再びのデート
休みがやってきた。今日はユイと出掛ける約束をしてる日だ。
顔を洗って歯を磨き、外行きの服に着替えて剣を腰帯に装着する。
準備が終わり、先ずはユイとの待ち合わせ場所にしてる庭園に向かう。
「おはよう」
『おはよ』
「おはようございます、ミズキ殿」
庭園にある東屋で座って待っていたユイと、その側に立つアリスさん。
『今日は何処行こう?』
「先ずは朝ご飯からだな」
『じゃあ…喫茶店とか?行った事ないんだよ』
「良いな。そうしようか」
ユイとアリスさんを連れて城門を出る。
城下町へやって来た俺達3人は、街行く人達に喫茶店の場所を教えてもらう。
教えてもらった一軒の喫茶店に辿り着いた俺達は店内に入る。店内はそれなりにお客さんが多い。
「いらっしゃいませ」
ウエイターさんが出迎えてくれ、4人掛けの席に案内してくれた。水とおしぼりを人数分テーブルに置いてくれる。
「ご注文がお決まりになりましたらこのベルでお呼びくださいませ」
そう言ってこの場を立ち去るウエイターさん。
席に座った俺達は早速メニューを広げてどれにするか選ぶ。
「俺はトーストモーニングかな?」
『えーと、あ、私はこのツナホットサンドモーニングにする』
「私はフレンチトーストのモーニングにします」
皆が決まったようなのでベルでウエイターさんを呼んで注文する。コーヒーは全員ホットにした。今は冬だしな。
『ねぇ、ミズキ』
「なんだ?」
『コーヒーってどんな味?』
「飲んだことないのか?そうだなぁ、黒くてちょっと苦い、大人の飲み物だよ」
『大人の?へぇー、楽しみ』
俺が初めてコーヒーを飲んだのはいつだったかな?たしかもっと小さい頃に親に勧められて飲んだら、子供の舌には苦すぎてうぇってなって笑われた覚えがあるな。ユイはどんな反応をするんだろう。
「お待たせしました」
と、ウエイターさんが注文した物を持って来てくれた。
「ごゆっくりどうぞ」
早速ユイがコーヒーに手を出した。香りを嗅いで、少しカップを傾けて一口。そっとカップをお盆に戻す。眉根が寄っている。
『これ…美味しいの?』
「ははっ、まだユイはお子ちゃまだと言うことだ」
『えぇー?もう15だよ?』
「姫様、ここにミルクと砂糖がありますので、好みに合わせて口当たりをまろやかに、甘くすることが出来ます」
『そうなんだ…ミズキもアリスももっと早く教えてよぉ』
「すみません、私も姫様がどんな反応をするか見たくて」
「まぁ食べよう。パンが冷めちゃうし」
『むー』
「ふふ、では頂きましょうか」
俺はこのシンプルにマーガリンを塗ったトーストが好きなんだ…お、外はカリッと中はふわっと絶妙な歯応え。ゆっくりとトーストを咀嚼し、コーヒーを何も入れずブラックで少し飲む。それをみたユイがまた眉根を寄せている。
『大人…』
「子供のユイは素直に砂糖とミルクを入れた方が良いぞ」
『ぬぅー』
「ミズキ殿…」
結局ユイは角砂糖2個にミルクをたっぷり入れて、『これなら美味しく飲める』と満足していた。
トーストと付け合わせのサラダを食べ終わり、ゆで卵をテーブルの上でコロコロとヒビを入れていく。
『何してるの?』
「こうやって殻にヒビを入れると剥きやすくなるんだ」
『そうなの?』
程良くヒビを入れて殻を剥くとつるんと卵が
剥けた。凄い!とユイが喜んでる。でも行儀はあまり良くないですねとアリスさんが言ったのでユイは真似はしなかった。
その後皆モーニングを完食し、お金を払って店を出る。
「んー、食べたなぁ!」
『お腹いっぱい』
「次は何処へ向かうのですか?」
「そうだなぁ…」
て、言うかこの街に何があるか未だにあまり分かんないんだよな。流石にカラオケやボーリングがあるはずもなし。どうすっかな?
