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ミズキの異世界物語  作者: すぺぇすふぁんたグレープ
一章 ミズキ、人間を辞めるってよ
20/42

誘惑

「今日はここまでだ」

「ご指導ありがとう御座いました!」


 今日の訓練が終わり、騎士達はそれぞれ食堂に行ったりお風呂に行ったり…俺はとりあえず風呂に入ろうかなと考えながら、一度部屋に戻ろうとしたとき、


「おーい、ミズキ!」

「ん?シャガル先輩?」


 シャガル先輩に声を掛けられた。何だろ?


「どうしたんですか?」

「お前も明日休みだろ?一緒に飲みに行こうぜ!」

「あー、良いですね。でも先ずは風呂に入りたいです」

「じゃあ風呂入ってから城門前に集合な?後何人か声掛けてくるわ」

「了解です」


 街に飲みに行く事になった。丁度明日は休みなので遅くなっても平気だし悪くない。

 とりあえず部屋に着替えを取りに戻って、そのまま風呂場に直行だ。





 風呂を出て着替えを済ませて城門前で待っていると、シャガル先輩と…トラクス先輩とレイダスさんがやって来た。

 トラクス先輩は青白い肌に角が頭に生えてる悪魔系の風貌のかなりベテランの騎士さんだ。

 レイダスさんは俺の少し前に騎士になった人で、鱗が生えてて尻尾がある蜥蜴族。

 これに加えてシャガル先輩も緑の肌に頭に触覚がある何かカエルっぽい感じ。


 見た目かなり異色なメンバーだ。


「トラクス先輩的にお勧めのお店有ります?」と、シャガル先輩。

「そうだなぁ。一軒目は賑やかな所にしようか。酔鯨亭でどうだ?」

「良いですね、あそこメニュー多くて味も良いし」

「ミズキとレイダスもそれで良いか?」

「はい」「大丈夫です」

「決まりだな。じゃあ向かおうか」


 一軒目…つまりトラクス先輩はハシゴする気満々だ。ついて行けるかちょっと心配。


 暫く城下街の大通りを歩いていくと見えてきた酔鯨亭。入り口には暖簾が掛けられていて、横には提灯がぶら下がっている。まさにザ、居酒屋といった雰囲気。


 ガラガラっと引き戸になってる入り口を開けて中に入ると居酒屋特有の喧騒が聞こえる。賑やかだ。


「いらっしゃいませ〜!何名様でしょうか〜?」

「4人だ」

「畏まりました〜!席にご案内致しますね〜!」


 店員さんに連れられて、座敷の席に4人が座った。


「まずお飲み物をお伺いしますね〜」

「取り敢えず全員生で良いか?生4つで!」

「はい、畏まりました〜!」


 店員さんが奥へ戻り、少ししてジョッキを4つ持って来た。

「お待たせしました〜!その他ご注文は如何致しましょうか〜?」


 4人でメニューを見ながらそれぞれ食べたい物を注文していく。お、とんぺい焼き有るじゃん。あとコレとコレと…

 一通り注文が終わって、店員さんが復唱して奥に戻って行った。


「じゃあ早速、乾杯!」

「「「乾杯!」」」


 ビールを呷る。あー、美味いなぁ…こっちの世界に来たばっかりの時はまだあんまり酒を飲んだ事なかったからこの美味さが分からなかったけど、ちょくちょく飲みに行ったりしてこの味に馴染んできたのか、訓練で疲れたこの身体に染み渡るような…こういうの良いなぁ。


 少しして注文した品が次々にやってくる。お、レイダスさんの頼んだ馬刺し、美味そうだな。次頼もうかな?

 頼んでたとんぺい焼きも早々にやってくる。一口。そこにビールを…くーっ!何かおっさんになった気分だ。


「おいミズキ、この生レバ刺しも美味いぞ?一口食ってみ?」

「良いんですか?じゃあお一つ…」


 シャガル先輩が勧めてきた生レバ刺しとやらを食べてみる。…おぉ〜?独特な食感とゴマ油風味と言うか、思ってたのとちょっと違う感じの味だけど悪くない。ビール進むなコレ。

 更にイカの姿焼きがやって来る。何イカか知らないけど、結構なボリュームだ。照り焼き系でマヨネーズが掛かってる。輪切りになってる胴体部分を一つ取って食べてみると柔らかい。これは食感が良いな!


