探索者協会にて
また休日がやってきた。
今日はこの間買ったロングソードを腰にぶら下げて街の外に探索に行こうと思ってる。
このロングソードの錆を落として刃を付けるのには苦労した。素人作業なのでちょっとムラがあるが一先ずは充分に切れるレベルになったと思う。お金が貯まったら鍛冶屋に本格的に診てもらうつもりだ。
最近は闘気法も上達してきてかなり強くなってきた…はず!それに外の魔物の強さを知るにも良い機会だ。
と、思ったんだけど…
「ダメだ」
と、街の門を警備している兵士に止められた。
「えっと、何ででしょう?」
「ここから先に通して良いのは元々街の民では無い者、街の外に出る資格を持つ者、依頼などで街の外に出る理由がある者に限られる」
「一応この街の人間では無いのですが…」
「それを証明できる外の街の住民証や協会カードなどは持ってるか?」
「いえ…」
「ならダメだ」
「資格というのは…?」
「探索者でCランク以上、魔術師で中級以上になればそのカードで通行出来る…命の保証は出来ないがな」
「そんなに危ないんですか?外?」
「あぁ。君みたいな若い者が外に出た場合、殆どがモンスターにやられる。一生残る様な怪我をしながらも帰ってくるのはマシな方で、大体はそのまま帰って来ない。まぁそもそも一人で行くとか危険すぎて資格の有無に関わらず止めるが」
思ってた以上に街の外はヤバイんだな。でもいずれかは街の外に出れる様にならなきゃ帰る方法を見つけられないしな。
「分かりました、考え直してきます」
「ああ、そうしてくれ」
探索者でCランク、魔術師で中級か。一度行ってみるか。
…
で、街の人に場所を聞いてやって来ました探索者協会。外からみるに中々に大きな建物だ。中に入ってみる。
カラカラーン…
協会内の見た目は酒場って感じでイメージ通り、だけど思ってたよりも閑散としている。時間帯の問題かな?
「すみませーん」
「はいはーい」
受付というかバーカウンターの奥に座ってる人に声を掛ける。おぉ、振り向いたその姿はテンプレの如く美人さんだ。とはいえ人間では無く山羊のツノの生えた悪魔族だけど。あれじゃ帽子被れないなぁ。
「初めての人かな?」
「はい、登録しに来ました」
「うんうん、じゃあ登録しちゃいましょう」
明るい笑顔でカウンターの下にある書類を取ろうとしてツノがカウンターにゴッと当たる。首グキッってなって痛そ。
「いたた…はい、コレに記入してね。書ける?」
「大丈夫です」
手渡された紙を覗くと名前や性別人種年齢、出身動機や特技に長所や短所などを書く欄があった。
ちょっと悩みつつ詰まりつつも書き上げ、笑顔で待機してるお姉さんに渡す。
「どれどれぇ?ミズキ君、と。17?若いねー!あ、人間なんだ。この辺じゃ珍しいね。それに日本人なんだ、へー!ふんふん、そっか、街の外に出たいのか。特技は…メギドフレイム?何それ?」
「ファイアボールを改変してたら出来た魔術です」
「へぇ?それって見せてくれたりするの?」
「構いませんが1発撃つと倒れます。俺が」
「ダメじゃーん!」
二週間たつが、訓練場の端では未だに天高く青い炎が絶えず燃えている。シャニ様も見学に来た程で、城では名物になっている。いつ消えるかの賭け事まで行われている始末だ。
「じゃあ取り敢えず飛び級試験受ける?」
「どんな内容ですか?」
「筆記と実技だね。実技は〜そうだね、私と試合でもしましょうか」
「分かりました」
「ちょっと今職員が少なくてねー。私で勘弁してね?」
「いえいえ」
「じゃあここで筆記を終わらせちゃいましょう。じゃじゃーん!」
「ここで?」
「そ、ここで」
そうして始まった筆記試験。内容はこの世界の名前から始まって城主の名前、歴史上の人物、果てはモンスターの分布など、分からない事も結構あったが書き切った。
「出来ました」
「んー、どれどれ?マル、マル、バツ、マル、サンカク…シカク」
シカク?
