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ミズキの異世界物語  作者: すぺぇすふぁんたグレープ
二章 あるいはミズキチという名の犬
31/42

お泊まり会

 とある休日、特に用事も無い(いつもの事だけども)のでリリスの屋敷に遊びに来た。門を開けるとギィィ…と軋む。いい加減油差さなくちゃな。玄関のノッカーをタンタンと叩いて少し待つと、「はーい!」という声がして扉が開いた。現れたのはテトだ。


 テトは毎日この屋敷で朝から夕方迄、使用人としてこの屋敷の掃除や備品の整備などをしてる。お陰で埃もつれで廃墟チックだった屋敷の内外はどんどん綺麗になっていってる。


「ミズキさんおはようございます」

「おはよう、テト」

「今日はどうしたんですか?」

「暇だから手伝える事無いかなって?」

「あ、じゃあ高い所の壁を洗うのを一緒にお願いしたいです。アレ、結構大変で」

「オッケー、早速やる?」

「はい。準備してきますね…あ、ハシゴを持ってきて欲しいです」

「あいあい」


 そう言って屋敷の中へ戻っていくテトを見送り、屋敷の外壁に目を向ける。一階部分は綺麗に洗われてるけど、2階部分はまだ薄汚れている。


「確かにテトだと難しいだろうな。よし、やるかぁ!」





 ザシュ!ザシュ!ザシュ!…壁に掛けられたハシゴに登って、壁にテトが魔術で水を掛けてそれを俺がデッキブラシで擦る。擦ったらテトが水を掛けて洗い流す。ハシゴを動かしてまた同じように…俺は吸血鬼になってからは体力オバケだから疲れないけど、並の体力しかないテトには普通にしんどかろう。


「ミズキさんミズキさん」

「んー?」

「今日の夜、家にご飯食べに来ませんか?」

「あー、そうだなぁ。じゃあお邪魔しようかな?」

「やった!お父さん達もミズキさんが次に来るのを心待ちにしてるんですよ」


 テトの家にはテトを吸血鬼モドキにして2週間後に一度訪問したけど、その時はテトのお父さんとお母さんに涙を流しながら歓迎して貰い、お昼ご飯を頂きながら話をした。終始明るい雰囲気で、俺のした事は間違いじゃなかったなと安堵したのは記憶に新しい。

 後、テトの妹ちゃんが俺に懐いて、テトと俺と妹ちゃんで近所のアイスクリーム屋さんでおやつを食べた。

 それから2ヶ月ぐらい経ったかな?いつでも来ていいとはお父さん達から言われているけど、流石に用も無いのに足は向かないというか。


「そっか。何か手土産持ってった方が良いかな…」

「お気遣いは要りませんよ?自分の家だと思って来てください」

「そう?何か悪い気がするけど…まぁそういうなら」


 壁を洗う作業を続けながら、俺とテトは話をする。


「この間ラビがこんな事言ってました。お姉ちゃんがそんなに控えめだとミズキさん取られちゃうよ?って。そんなんだったらお姉ちゃんの代わりに私がこの魅惑のボディでミズキさんを悩殺しちゃうんだから。だから早く結婚しなよって」

「はは…」


 娘さんを俺にくださいと土下座しながら言った俺に対し、お父さんとお母さんは理解があるようで別にその辺りの話を掘り下げては来ない。テトが今まで身体的に不自由していた分、自由に好きな事をさせたいのもあるのだろう。予想していた「結婚式はいつにする?」とか、「孫はいつ見れるのかしら?楽しみだわ」といった事を言われる事もなく、「娘をこれからも宜しくお願いします」と、両親共に頭を下げてきて恐縮した。

 と、そんな両親とは違って、その時初めて顔を合わせたテトの妹、ラビちゃんはやたらと積極的に俺を攻めて来る。その魅惑のボディで抱きついてきて、「お姉ちゃんは置いといて私の部屋でいい事しよ?」とか、「吸血鬼なんでしょ?私の血を吸ってみない?きっと美味しいよ?」とか言って来る。

 俺は約17歳でテトが13歳。高校生と中学生と思えばそこまで変な話でも無い。ありえなくもないレベル。この世界は曖昧な所もあるけど15が成人とされているし、2、3年すれば丁度頃合いの年頃と言える。