「ミズキは中々食べっぷりが良いな」

「いやぁ、ここの飯美味いです」

「人気の店だからな。シャガルもレイダスももっと食べて身体を作らないとな?」

「っす!」「が、頑張ります」

「よし、そろそろジョッキが空きそうだな。次は…」


 トラクス先輩が店員さんを呼び、追加の酒を注文している。その横に座ってるシャガル先輩がこっちを睨んで、


「ところでミズキよぉ」

「どうしました?」

「例の可愛い彼女とはどうなんだよ?」

「え?どうとは?」

「あの後進展が有ったかって聞いてんだよ!」

「多分リリスの事…ですよね?あの焼肉の時以来会って無いですけど…」

「おいおい、アレからもう半月は立ってるぞ?かーっ!何でもっとアプローチして行かないんだ!」

「と、言われましても…」


 別に彼女ではない。


「それともアレか?姫様を狙ってるのか?」

「い、いや、そう言うわけでは」

「見たぞ俺は!姫様が左手の薬指に付けた指輪を撫でて微笑んでる姿を!あれ、ミズキが贈った指輪だろう!?」

「い、いや、確かにそうなんですけど」

「やっぱりか!この女タラシ!」


 そうか、ユイが喜んでくれている様で何よりだなぁ。


「聞くところミズキはそのリリスという子と姫様を同時に落とそうとしているのか?中々なチャレンジャーだな?」

「ミズキさん凄えッス」と、レイダスさん。

「いやいやいや…」

「だがなミズキ。女の子と言うのはオンリーワンなのだ。そして繊細なモノであってだな?扱いには細心の注意を払うべきであり…」


 トラクス先輩が俺に要約すれば二股はいけませんと至極ごもっともな説教してくる。確かにリリスとユイの2人は見た目も内面も可愛いからふとした時にドキッとさせられるけどそういうんじゃ無いと言うか。

 コンコンとトラクス先輩のありがたい説教を聞いてるそぶりで半分聞き流しながらスジ煮込みを食べてビールを飲む。へぇー、トラクス先輩は奥さん居るんだ。子供も居て3歳の女の子だそうだ。


「ミズキさん、そのロングソードは何処で買ったんですか?」


 レイダスさんがトラクス先輩の話をぶった斬ってにこやかに話しかけてくる。っても蜥蜴族で表情は分かりづらいので多分にこやか?程度の感覚。


「あぁこれは…」


 と、そんな感じで数時間飲んで食べて喋って。お店を出た時には夜もそれなりに更けていた。そして皆そこそこ酔っている。


「2軒目へ行くぞ!付いてこい!」

「うっす!」「おー!」「りょ!」


 トラクス先輩が先陣を切って若干ふらつきながら歩いていく。


「何処へ行くんです?」と、シャガル先輩がトラクス先輩に聞く。

「やはり、男が集まって飲むのなら…」

「飲むのなら…?」

「それは女の子の店だろう!」

「おー!待ってました!」

「ヒューヒュー!」


 女の子の店って言ってもお酒を飲む所だよね?エッチな所じゃ無いよね?


