選抜
「おーい、ミズキ君ー」
訓練が終わってさぁ風呂に入ろうと思って訓練場の入り口に向かっていたら、その入り口から声が掛かった。あれは、筆頭魔術師のフィナ様だ。
「フィナ様。お帰りなさい」
「あぁ、ただいま、ミズキ君」
ここ暫く獣王国へ魔術をぶっ放しに行ってたフィナ様だけど、遂に帰ってきたのか。
「どうでしたか獣王国」
「ああ、流石に城を全部更地にする事は叶わなかったが、大部分を吹き飛ばしてきたよ」
「そ、そうですか。獣王はご愁傷様ですね」
「で、聞いたよミズキ君。新しい魔術を開発したんだって?」
「いやー、1発撃ったら倒れちゃう失敗作なんですけどね…今もあそこで立ち上がってる炎がそうです」
「ちょっと見に行っても良いかな?」
「ついて行きます」
ゴァァァァァァァ…!
相変わらず絶えず燃え盛ってる青い炎。それを見たフィナ様は「これは凄い」「何故消えないのか…」「凄い熱量…」ぶつぶつと呟いている。
「呪文を教えてくれるかい?勿論魔力は込めずに」
「えっと、原初の火よ、絶えず燃え盛る神滅の炎よ。我が内の力を喰らい、夢幻より来たりて、かの存在を滅却せよ、メギドフレイム。です」
「むむ…」
「何かわかりましたか?」
考え込んでいるフィナ様。
「うーん、まぁ良いか。で、本命のファイアボールは練習してたかい?」
「はい、訓練前や訓練後に忘れないように毎日」
「よしよし、じゃあ次は…そうだね、爆発系魔術を覚えてみようか」
「爆発ですか?」
「そう、やはり勇者は爆発魔術さ!」
「勇者って言うのはやめてください…それに何の繋がりがあるんですか?」
「あぁ、昔の事だけど、先代の魔王を倒す旅にでた勇者ターレンが得意としてた魔術の一つが爆発系魔術なのさ」
「へぇー」
「ま、使えて損はないさ。力の源よ、内に眠りしその力よ、我が目の前に立ち塞がりし、その悉くを破砕せよ!ブラストボム!」
キィィン!ダァァァァン!フィナ様の手から放たれた光が近くにあった木人に着弾し、その瞬間爆散する。
「威力高いですね…!」
「この魔術は人に向けて撃っちゃダメだよ」
「撃つとどうなるんですか?」
「そりゃもう…ご想像にお任せするよ」
「ひえぇ」
「早速練習だ、ミズキ君」
「はい!」
………
「この薬を飲んでみてくれ」
「…はい」
手渡されたポーションを一息に飲み干す…うげぇ、苦っ!
「コレで1時間程したら効果が現れる筈だ。それまでそこで寝ていて貰えるか」
「分かりました」
今いるのは錬金術師代表のリクトルさんの工房で、薬草やそれらで作った薬などが壁の棚に所狭しとならぶ…そんな部屋。今飲んだポーションは俺の毒に対応した練金調合薬だそうだ。
「毒が治ったらこの胸の紋様は消えるんですよね?」
「あぁ、その予定だ」
「俺の血の色も元の赤色に戻ったりしますか?」
「いや、それはそのままだろうな」
「ですか」
そのままかー、まぁ然程残念では無いけど。今すぐ帰れるわけじゃ無いし多分この血に助けられてる所もあるし。
「そういえば、前から疑問だったんですけど」
「なんだ?」
「何でリクトルさんは錬金術師になろうと思ったんですか?」
「毛生え薬を開発する為だな」
「は?何故に?リクトルさんフサフサじゃないですか」
「ハハッ」
…まさか、カツラ?
「髪の毛引っ張ってみてもいいですか?」
「やめたまえ…視線を少し上に持って行かないでくれ。それは置いておいてだなミズキ君」
「はい、何でしょう」
「君は本来この世界の人間じゃないのだろう?」
「そうですね?」
「君の故郷の話でも聞かせてくれるか?1時間もあるんだ、その間の時間潰しになるだろう」
「良いですけど。どんな話が良いですか?」
「そうだなぁ…」
…
「いやはや、車はまだしも飛行機や宇宙船などと言う物、考えられんな…っと、そろそろ1時間経ったかな?どうだ?紋様は?」
問われて服をはぐって紋様を見てみる。うーん、少しだけ紋様の形が小さくなったかな?