 だけど、ラビちゃんは5歳。日本なら未就学児。アウト中のアウトだ。お母さん似のテトと似た顔をしてて確かに可愛いけども。凄くおませさんなのだ。


 ラビちゃんの魅惑のボディに思いを馳せていると、玄関からリリスが出てきた。


「お、ミズキチじゃん。おはよ」

「おはようリリス」

「今日休みなの?私も休みだから今晩どっか食べに行かない?」

「あー、丁度さっきテトの家にお呼ばれした所なんだ。また今度な?」

「そーなの?ちぇ、おねーさんお休みを1人で過ごすのかぁ。さーびしーなー」

「なんでしたらリリス様も一緒に家に来ます?」

「え?いいよいいよ、邪魔でしか無いじゃん」

「そんな事無いです!リリス様だって私を助けてくれた恩人なんです!両親も会ってみたいって言ってます!」

「えぇー?でもさー」

「それに今の私はリリス様の孫に当たる血族の一員なんですから家族同然じゃ無いですか!私もう決めました!リリス様を両親に紹介します!家に来てくれるって言うまで私は今日帰りません!!」

「えー、あー、うん」


 テトの猛烈なお誘いにリリスがたじたじしてる。何か珍しい光景だ。

 結局押し切られてリリスもテトの家に遊びに行くことになった。





「ただいま〜!今帰ったよー」

「お姉ちゃんおかえり〜」


 夕方になって掃除を辞めて3人でテトの家に来た。玄関をくぐるとラビちゃんが出迎えに来た。


「あ、ミズキさんいらっしゃ…お隣はもしかしてリリス様?」

「う?はい、リリスです」

「うわぁ!コレが本物の吸血鬼!凄く色っぽい!でも超可愛い!」

「ありがとう?ラビちゃん…だっけ?」

「そうです、ラビです!初めまして!」


 リリスが勢いに押されながらラビちゃんと握手をしている。


「ラビ、お父さんとお母さんは?」

「お父さんはまだ帰ってきてないよ。お母さんはご飯の支度し始めてるかな。でもミズキさんもリリス様も来たならお母さんに言っとかないと」

「そうだね、ちょっと言ってくるよ」


 テトが家の奥に入っていくのを見送りながらラビちゃんが俺達をリビングに案内した。テーブルを囲むソファーに俺とリリス、その間にラビちゃんが座った。


「はっ…私、吸血鬼2人に挟まれてる!どうなっちゃうの?キャー!」

「どうもしないけどさ」

「リリス様、もし私が吸血鬼になりたいって言ったらしてくれます?」

「ダメ。ラビちゃんは普通に健康なんでしょ?態々吸血鬼になる必要無いじゃない」

「えー?でもリリス様みたいになれるなら興味があります!」

「残念ながら私と同性だし、妖精種のラビちゃんは吸血鬼とはあんまり相性が良くないからダメ。多分成る前に死んじゃう」

「え!?死んじゃうのは困ります。残念〜」


 大してしょんぼりしてない顔のラビちゃん。おもむろに顔を上げてキラキラした目で俺を見てくる。


「そうだ、今日泊まってくよね?」

「え?その予定は無いけど?」

「でも、泊まってくよね?」

「いや、だから」


 断る事に顔を歪めて泣きそうな顔になっていくラビちゃん。何となくわざとなのは分かるけどコレは断りづらい。


「泣いちゃう前にもう一回聞くよ?泊まってくよね?」

「…はい」

「よーし!ミズキさんゲット!」

「ラビちゃんすごい!一回もウチに泊まった事無いのに。私も今度ミズキチにそれやろう」

「リリスケ様それはやめて?」


 そのうち本当に城に帰れなくなりそう。


「そうと決まればお姉ちゃんも交えて皆んなでお泊まり会だね!勿論リリス様も泊まってくでしょ?」

「え?いや、私は…」

「え?また泣きそう…」

「あ、はい。泊まります」

「やった!棚ぼたリリス様!」

「私牡丹餅なんだ」


 ラビちゃんの巧みなテクニックで確保される俺達。本当に5歳?実は成長が遅い長命種なんじゃないの?


「お兄ちゃんとお姉ちゃんが増えたみたいで嬉しいな。でも私、本当は弟か妹が欲しいの」

「そうなんだ」

「でもお父さんもお母さんも2人で満足したのか夜も気配が無いし」

「そう…なんだ?」

「ねぇねぇ、2人はもうヤっちゃった?」

「…」「…」

「まだかぁ。ならお姉ちゃんにもチャンスあるね」


 この子は本当に5歳なんだろうか?





