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ミズキの異世界物語  作者: すぺぇすふぁんたグレープ
一章 ミズキ、人間を辞めるってよ
15/42

イツ様

『お前が姉上を誑かしてるミズキとやらか?』

「はい?」


 ある日のお昼時、食堂で騎士達と仲良くご飯を食べていると、後ろから声を掛けられる。何だろうと思って振り返ると、白い長髪、白い肌に、赤い瞳でツノがある、背の低い男の子が立っていた。見た感じシャニ様やユイと同じような容貌だ。


「ミズキは俺ですけど…」

『そうか。じゃあ…死ね!』


 そう言っていきなり腰から刀を抜き放つ男の子。そのままその刀を席に座っている俺に叩きつけてくる!それをギリギリ席から転げ落ちる様に回避!あっぶなぁ!?今メッチャ胸がキュッてなった!

 

「若様ご乱心!」

「全員で抑えろ!ミズキは離れろ!」

「は、はい」


 食堂に居た騎士達が全員がかりで男の子を拘束する。


『えぇい!離せ!ハーナーセー!奴を、ミズキを亡き者にするのだぁ!』

「何故ですか若様!」

「ミズキが何かしたんですか!?」

『こいつは姉上を誑かしてる!あんな姉上を見てるのはもう我慢ならんのだ!姉上は余が娶る!このミズキは余にとって邪魔でしか無い!故に斬る!ガァァァアァァア!』

「不味い!本気だ!抑えきれない!シャニ様を、シャニ様を呼べぇ!」

「取り敢えずミズキは逃げとけ!下手したら俺らは突破されかねない!」

「わ、分かりました」


 食堂を走って立ち去る。逃げろっつっても何処へ…?

 取り敢えずシャニ様を探すか?昼時だし自分の部屋か?街に出てる時もあるから何処にいるか分からないな。

 庭園に行ってみるか。あそこにはテーブルもあるからそこでご飯を食べてるかもしれないしな。

 と、思い立ち庭園に向かう。庭園に着くとユイがアリスさんを伴にご飯を食べていた。


『…?どうしたのミズキ?』

「いや、なんかユイやシャニ様みたいな見た目をした男の子が俺に襲いかかって来たから逃げて来たんだ。あれは親戚か何かか?」

『あぁ、それは多分私の弟のイツだよ』

「そうなのか?メッチャ刀振り回して来たんだけど…姉上を誑かしてる、姉上は余が娶るって」

『あぁ、昨日の晩私に告白してきたから、私はミズキが好きなのって言って断ったからそれかな?』


 …今サラッと俺の事好きって言わなかったか!?いやそれよりも、姉弟で告白?こっちの世界じゃ近親も結婚対象になるのか?