「でも、トラクス先輩奥さん居るんじゃ?」

「それはそれ。そしてコレはコレだ」

「さっすが先輩!」

「それってバレるとどうなります?」


 俺が聞くとトラクス先輩が手刀を首に持っていき、変顔をしながらスッと横に動かした。酔っ払ってんなー。


「えー?大丈夫ですか?」

「大丈夫だ、問題ない。お前たちが喋らなければ良い話だ」

「モチのロン、秘密にしまっせ兄貴ぃ!」

「何処までもついて行きまッス!」

「いいのかなぁ…」


 そんな感じでグダグダしながら街を練り歩き、たどり着いたのは『BAR BABAR』と書かれた看板のお店。


「俺の行きつけの店だ」

「ここが兄貴の主戦場ッスか!」

「バー、ババア?ここに可愛い女の子が?」

「それは中に入ってのお楽しみと言った所だ」


 扉を開けて中に入ると、薄暗い店内。左にカウンター席があって、向こう側にはお婆さ…妙齢の女性が頬杖をついてコチラを見ていた。


「トラクスの坊やじゃないか。お連れさんもいらっしゃい」

「お邪魔するよ」「っす」「失礼します」

「4人だね。好きなテーブルに座るといいよ」


 と言われ、奥の方のテーブルに4人で座った。


「兄貴、可愛い女の子は?」

「シャガルよ、まぁそう生き急ぐな。男はどっしり構えておけ」

「店の名前を思えばちょっと怖いッス」


 もし本当にお婆さ…妙齢の女性が出て来たとしても、それはそれで面白いし楽しそうではあるんだけど。


 少しして店の奥から4人の女の子が俺らが座ってるテーブルに来た。普通にみんな若くて可愛い。


「お待たせしましたー♪アリアです、宜しくね!」

「カリナでーす」

「モモカだよー☆」

「ん?ミズキチ?」

「あ」


 女子の中には吸血鬼な女の子のリリスが混じってた。ここで働いてるんだな。バーのおねえさんって言ってたもんな。


「あれぇ?リリスケ知り合い?」

「ほら、こないだ話した男の子だよ」

「あぁ!何か美味しかったとか何とか言ってたね」

「この子がそうかぁ。へぇー…どんな味だったの?」

「んーとねぇ…」


 訳知り顔な女の子達。対する男の子達は…


「おいミズキ!あの子が例の焼肉の彼女か!」

「まぁ、そうです…」

「可愛らしいッス」

「美味しかったとは何だねミズキ君?」

「まさかお前…ヤッタノカ!?」

「ボクハナニモヤッテナイ」

「まぁまぁ。人数も揃った事だし先ずは乾杯しよ?」


 アリアさんが皆んなの分のお酒を構えてくれたので、みんなグラスを手に取り掲げる。


「かんぱ〜い!」



















 ん…あ、れ?俺、寝てた…のか?


 少しズキズキする頭に手をやりながらうっすら目を開けて…見えたのは知らない天井。


 …何処だココ?俺の部屋じゃ無いぞ?


 どうやらベッドの上で寝ている様だけど、ここに至った経緯が思い出せない。バーで皆と飲んでて、それで…うーん?

 左腕に何かが当たっている。柔らかい。ムニュムニュしてる。そんな感触。何だこれ?


 左を向く。






 リリスが隣に寝ていた。






 跳ねる心臓。


 ドッと出る冷や汗。


 ナニコレナニコレナニコレ!!!?!??






 よ、よし、先ずは落ち着こう。そう、天井のシミを数えるのに夢中系男子になるんだ俺!


 あー、この天井、シミがねぇなぁ。真っ白だわ。数えてる間に何かが終わったりしねぇ。


 あ、布団に隠れて見えないけど、触れてる感じこの子、服着てなくない?


 ヤバイ。何か俺の男の子としてのアレがアレしてる。それは当然起こり得る現象。マウンテン俺。荒々しい隆起が登山家を苦しめるだろう事は想像に難く無い。


 俺は…上着は脱がされてるけど肌着は着てるし下も履いてる。多分大丈夫。勝訴。推定無罪。状況的に敗訴な気もするけど。


 流石にこのままだとあらゆるいろいろがマズいのでそっとリリスから身体を離そうとしたら「んむー」とか言いながら左腕に抱きついて来た。脚に手を挟まれる。


 俺の手が人質に取られてしまった!あ、柔らか…ダメだ!早く起こさないと俺の理性がトドメを刺されてしまう!


「リリスさん、リリスさーん?」

「…」

「起きて?起きてー?」

「…んー」


 右手でトントンとリリスの肩を叩きながら声を掛け続ける事少し。


「…ミズキチ、おはよ」

「おはよう?」


 目を半分開けて俺を見つめてくる。


「んー…」

「どうしたんだい、リリスさん」

「…いやあ、残念だなぁと思って」

「え?何が?」

「ううん、なんでもなーい」


 脚で挟んだ俺の手はまだ離してくれない。センシティブセンシティブ!