「2人とも遠慮なく食べてね?おかわりも沢山あるから」

「むしろ食べてくれないと余って困るぐらい買ってきたから本当に遠慮はしないでくれ」

「はい、頂きます」


 晩御飯。私とミズキチ、テトちゃんにその両親とラビちゃんの6人で食卓を囲む。

 テトちゃんのお父さんは帰宅後、私達の為に態々追加の食材を買いに出掛けてくれた。仕事で疲れてるだろうにと申し訳ない気持ちになる。

 今夜はすき焼き。しらたき、玉ねぎ、長ネギ、シイタケ、えのき、豆腐、にんじん、白菜等々、豊富な具材で彩られている。お肉は高級な厳選モーモー肉。美味しそう。あとご飯。

 テトちゃんのお母さんが取り分けてくれて、皆で頂きますをして食べ始めた。


「ねぇお父さんお母さん。ミズキさんとリリス様、今日お泊まりする事になったから」

「あら、そうなの?じゃあ布団を用意しなきゃね」

「お姉ちゃんの部屋で皆んなで寝ようって思ってる」

「テトの部屋じゃ狭く無いかしら?」

「ぎゅーぎゅー詰めで寝るのが良いの!」

「あらあら、そうなの?テトはそれで良いの?」

「私はそれで構わないよ?ミズキさんとリリス様もそれで大丈夫です?」

「うん」「まぁ」


 何気にお泊まり会というのが人生初めてなので楽しみにしてる私が居たりする。ミズキチは女の子3人に囲まれて寝るとかナニソレもうハーレムじゃん。

 テトちゃんの両親もラビちゃんも私を歓迎してくれたし、食べてるすき焼きも美味しいし…なんかこういうの良いかも。

 ほのかな幸せをお肉と共に噛み締めながら、皆の話を聞く。


「ミズキ殿、この設計図なんだが、ここの庭のデザインはどう思う?」

「えーと、そうですね。案外木や壁で囲んでしまうより、囲まない方が開放的ですし意外と防犯上良いと聞きますけど…」

「開放的…その意見は新しいな」

「アナタ、そういうのはご飯の後にして下さい」

「あ、あぁ、すまんな」


 テトちゃんのお父さんは建築士だそう。ミズキチの日本人としての意見を聞きたくてウズウズしてる。お母さんは専業主婦。


「えー?ミズキさんはこの後私と一緒にお風呂入るんだよ?」

「ん?そうなのか?ラビはちゃんと1人で頭とか洗えるのか?」

「大丈夫だよ。ミズキさんに洗えてるか見てもらうから」

「そうか。ミズキ殿、ラビを頼みます。その後にでも時間を頂けませんかな?酒でも飲みながら」

「良いですよ」


 なんか思ってた以上に家族ぐるみで仲が良さそうなミズキチがちょっと羨ましいと思ってしまう。


 私もこんな家族、欲しいなぁ。





「どう?ちゃんと洗えてる?」

「うん、上手だよ」


 今俺はラビちゃんとお風呂に入っている。石鹸を泡立てて身体を洗っているラビちゃんを横目に先に身体を洗った俺は湯船に浸かっている。

 バスタブは結構大きい。この家はお父さん自身が設計した家らしく、お風呂はその中でも拘った所らしい。地下水を汲み上げる魔動ポンプと、最新の魔動給湯器を付けているとかで水もお湯もスムーズに出るし、シャワーも付いている。

 そのシャワーで泡を濯いで、サッパリと洗い終わった所でラビちゃんも浴槽に入ってくる。


「ふふー、普段はお姉ちゃんとかお母さんと入るんだけど、偶にお父さんとも入ったりするんだ」

「そうなんだ」

「でもお父さんと違ってミズキさんはガッチリしてるね」

「普段訓練して鍛えてるから」

「ちょっと触ってみても良い?」

「良いよ?」


 ラビちゃんが腕を触ってくるので、わざと筋肉を盛り上げてみる。


「うわぁ、太くて硬い!凄い!」


 俺の腕をバシバシ叩く。ふっ、俺の筋肉はその程度じゃビクともしないぜ!

 ラビちゃんも力瘤を作ろうと頑張って腕に力を入れているけど、流石に5歳。ふにふにと柔らかい腕だ。


「私もムキムキになりたい」

「うーん…妖精種だからあんまりそうはならないんじゃ無いかな?」

「大丈夫。気合いで何とかなる。探索者になって一山当ててやるんだ」

「えー?」


 探索者はあんまりお勧めしないなーとか適当にお茶を濁しながら会話していると、不意にお風呂の入り口が開けられた。

 そこには素っ裸に御成になられたリリスが。


「ラビちゃん、ミズキチ、私も入れてー」

「リリスケ様なりません!お戻りになって!」

「キャー!リリス様の身体綺麗!」


 壁を向いて見ないように目を隠す俺。遠慮なく入って来て、鼻歌を歌いながら身体を洗い始めるリリス。はしゃぐラビちゃん。

 こ、このままでは不味いと、風呂から出ようと立ちあがろうとしたらラビちゃんが俺の腕を後ろに取って完璧にキメてきた。な…なん…だと!逃げられない!?