「姉弟で告白?」

『イツはまだ小さいから…7才だし』


 あぁ、あの子は見た目通り小学校低学年ぐらいなのか。こっちには長寿の種族の人が結構多いから見た目じゃ判断つかないんだよな。


「そういやユイはいくつなんだ?」

『私は15だよ』

「見た目通りだな。じゃあシャニ様は?」

『母様は確か300は超えてると思う…細かくは知らない』

「300?あの見た目で?」


 シャニ様は絶世の美女と言った風貌だ。人間で言えばまだ20代後半に見える。


『私達妖鬼族は大体私ぐらいの年齢になったら成長や老化が凄くゆっくりになるんだよ。多分私も100年ぐらいは今のこの姿だと思う』

「凄いな。俺もそんな感じに長寿になってるのかな?」

『どうだろう?分かんないね』


 と普通に話してるとコホン、とアリスさんが咳払いした。


「ミズキ殿は逃げなくて宜しいのですか?」

「あー、そうだった。シャニ様のいる所知らないかな?」

「いえ…庭園だとイツ様が来るとも限りませんので城を出て街に逃げておくと宜しいかと」

「そっか、そうするよ」

『気をつけてね』


 ユイとアリスさんに手を振って庭園を後にする。廊下に出ると、まだイツ様の叫び声が聞こえてくるので、聞こえない方から遠回りして城を出た。





 そういえば昼飯食い損ねたなと、大通りの屋台で串焼きでも買おうかと思ったが、お金を持って来てない事に気づいて諦めた。


「金ないし、探索者協会にでも行ってみようかなぁ」


 と、探索者協会に向けて歩いていく。

 道中道端でケンカしてる青年たちを仲裁したり、迷子になって泣いてる女の子の親を一緒に探したりしながら辿り着いた協会。


 カラカラーン…という音がするドアを潜る。


「あら、ミズキ君じゃない」


 と、受付のお姉さんであるミスティさんが手を振ってくれた。


「何しに来たのかな?私に再戦しにきた?」

「いえ、お金がないので依頼でも有ればなと思いまして」

「なに?お城追い出されたの?何したの?」

「追い出された訳じゃないですし、俺は別に何もしてないんですが…」

「ふーん?依頼ね、まぁなくは無いよ?」

「本当ですか?食べるお金も無くて困ってるんです。助かります」

「コレなんかどう?『お屋敷の掃除』」


 一枚の紙をカウンターの上に出してきたミスティさん。


ーーーーーーーー

依頼人 リリス


種類 清掃


依頼内容

 庭から屋敷内まで全域の掃除を依頼します。


期間 特になし


条件 特になし


金額 こなした仕事に応じて支払い

ーーーーーーーー


「この子は私の友達なんだけど、屋敷の使用人が居なくなってしまって困ってるらしいのよ」

「こなした仕事に応じて支払いって言うのがどれぐらい貰えるのかが明記されてないんですけど」

「そこは本人と交渉してみて。悪い子じゃないからちゃんとやれば渋られる事は無いはず」

「ですか。分かりました」

「そう?助かるわー。じゃあ地図を渡すからその通りに行けば良いからね」


 地図を受け取って、協会を後にする。


 地図の矢印に従って道を右へ左へ。辿り着いた場所はこの街でも一等地の、城の近くの屋敷だ。


「お、大きいな」


 屋敷の門前で呟く俺。この広さの屋敷の掃除…コレは思ってたより重労働なのでは?


「これ、入って良いのかな?門番とか居ないし」


 と、門をちょっと押してみると鍵も掛かってない様でギィィと軋んだ音を立てながら開いた。突っ立ってても何にもならないのでそのまま入る事にした。


 門を抜けた後に広がる庭は、草は生え放題で池の水は濁りきっている。幾らなんでも放置されすぎじゃないだろうか?


 玄関門まで来たが誰かが出てくることもない。一先ずドアのノッカーを叩いてみる。タン!タン!と響く音。しかし反応するものは何もなく。どうしよう?


「すみませーん!誰か居ませんかー!」


 声も掛けてみる。そのまま少し待っていると玄関がゆっくり開いて、見た目中高生ぐらいの可愛らしい、でも何処か色気のある女の子が眠たそうに目を擦りながら出てきた。今昼過ぎなんだけどな。というか格好が寝巻きというか透け透けのネグリジェ。目のやり場に困る。


「んー…なに?」

「掃除の依頼を受けてここに来たんですけど…」

「あー…ミスティの?」

「そうです。ミスティさんの紹介で」

「えーと…ちょっと入って待ってて」


 と、言われて屋敷の中に入る。まずエントランスがあって、奥に2階に上がる階段があって、部屋数は10は超える…そんな屋敷内は埃が積もり、灯りがなくて全体的に暗い。


 そのまま10分程待っていると、着替えた女の子が奥の部屋から出てきた。顔を洗ってきたのか、先程よりはシャキッとしている。


「お待たせ。じゃあ自己紹介からだね。私はリリス。その依頼の依頼主で、この屋敷の主人だよ」

「俺はミズキです。城の見習い騎士です」

「騎士服着てるもんね。で、依頼の通り、この屋敷の敷地内の清掃がミズキチの仕事」


 ミズキチ?