「うー、寒いなぁ…」


 布団を目の下まで被り、もぞもぞするリリス。左腕にイロイロと当たる。コ、コレハ伝説の「当ててんのよ」ってヤツか!?


「まぁ今冬ですからね」


 平常心を装いクールに返答。


「ねぇねぇミズキチ」

「なんだいリリスケ」

「雪山だとさぁ、肌と肌で温め合ってさぁ」

「ここは雪山じゃ無いので脱ぎません」

「ちぇ、そこに山が見えるんだけどなぁ〜?」


 この子ナチュラルに俺を脱がそうとしてる!?そしてコヤツさては俺の山を登るつもりか!?実は吸血鬼じゃなくてサキュバスなんじゃないの!!??


「リリスケさんリリスケさん」

「なんだねミズキチ君」

「そろそろ離して頂けないでしょうか?」

「あーあ、いくじなしー」


 もぞもぞしながら離れるリリス。少し安心しながらも残念な気持ちもナクナクナイ。だって男の子だもん!


「ところで俺、どうしてココに?と言うかココ何処です?」

「ここは私んちの私の部屋だよ」

「あぁ、もしかして酔い潰れてリリスに介抱してもらった感じですか?」

「そそ。送られ狼。狼じゃなくて実はチワワだったけど」

「あー。ソレはなんか心にグサっとくるー」

「今度首輪買ってあげようか?」

「遠慮しておきます」


 そう言えば先輩達はどうしたんだろ?


「あの後先輩達は?」

「トラニャンとシャガルンは暫く飲んで騒いだ後3軒目だーとか言って飛び出して行ったよ。レイレイはミズキチ程じゃないけどフラフラで限界そうだったからモンモンがお家に送って行ったかな?」


 何か皆可愛いあだ名付けられてて草。


「すると俺は誰がここまで運んでくれたんですか?」

「私が背負ってお持ち帰りしてきたよ」

「リリスが?重かったんじゃ?」

「おねーさんこう見えて力持ちなんですー」

「そっか、ありがとうございます」

「どういたしまして?お礼にこのまま添い寝してくれても良いんだよ?」

「遠慮しておきます」

「ぶー」


 ふー、ちょっと落ち着いて来た。俺のマウンテンも標高が低くなって登りやすくなった所でベッドから出る。


「帰っちゃうの?ミズキチ今日休みなんでしょ?まだ朝だよ?」

「朝だから動き始めようかと」

「私はさっきまで仕事だったからこれから寝るんだよね。さーびしーなー」

「ダメ、俺チワワに転生したみたいだからこのまま散歩に出かけます」


 城に帰って風呂入らにゃ酒臭いだろうな。うん、一旦帰ろう。


「そうだ、次ウチの掃除いつ来る?」

「あー、じゃあ次の休みにでも来ますね」

「休みって何日後?」

「6日後」

「じゃあその日私もお仕事お休みするから夜にデートしよデート」

「デート…良いですけど」

「よし決まり!ミズキチはちゃんと牙を研いでおく事ー」

「むしろ俺が噛まれる側の様な?」

「噛んでもいいの?じゃあ次迄にもっと研いでおくね」

「こ、これ以上はいけません!」


 どんなご無体をしてくるつもりなんだ!


「っと、そろそろ帰りますね?」

「気をつけてねー。おやすみー」

「おやすみなさい」


 部屋を出てバタンと扉を閉める。





 あの子メッチャ誘惑してくるやん!?外堀も内堀も無視して本丸攻めてくる感じじゃん!?

 戦慄しながら屋敷を出て城に向かって歩いていく。


 後でお風呂に入った時、首筋に噛み跡が残ってる事に気が付いた。知らん間に吸われてる!

 その噛み跡に気づいたシャガルン先輩に根掘り葉掘り聞かれる事に。ボクハナニモヤッテナイ。

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