじゃ無いか?」「いやいや、俺は負けませんよ?」


 右の方がとても盛り上がってる。うーん、モモカさんは強い人が好きなのか。…私は優しい人が良いかなぁ?


「私はミズキチみたいな人が…ううん、ミズキチが好みだよ?」

「そ、それは…うん、ありがとう?」

「だからちょっと告白してみない?きっと万事上手く行くと思うんだ?」

「そうだなぁ、リリスケ様がもうちょっとお淑やかになったら考えるよ」

「わたくし、えーと、お、お花が好きなんですのよ?」

「取ってつけた奴。因みにどんな花が?」

「あ、えー…うーん…たんぽぽ?」

「案外可愛い答え」


 リリス様とミズキチさんが仲良く会話してるのが羨ましい。私も頑張らなきゃ…よし!


「シリウスさん、お酒のおかわりは要りますか?」

「うん、そうだね…ウイスキーとかあるかな?」

「あ、じゃあちょっと取ってきますね」


 席を立ってカウンターのママさんの所へ。


「ママさーん、ウイスキーって有りますか?」

「あぁ、ちょっと待ってな」


 ママさんが奥から一本のなんかお高そうなウイスキーを持って来た。


「ちょっと良い酒だから、コレを開けて良いか前もって聞くんだよ?飲みきれない分はキープも出来る事を伝えるんだ。そしたら次も来てくれるかもしれないからね?」

「は、はい!」

「まぁそれよりもお客さんを楽しませる事が大事だよ。その為にはまず自分が楽しむ事。失敗してもちゃんと先輩がフォローしてくれるから、臆せず色々試してみることさ」

「はい!」

「良い返事だ。じゃあ行ってきな」


 ママさんに見送られて、ウイスキーを両手に抱えてテーブルに戻る。


「レイダス、まぁ飲めよ」「シャガル先輩、俺そんなに強く無いから…」

「酒というのは吐いて倒れて己の限界を知るものだ。まだ若いんだ、大いに飲んで吐け。勿論吐く時はトイレでな?」

「アルハラは駄目だよー?お酒は楽しく飲みましょう。ほら、シャガルンもトラニャンもそんなにレイダス君を追い込まない」


 そんな話し声を聞きながら再びシリウスさんとミズキさんの間に収まる。


「シリウスさん、あ、あのコレ、ちょっと良いウイスキーなんですけど、このお店ボトルキープが出来るんです、で、開けるかどうするか聞いてからって、だから、あの、えっと」

「あはは、ノノちゃんテンパってる。落ち着いて落ち着いて。先ずは深呼吸してみて」

「し、深呼吸。スーーーー、ハーーーー。あのあの、シリウスさんこのボトル、ちょっと良い奴なんですけど開けても良いですか?残ってもボトルキープ出来ます!」

「『赤鬼』か。確かに良いウイスキーだね。うん、じゃあ開けて貰おうかな?どう?ミズキも一緒にキープしない?」

「俺もですか?」

「そそ、僕は嫁もいるし中々この店に来れないだろうからさ。その間ミズキが飲むと良いよ。ウイスキーにも慣れないとね」

「はぁ。まぁ…」

「コレ、ペンです。コレでボトルに名前を書いてください」


 渡したペンで書かれた2人の名前。記念すべき私が初めて取ったボトルだ。


「じゃあ早速開けようか?シリシリはストレート?」

「そうだね、僕はそれで」

「ミズキチはどうする?」

「水割りでお願い」

「はーい。ノノちゃん、ストレートはこの小さいグラスにそのまま注ぐの。水割りは…」


 リリス様に説明して貰いながらグラス達にお酒を注ぐ。ちょっと緊張。

 注ぎ終わったお酒を持ったシリウスさんとミズキチさんが少しグラスを持ち上げ乾杯をする。


「うん、美味しいね。香りが良い」

「ルパさんのお酒とはまた違いますね」

「ノノちゃんもちょっと飲んでみる?」

「え?良いんですか?」

「勿論良いよ。リリスちゃん、ノノちゃんにハーフロックで入れてあげて」

「はーい」


 私の前に置かれるグラス。ウイスキーって一度も飲んだ事無いけど、どんな味なんだろう?


「じゃあ…いただきます」


 一口。…?焦げた香り?苦いというか辛いというか?これ、美味しい…のかなぁ?


「おー、ノノちゃんが首を傾げてる〜」

「うん、そうだよね、俺も正直そんな感じ」

「はは、2人ともまだまだだね」


 そんな感じでシリウスさん達とまったりとお話しながら…


 暫くした後、寝てしまったミズキチさんをリリス様がお持ち帰りした所でお開きに。トラクスさんとシャガルさんは3件目へ、レイダスさんはシリウスさんとそのまま帰宅。

 キープされたウイスキーのボトルを棚に飾る。そこに書かれたシリウスさんやミズキチさんの名前…また来てくれるかな?


 ふー、よし。先ずは脚を引き締める為に散歩しよう!

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