しゅらば?
「…198!199!200!ここまで!」
「はぁっ!はっ、はっ、ふぅー」
「中々綺麗な素振りだったぞ」
「ありがとうございます!」
只今訓練の終わりに騎士隊長のガイさんの指導を受けながら、騎士剣の重さを模した木剣での素振りをしていた所だ。
「しかしまた一段と強くなったな。このペースで強くなれば、直ぐに中堅の連中とも充分勝ち負けが出来る様になるだろう」
「本当ですか?」
「あぁ。じゃあコレで終わりにしよう」
訓練が終わり、汗を流すために部屋で寝巻きの服と下着を準備して浴場に行く。
浴場の入り口で番頭をしてるおじさんに声をかけ脱衣所で服を脱ぎ、タオルを片手に浴場に入った。
「よう、ミズキ!」
「あ、シャガル先輩。うぃっす」
「皆がお前を噂してるぞ」
「へぇ、どんな噂なんですか?」
「年下の彼女が出来たんじゃ無いかっていうのが一番の噂だ」
「え?何でそんな噂が…」
「昨日焼肉屋の前で可愛い女の子に抱きつかれてるお前の姿を目撃されてるんだ。観念するんだな」
「うわぁ」
モロにあの現場を見られてたんだ…
「あの子は彼女じゃないですけど、確かに抱きつかれました」
「チッ、羨ましいなぁ」
身体を洗い終わり、湯船に浸かる。シャガル先輩も隣に入ってきた。
「で、その女の子は実際可愛いのか?」
「えぇ、可愛いですし、なんか色気があって惹きつけられる魅力があるというか」
「あー!ミズキばっかり良いなぁ!姫様にも目をかけられてるし。俺にも誰か紹介してくれよ」
「シャガル先輩独身なんですか?」
「おぅよ。まだピチピチの19だぜ?」
「えー、もっと上かと思ってました…」
「なんだ?老けてるって言いたいのか?」
いや、シャガル先輩って触覚が生えてて肌が緑で、筋骨隆々なんだもの。年齢が分かりづらい。
「ミズキ、次に模擬戦当たる時は覚悟しておけよな!」
「お、お手柔らかに…」
そう言ってシャガル先輩は近くの騎士の人に話しかけに行った。
気持ちを切り替えて、日課の魔力を練る特訓をする。この特訓にも大分慣れてきて、以前よりも多くの量の魔力を一度に練る事が出来る様に。それはつまり闘気法の習熟度が上がっているという事で。
今日ものぼせる寸前まで魔力を練る特訓をこなし、風呂を上がる。
脱衣所に設置されている鏡の前に立つ。元々ヒョロヒョロだったのに、この世界に来て大分筋肉がついたなぁ。まだ細いっちゃ細いけど。
左胸を中心に広がる魔術陣は少し小さくなっただろうか?でも未だに毒と免疫が戦っているのだろう。どれだけしつこい毒なのか…
首筋の噛み跡を指でなぞる。そういえばリリスは毒、平気そうだったな。吸血鬼になればこの毒も克服できるんだろうか…?
既に妖鬼族の血が混じってるんだし、吸血鬼にして貰うのもアリなのかも知れない。そうなるといよいよ人間に戻れなくなりそうだけど。
浴場を出て、部屋に荷物を置きに行って、今度は晩御飯を食べる為に食堂へ向かう。
食堂のおばちゃんに定食を頼んで受け取る。今日はポテトサラダがあるじゃん。当たりだな!
近くのテーブル席に座って、いただきますをして早速ご飯を食べていると、俺の席に誰かやってきた。顔を向けると、定食のお盆を持ったユイだった。
「ユイもここでご飯か?」
『うん、ミズキと食べようと思って』
「お、おう」
周りからヒソヒソ話が聞こえてくる。
「…ありゃもしかして古来より伝わりし修羅場という奴か?」
「ミズキはいっぺん地獄を見た方がいい」
「姫様、今日も可憐だ」
いや、もうヒソヒソしてない、聞かせてるなアイツら…
ユイは俺の前の席に座って、俺をじーっと見つめてくる。
「どうしたんだ?食べないと定食冷めるぞ」
『ミズキ、彼女が出来たの?』
「彼女じゃないけど…友達かな?」
『噂じゃ可愛い女の子と抱き合ってたって聞いた』
「いや、それは確かにそうなんだけど」
なんだコレ。何で問い詰められてるの俺。
『その首筋の跡…吸血鬼』
「そうだな、当たりだ」
『ミズキ、吸血鬼になりたいの?』
「んー、別にそういう訳じゃ無いけど」
『ふーん』
「…」
『…』
微妙に気まずいな。怒ってるって訳じゃ無さそうだけど。
『…最近』
「うん?」
『最近ミズキ私と遊んでくれない…』
なんか可愛い事を言い出した。
「そ、そうか。よし、今度の休みに一緒に街に遊びに行こうか!な!」
『いいの?やったぁ』
途端にニコッと笑顔になるユイ。
「おい誰かミズキのやつ囲んでやっちまおうぜ」
「なんだよ、修羅場が観られると思ったのに…爆ぜろ」
「笑顔の姫様も可憐」
あいつら好き勝手言いやがって。こっちはユイに何言われるか分かんなくてハラハラしてたっつーの!
『何処に行く?その彼女さんも連れてこうよ』
「え?あの子は生活リズムが夜型だから難しいんじゃないかなぁ…あと彼女では無いからね」
『そう?残念』
そうして次の休みはユイと出掛けることになった。




