武器屋
今日は訓練は休みなので城下町に来ている。
特別目的がある訳ではないけれど、折角の休みなのに城の一室に閉じこもってるってのも勿体なくて。
今回はユイも連れてきていない、完全なプライベートという奴だ。
何をするでもなく城下町をプラプラと歩く。今は昼前の時間帯。ご飯どうしようかな?と考えながら色んな店を眺めていく。
休みの日でも城の食堂に行けばタダでそれなりに美味しい定食が食べられるんだけど偶には良いよね。
お、武器屋だ。こないだはユイが一緒だから遠慮したけど、興味はある。今も帯剣してるけどこの剣は貸与品だから俺のもんじゃないし。
自分だけの剣を手に入れるって、ちょっと心躍る。入ってみようか?
カランカラン…「いらっしゃい!」
武器屋に入ってみた。おぉー、並んでる並んでる。剣から槍、弓に棍棒に杖その他色々。
「じっくり見てってくれよ!ウチの武器を持ってりゃどんな魔物だって怖くないってね!」
どんな武器持ってても魔物は怖いと思う。まぁ武器屋の店主定例の声掛けなんだろう。
早速剣の並んでるコーナーに来てみた。俺が使ってる貸与品のブロードソートに似た剣を見つけて試しに持ってみる。落としたら大事なので取り扱いに注意だ。
『鋼のブロードソート 折れず曲がらずを追求した匠の技が光る一品 25万ルビ』
剣に付いてた説明文を読んで、色んな角度から眺めてから値段を見てそっと元の位置に戻した。予想を超えて高い…
もう一本、今度は棚の上の方にある高そうな剣を手に取ってみる。
『ミスリル製ルーンブレード ミスリルで出来ている為魔力の通りが良く、魔術師の触媒としても使用でき、切れ味、強度ともに優秀な業物 1200万ルビ』
出たよミスリル。あー、ここは異世界なんだなって感じられる一品だ。そして値段がバグってる。俺の給料の5年分だよ。傷付けない様にそっと棚に戻す。
近くにユイが使ってた様な細剣を見つけた。そう、こないだのユイとの模擬戦はギリギリの勝利だった。そのうちユイには置いてかれそうで怖い。頑張らなくては。
しかし細剣か。軽い分素早く振れるのはいいんだけど上手く扱わないと曲がってしまいそうで怖いんだよな。
デッカい大剣も並んでる。試しに持ってみる。当たり前だけどメッチャ重たい!持てなくは無いけど、これを振り回してもちゃんと戦える気がしない。何だろ、大剣専用の立ち回りみたいな物があるんだろうか?
他にも斧や弓を眺めてみたり魔術師の杖を手にしてかざしてみたり。ただ一つ言えることはどれも今の俺の所持金じゃ払えないという事。一本俺専用の剣が欲しかったんだけどな…
もう一度剣のコーナーへ戻って眺めていると、
「あんちゃん、剣を探しに来たのかい?」
と、店主に声を掛けられた。
「あ、そうです…けど、ちょっと手持ちじゃ買えそうも無くて」
「ははっ、武器や防具ってもんは高いからな。因みに予算は幾らなんだい?」
「10万ぐらい…」
「それじゃあ鋳造の剣が1本買えるかどうかだな!よし、あんちゃんに丁度いいのがある!」
「え?」
そういって店主がカウンターの奥から出してきたのは十数本の鞘に収まった剣が刺さったバケツ。それぞれ形が違い、鞘の状態からみて新品では無い様だ。
「コレ等はここで武器を買ってった客が下取りに出した剣だ。中にはサビサビだったりちょっと曲がってたりするのもある。本当ならこういうのは売らずに鍛冶屋に持ってって溶かして打ち直すんだがあんちゃんに丁度良いと思ってな。ここから一本選んでみたらどうだ?」
「良いんですか?」
「なぁに、買い取った以上俺の持ち物だ。俺の好きにして何が悪いってな!んで、どれを選んでも1本10万でどうだ!」
「おおー」
「大丈夫、明らかにダメそうな奴は一緒に見て弾いてやるから」
そう言って店主バケツから剣を取り出してカウンターに並べ始める。どれも鞘に入っているのでパッと見は分からないけど…
「じゃあ先ずはコレから」
と、向かって左端の剣から順番に手に取って鞘から抜いてみる。
「サビだらけだな。手入れが大変そうだ」
「刃が欠けてますね」「ダメ」
「こりゃダメだな、剣身が曲がってる」
「鋳造の剣だから新品買った方がマシだ」
…
と、十数本のうち3本の剣が店主のお眼鏡に叶った。
「さぁ、あんちゃんどれにする?」
多少錆びてはいるものの手入れすれば使えるロングソード
綺麗で特に問題は無さそうなショートソード
問題は無いが少し大きめで重たいクレイモア
綺麗だし悪くないんだけどショートソードは無しかな?やっぱりある程度の長さは欲しい。
クレイモアかロングソードか…ううーん。
「ロングソードで!」
「錆びてっけど良いかい?」
「はい、自分で直してみます」
「まぁそうやって手間かけたら愛着も湧くってもんだな!だけど砥石とか持ってんのか?」
「いえ、持ってません」
「じゃあサービスで付けといてやるよ!研いで油を塗れば十分だ」
「いやー、何から何まで有難う御座います店主さん」
「良いって事よ!俺とあんちゃんの仲じゃないか!ははは!」
俺も笑顔、店主も笑顔の気持ちの良い買い物だった。
「あんちゃんまた来てくれよ!」
そんな店主の声掛けを手を上げて返事をし、そろそろお腹が空いてきたのも相まって近くに見える食堂に立ち寄ることにした。