「分かりました。で仕事の報酬についてなんですが…」

「そうだねー、1時間1000ルビでどう?」

「あー、それなら充分です」

「うんうん。日が落ちるまであと4時間ぐらいだから、大体4000ルビ。今日は庭の草むしりをして貰おうかな?」

「了解です」

「じゃあお願いね!」


 と、言い残し自分の部屋に帰って行ってしまった。さぁ…やるか。





「おー、ミズキチやるじゃん?まさかこんなに進んでるとは思わなかったよ」


 辺りが薄暗くなってきた頃、ドレスにコートを羽織ったリリスさんが屋敷から出てきた。


 褒められた草むしりだけど、4時間程で大体庭の4分の1ぐらいの範囲の草をむしる事が出来た。門から玄関までの間を最優先に、そこから左右に徐々に道を広げて行った。


「よーしよし!頑張ったミズキチにはちょっと色付けて5000ルビあげよう」

「あ、ありがとうございます」


 受け取ろうとして、手が土と草の汁でぐちゃぐちゃな事に気付く。


「ありゃ、先に手を洗ってきなよ」

「そうします」


 屋敷にある水場で手を洗い、改めてリリスさんからお金を受け取る。


「所で何で屋敷の使用人が居ないんですか?この広さだとどうしても必要だと思うんですけど」

「大した事じゃないよ。使用人が定年で辞めちゃったから、募集かけたけど誰も来なかっただけ」

「あー、そうなんですか」

「ん、そーなんです。じゃ、私今から仕事で出掛けるからこのまま解散で!次からは協会通さなくても良いから、暇がある時にまた掃除に来てくれると嬉しいなぁ」


 ニコッと可愛らしく笑いながら手を振って街の中心街の方へ歩き去っていくリリスさん。

 それじゃあ俺もと屋敷を出て、空きに空いたお腹を満たすために道を歩きながら近場の食事処を探す。


 歩いていると、焼き鳥の様な良い香りがする店があったので入り口のドアを開けて店内に入る。


「いらっしゃい、1人かい?」


 と店員さんに言われて頷くと、カウンター席に案内された。


「そこにメニューがあるから、決まったら呼んでくれ」

「分かりました」


 メニューを見る。焼き鳥系のメニューがメインで、サイドメニューも豊富だ。何にしようか悩む。


「すみません、この焼き鳥のモモと皮のタレを2本づつ、ホルモン焼き、ポテトサラダにライスをお願いします」

「あいよ!酒は?」

「あ、じゃあ頂きます」

「ビールで良いかい?」

「はい」

「じゃあすぐ作るから待っててくれな」


 店員さんが奥に引っ込み、手持ち無沙汰になったので店内を見渡す。

 晩御飯には少し早い時間だけど店内は殆ど埋まっている。人気のあるお店の様だ。


「はいよ、お待たせ!」


 注文していた物が届き、早速焼き鳥から頂く。うん、腹が減ってたからスゲー美味い!ビールを飲んで焼き鳥齧って、ホルモン焼きとポテトサラダでライスを食べて…労働の後のご飯は美味いな!今迄城の食堂で食べてたけど、偶には外で食べるのも良いもんだ。


 完食し、お金を払って店を出る。少しほろ酔い気分でさぁどうしようかなと。もう夜だけど城に帰っても大丈夫なのだろうか?帰れないなら何処で寝たら良いのか…宿に泊まれる程のお金持ってないし。探索者協会に寝られる所あるかな?


 という事で再び協会にお邪魔すると、もう夜にも関わらずまだミスティさんが受付をしていた。


「あ、ミズキ君。城から連絡が来てる。もう帰って来ても良いって」

「本当ですか?良かった、どうしようかと」

「依頼は無事終わった?」

「はい、半日草むしりしてました」

「ふふ、お疲れ様だね。まぁあの子色々困ってるだろうから、助けてあげてねミズキ君」

「色々…ですか?はい、分かりました」


 バイバーイと手を振るミスティさんに小さく手を振りかえしながら協会を出て、暗い夜道を歩きながら城に向かう。

 草むしりで結構汗かいたし、早く帰って風呂入りたいな。

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