「コレで完治といかぬか。獣王め、厄介な毒を…身体の調子はどうだ?何か変化はあるか?」
「そうですね、結構身体が軽くなった気がします。血行がいいと言うか」
「そうか、毒が薄まったからかもしれんな。一応この方向で進めてみるとしようか。今日はここまでだ、また薬が出来たら呼ぶよ」
「はい、有り難うございました」
工房を後にする。今はまだ昼。お昼ご飯を食べてから訓練だ。
…
『いっちに、いっちに、いっちに』
「姫様に続けー!」
「ダメです、速過ぎます!」
『いっちに、いっちに、いっちに』
「なんてスピードとスタミナだ!」
「何より掛け声に皆やられてます!」
何してるかって?唯の走り込み。姫様ことユイが訓練によって日に日に身体能力を上げていくせいで、走り込みをする際ユイに皆がついていこうとしてバテる始末。コレについていけるのはガイさん他ベテラン騎士達だけ。かく言う俺も必死なものの数百メートルは離されている。闘気法を使えば追いつけるけど、使ってないユイにそれで追いついても嬉しく無い。
『ゴール!』
1番にユイがゴールを決める。それから続々とゴールしていく騎士たち。殆どの人が息も切れ切れだ。俺もゴール…はぁ、疲れた。
『ミズキ、柔軟しよ?』
「あ、ああ」
ユイからのお誘いだ…毎度の事ながら周りの視線が痛い。「何でミズキばっかり」「姫様と…いいなぁ」…って顔してるって言うか聞こえてるから。あ、聞かせてるんですね。
まぁ勿論皆が皆そんな顔してる訳じゃないんだけど。女性騎士もいるし。
そんな視線に絡まれながらの2人1組の柔軟体操を終え、教官であるガイさんの前に整列する。
「今日は来週頭から行われる領地周辺の魔物の間引きに向かうメンバーを選出する。騎士を4名選び1チームを作る。それを今回は5チーム作って事に当たる。何か質問がある奴は居るか?」
『はい!』
「はい、姫様どうぞ」
『私も参加出来ますか?』
「残念ながら騎士ではない姫様は参加出来ません」
『えぇー』
「参加させたら私の首が物理的に飛びそうですので勘弁して下さい」
『うー、わかった』
「他に質問ある奴は?」
「選出基準は?」
今聞いたのは爽やかイケメンのベテラン騎士だ。
「一応ベテラン2名、中堅1名、新人1名で俺が名前呼んだ奴の予定だな。チームに入りたい奴はこのままここに残ってくれ。入りたく無い奴と姫様は今日は自主練だ。向こうでやってくれ」
ザワザワとしながら人が分かれていく。俺は勿論参加したい派だ。レイダスさんやシャガル先輩もこちら側に居る。ユイは残念そうにコチラを見ながら離れていく。
「よし、分かれたな。整列!先ずはベテラン騎士からシリウス、マルコ、トラクス、キーナ、エリオ…」
呼ばれた人はガイさんの後ろに整列していく。
「…シャガル、ミズキ。この20名だ」
「よっしゃ!俺呼ばれた!」
「えー、私呼ばれなかったー」
「残念〜」
「呼ばれなかった奴は向こうの連中と同じく自主練な。で、呼ばれた20名をチーム分けするぞー」
…
「僕はシリウス。宜しく頼むよ」
「私はパイナ、よろしくね」
「俺はカッシュだ」
「俺はミズキです。宜しくお願いします」
チーム分けが終わりここに4人の騎士が集まった。シリウスさんとパイナさんがベテラン、カッシュさんが中堅、新人枠が俺だ。
「新人のミズキ君には皆気を配る様に。もしかしたら程良い魔物も出てくるかもしれない。そんなときはカッシュ君やミズキ君に任せたりもするかもしれないから、気を抜きすぎないようにね」
「おう」「はい」
ベテランの騎士に守って貰いながら魔物達の強さが見れるいい機会だ。無事帰って来れる様祈って、入念にロングソードを磨こう。