『ミズキが首から掛けてるそのペンダントは何処に売ってるの?』
「ん?コレか?コレは治癒術師長のクリフさんから貰ったものだから何処で売ってるかは…」
「確かその神像なら教会に行けばありますよ。但し資質が無いとミスリル銀製の本物は売ってもらえない筈ですが」
「そうなのか。でも、教会で買うよりクリフさんにお願いした方が良いんじゃないか?」
「そうですね。ミスリル銀の神像は結構高いそうですし」
『そっか。そうする』
アクセサリーが欲しいのかな?
「アリスさん、アクセサリーショップって何処にありますか?」
「それでしたら近くにありますよ。少し中央通りを歩けば直ぐです」
「ユイ、次はそこでいいか?」
『うん、興味津々』
中央通りを歩いて数分、アクセサリーショップにやってきた。
「ここでは純粋な飾りとしてのアクセサリーから、半分魔術具のようなアクセサリーなど、種類も豊富に取り揃えてて人気の店です」
「ユイはどんなのが欲しいんだ?」
『…指輪かな』
「だったらこっちのコーナーにあるみたいだ」
ユイが並んでる指輪を見始めた。俺も近くにあるアクセサリー群を見る。
分かっちゃ居たけど、普通のアクセサリーに比べると魔術具になっている商品はかなりお高い。
一時的に全身を守る防御膜を張るって言うペンダントなんかはお値段100万ルビを超えてたりする。買えないなぁ。俺、20万ぐらいしか持ってねえもん。
他にも色々と眺めていると、魔力を込めると水のシャワーが出るという、水色の小さな魔石が台座にハマった指輪を見つけた。お値段も3万ルビとお手頃だ。
コレをユイに買ってあげる事にする。
「なぁユイ」
『ん?』
「ユイの指輪のサイズは何号なんだ?」
『何号?ちょっと待って』
ユイが店員さんに指のサイズを測って貰いに行った。
『6号だった』
「そっか」
先程の指輪の6号サイズ(ちっさ!俺だと小指でも入らない)を手に取って、カウンターへ行く。
「コレください」
「はい、畏まりました」
お金を払って、包んでもらう。そして何食わぬ顔でユイの所へ戻る。ふとアリスさんと目が合った。一部始終を見られていたようだ。ちょっと恥ずかしい。
その後も暫くブレスレットやペンダントなどのアクセサリーを見ていたユイだったが、満足したのか値段に折り合いが付かなかったのか何も買わずに店を出た。それについていく俺達。
お店を出た所でユイが、
『思ったより高かった。母様のくれたお小遣いじゃ欲しいの買えない』
「幾ら貰って来たんだ?」
『1万ルビ』
「普段お小遣いとか貰ってるのか?」
『貰ってない。だからこの1万ルビは全財産』
「そ、そうか」
ユイはコレで一応この国の姫様なのに。イメージと違ってシャニ様は節制を心掛けていらっしゃる。
「あ、ユイ」
『ん?』
「これ、あげるよ」
と、さっきアクセサリーショップで包んで貰った指輪を渡す。
『くれるの?開けてもいい?』
「いいよ。気にいると良いけど」
包みを丁寧に解いて、出てきた指輪にユイが目を輝かせる。
『ミズキ…有難う!』
「いえいえ」
『早速付ける』
と言って左手の薬指に付けたユイ。…こっちの世界じゃそういう意味じゃ無いのかも知れないけど良いのかな…?
「で、これがその指輪の説明書」
『説明書?』
「コレは何と、魔力を込めると水のシャワーが出る魔術具の指輪なんだ。庭園の水やりに丁度良いかなって」
『凄い!ちょっと待って、説明書読む』
説明書を読み始めるユイ。
『うん、使い方はわかった。こうだ』
シャー!と、シャワー状の水がユイの指輪から出る。
「気に入ってくれたかな?」
『うん、私にピッタリ』
笑顔で俺の腕に絡みついてくるユイ。ユイってこんなに積極的な子だっけ?と思いながら、ジト目のアリスさんと次何処に行くか話し合う。