「うーん、及第点。まぁ良しとしましょう!」
「良かった…コレで後は試合すればCランクに?」
「ノンノンノン、私が認めたら、だね」
急に強者オーラを放つ受付嬢さん。強いんだろうな。自信満々だし。
…
協会の裏にある訓練場まで2人でやってきた。こちらは協会に入った時と比べると人が多くて、皆必死に訓練に励んでいるが、入ってきた俺たちに気がついて此方を見学し始めた。
周囲の視線を気にしていない受付嬢さんに木剣を渡される。
「早速始めましょうか、ミズキ君。あ、私の名前はミスティ。覚えておいてね」
「分かりました、ミスティさん」
「じゃあ、始め!」
「っつ!」
宣言と同時に急速に接近してくるミスティさん。木剣での高速の突きをギリギリで避ける。脇腹の横を剣が通過していく。危ない、いきなり終わる所だった。
と、思ってたらミスティさんが身体を捻って返す様に剣を振るってきた…!カァン!と何とかすんでの所で木剣の腹で受け止めそのまま受け流す。が、まだ止まらない。更に身体を回転させて袈裟斬りに振るってくる剣をバックステップでかわす。
「逃げてばっかりじゃダメー」
「っ!」
今度は此方の番だと、力強い踏み込みで放った剣は、ミスティさんの剣に阻まれ届かない。すかさず2撃、3撃とフェイントを織り交ぜて剣を振るうが剣の壁を突破する事は出来ない。
ミスティさんの横薙ぎの一撃をバックステップで避けつつピョンピョンと下がって一息つく。
それからも暫く攻防を繰り返したが全体的に劣勢だ。
「こんなんじゃぁCランクはあげられないかなぁ」
「むぅ…」
このままだとミスティさんの防御を崩せる気がしない…やっぱり闘気法を使うしか無いか。使う魔力だけを体内に巡らせて…浸透、活性化させる!
急激に軽くなる身体。手にした木剣の重みも殆ど感じられない。…このスピードで!
風切り音を鳴らしながら俺の剣がミスティさんの剣を弾き、その隙にと脇腹へ剣を捩じ込む様に…と、弾いた筈の剣でガードされ、更には俺の腹に蹴りを入れられ後ろに吹っ飛び転がっていく。
「ビックリしたー!急に速くなるんだもん」
「ぐふっ…げほっ」
「でもまだまだその程度じゃダメー」
「ぐぅ…」
「もっと基礎を鍛えなきゃダメだね、うん」
「…頑張ります」
「とー、言うわけで降参?」
「します」
「素直で宜しい!そうだねぇ。Dランクって事でお一つ」
…
協会内のバーカウンターに戻ってきてミスティさんに渡されたのは探索者カードという物。そこには名前や年齢、出身地の他にDという文字。
「また暫く鍛えたらおいでよ。相手してあげるから」
「いいんですか?」
「ここ、殆ど酒場だから朝の受付業務の時以外は私暇だしね」
「そうなんですね」
「タイミングが合えば強い探索者とか紹介してあげるよ」
「はは、その時はお願いしますね。そろそろ帰ります」
「あ、そう?もうちょっとゆっくりしてっても良いのに。じゃあね、ミズキ君ー」
「はい、ミスティさん。また」
カラカラーン…と俺が出てった後。
「わー、危なかったぁー!一瞬本気出しちゃった!何あの子、まだ訓練し始めて1ヶ月ぐらいとは思えないんだけどどう思う!?」
「え?姐さんアイツの事知ってるんで?」
「姐さんっていうなし。私の兄の教え子なのよ〜、ほら、姫様を助けた子」
「ああ!あの!しかし、Cランクの俺より良い動きしてましたぜ?最後のなんか俺多分対処できねぇし」
「あのレベルの強さなら本当はCランクで良いんだけど、シャニ様からミズキ君はまだC以上に上げるなって言われてるからどうしても負けられなかったのよ」
「最後ちょっと必死でしたもんね姐さん」
「姐さんいうなし」