「だーめ!まだ夜は冷えるからもっと身体を温めなきゃ」


 ちらっとラビちゃんを見ると良い笑顔で俺を見ている。コヤツ、さては謀ったな!?リリスもグルか!?

 リリスが身体を洗い終わって浴槽に入ってくる。ダメだよこんなの!ハレンチだよ!


「ミズキさんは恥ずかしがり屋さんだね」

「そーなの、ミズキチはこうゆう時ダメダメなの」

「そうそう、リリス様見て見て!ミズキさんすっごく太くてかったいの!」

「わー、本当だ?触ってみてもいいかな?」

「いーよいーよ!私が許す。よきにはからえ」

「ははー、ラビ様お大尽様」

「ちょっと待って?お願いだから」


 揉みくちゃにされました。勿論腕の事です。リリスの視線が何となく下向いてた気がするけど気のせいと言うことにしておこう。





 戦場の如く騒がしかったお風呂から無事出て、リビングでお父さんとお酒を飲みながら家の外観や内装、水回りの話や俺の日本の話などを1時間程。至って平和である。途中お母さんがつまみやおかわりのお酒を持って来てくれて。こういう時の為にちゃんとリリスに例の耐性弱化の薬を貰ってるのでほろ酔いだ。



「ところでミズキ殿、お風呂は如何でしたか?ラビはいい子にしてましたか?」

「リリスが入って来てなんかそれどころではなかったです」

「ははっ!騒ぎがリビングまで聞こえてましたよ?」

「お恥ずかしい限りで」

「家がこんなに賑やかなのは初めての事です。偶にはいい。今までテトの事もあってあまり明るい家庭とは言えませんでしたから」

「そう…ですか」


 カラン…と、お父さんのグラスの氷が音を立てる。


「ミズキ殿」

「なんでしょう?」

「この先、ウチの娘と結婚をするしないに関わらず、自分の家だと思っていつでも遊びに来て欲しいです」

「…ありがとうございます」


 お父さんとのんびり酒を酌み交わし…そして夜も更け、そろそろ就寝の時間という事で俺とリリスはテトの部屋にやって来ていた。

 ぬいぐるみが枕元に飾ってあるベッドがあって、可愛らしい小さな箪笥があって、勉強道具や小物が乗った机が有って…そんな部屋に布団が4組並べて敷いてある。


「ミズキさんはお姉ちゃんとリリス様に挟まれて寝るの。私はリリス様の隣ー」

「ラビちゃんは私とミズキチの間じゃなくて良いの?」

「良いの。それだとイチャイチャに私挟まれる」

「成る程」

「イチャイチャしないよ?寝るよ?」


 俺は既にお酒の力でふんわか眠たい。


「1人だけお酒飲んでずるいー。私も遠慮しないで一緒に飲めば良かったなぁ」

「別にお父さんはそれでも良かったと思うぞ?また今度な」

「えー?次いつお泊まり会するの?」

「案外乗り気だな」

「うん、なんかこういうの楽しい」

「リリス様に喜んで貰えて嬉しいです。そうですね、次はまた1月後ぐらいにでも?」


 リリスとテトが打ち合わせをしてるのを聞いてる隙に俺は寝てしまおうと、眼を瞑る。


「お姉ちゃん、リリス様、ミズキさん寝ようとしてますよ!」


 気付かれた!さすがラビちゃん、目敏い!


「おっとミズキチ、そうそう簡単に寝かせはしないよ?」

「ミズキさん、私達ともう少しお話ししましょう?」


 俺の腹の上に指を立ててタップダンスをキメてくるリリスと、俺の右腕を抱きしめて離さないテトに挟撃される。今日は皆ちゃんとパジャマを着ているのが救いか。


 夜は更けていく…





 次の日、起きて挨拶と共にテト宅を出て、城に戻ってそのまま訓練に入った俺は、シャガルン先輩から「いつもと違う匂いがする」と、根掘り葉掘り聞かれる事に。ボクハナニモヤッテナイ。

2章を始めようと思います。


ここまで読んでいただいた皆様に感謝を。


基本的に不定期更新ですが、気長に読んでいただければと思います。


気に入って頂ければブックマークをして頂けると読んでもらえてるのかな?と、励みになります。

評価はしてもしなくても構いません。


これからも宜しくお願い致します。

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