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ミズキの異世界物語  作者: すぺぇすふぁんたグレープ
一章 ミズキ、人間を辞めるってよ
10/42

シャガル先輩

「………」


「……い!」


「おーい!」「ぅう…?」


 んー?あれ?俺、何してたんだっけ?


「起きたかー?」

「あー、起きました、多分」


 そうだ、ファイアボールの練習してて…ここは救護室?


「訓練場で倒れてたって聞いたぞ?」

「ここまで運んでくれたんですか?」

「まぁな」


 顔をよく見るとシャガル先輩だった。

 うーん、そっか、多分魔力切れで倒れたんだな、俺。


「お前が倒れてるのを見た皆心配してたみたいだぞ」

「ご心配を掛けてすみません」

「いや、まぁ俺は心配なんかしてないがな。ほら、目が覚めたんなら起きた起きた!」


 急かされて起き上がる。うーん、身体が重たい…魔力が切れてるせいか?使い過ぎたらダメなんだな。うん。


「シャガル先輩、有難う御座いました。風呂入ってきます」

「あぁ、道中倒れんなよ?」

「はい、ご心配有難う御座います」

「い、いや、俺は心配なんかしてないぞ!」

「そ、そうですか」

「じゃあな、俺は行くから」


 と、颯爽と部屋を出て行くシャガル先輩。思ったより優しい人だな。

 さて、ちょっと怠いけど汗臭いし、風呂入らないと…





 風呂に来た。番頭をしてるおじさんに声をかけて脱衣所に入り、服を脱いでタオルを肩にかけて風呂場に入る。

 訓練終わりの時間帯を少し過ぎてるので入ってる人は割と少ない。速くしないと女湯に切り替わってしまうので急いで頭や身体を洗い、さっぱりしたところで湯船に浸かる。くぅーっ!疲れた身体に湯が染み渡る!


 はぁ…と、一息つくと、お湯にゆったりと浸かりながら魔力を練る練習をする。風呂に入った時の俺の日課だ。しかし今日は倒れる程魔力を使ったせいか身体の中の魔力が少なく感じる。これぐらいの濃度なら今の俺でもスムーズに動かせるな。

 

 その魔力をグールグルと身体の中で巡らせたり、指先に集中させたりしてると、そういえばアリスさんが「使う魔力と使わない魔力を分ける」って言ってたなと思い出す。ちょっとやってみよう。

 先ずは何処に魔力を集めようか。胸?お腹?ヘソの下?頭…は何か怖いな。お腹にしとこう。

 意識を集中して腹に魔力が集まるように意識する。するとあっという間にお腹付近に集まる。こっから必要な分だけ取り出す様に練習をすれば普段からスムーズに魔力が動かせるんじゃないだろうか?

 試しに大部分をお腹に残したまま手に魔力を込めてみる。うーん、思い通りにはなってるんだけどコレで良いのだろうか?魔力が少ないせいか簡単過ぎてイマイチ成功してる実感というのを感じられない。

 むぅー、と魔力をあちこちに巡らせてると、「そろそろ女湯と交代だよー!」と番頭さんの声が掛かった。集中してると時間が経つのが早いなと思いながら風呂を出た。


………


 翌日の午後、訓練場に行ってみると昨日のメギドフレイムがまだ天に昇るが如く燃え盛ってた。既に木人の影も形もない。


「あれ、何しても消えないらしいぜ」

「怖ぇな。地面なんかガラスになってんじゃねーか」

「こんな魔術食らったら骨も残らなそうだな」

「魔術師の連中が出払ってるから暫くこのまんまだと」

「ミズキなら消せるんじゃないか?点けたんだし」


 おぉう、噂されてる…燃えるものがなくなってるのに何で消えないんだろうな…呪文の内容がいけなかったんだろうか?絶えず燃え盛るって言っちゃったし。


「訓練を始めるぞー!整列しろー!」


 ガイさんの号令に騎士の皆が慌てて整列して行く。俺も慌てて整列。


「ちょっといつもと光景が違うが気にするなー。走り込み始めるぞー」



「ミズキ、あの炎はなんなんだ?」


 走り込みが終わった後、ガイさんに呼び出され問い詰められる。


「えーと、魔術の練習してたらあんな事になりました」

「…何の魔術を練習してたんだ?」

「メギドフレイムです」

「初めて聞く魔術名だな」

「ファイアボールを弄った俺のオリジナルです」

「あぁ、そう言う事か。えーとだな、俺は専門じゃないから詳しくは説明出来ないが、今の呪文って言うのは数十年変わらずに使われ続けている程に最適化されていて、下手に改変しても威力が低かったり消費魔力が多くなったりするもんなんだ」

「そうなんですね」

「あぁ。まぁあのメギドフレイム?は成功した方なのだろうが、魔力が高いお前がぶっ倒れるほどに消費したんだろう?常用出来るもんじゃない」

「確かに」

「もし改変するにしても、もっと魔術の事を知ってからにしたほうが良いと俺は思うぞ」


 ガイさんも心配してくれてるんだな。


「分かりました。フィナ様にもっと魔術の事を教えて貰ってからにしようと思います」

「あぁ、そうしてくれ。これ以上火柱を増やされても困るからな」


 と、苦笑するガイさん。俺も釣られて笑う。


「じゃあ今日は剣と持って…そうだな、姫様と型の練習をするか」

「ユイとですか?」


 この間シャニ様の許可を貰って、ユイも訓練に参加する様になった。毎日では無いが、ちょくちょく参加しては走り込みをしたり剣の素振りをしたり騎士と模擬戦をしてたりする。


「あぁ、流石シャニ様の娘だ。メキメキ上達しててな。アレはやっぱり身体の出来が違うんだろうな。気を抜くとすぐに追い抜かれるぞ?」

「え?もうそんなに強くなってるんですか?」

「生まれながらに魔力操作が出来てるからか、闘気法も順調に習熟してる」

「えー、怖いなー」

「お、丁度近くに居るな。おーい、姫様ー!」


 ユイが此方を振り向いて近づいてくる。ユイと目が合い、お互いにニコッと笑顔で挨拶した。


『ガイ、何かな?』

「ミズキと一緒に型の練習しませんか?」

『ミズキと?やるっ』

「じゃあ姫様、ミズキと対面になって」


 ユイと向かい合い、礼。武器を構える。


 ユイの持ってる得物はレイピアの様な細い剣だ。他の刀剣に比べて比較的軽い事から素早く取り回すことができ、刃がついてないとは言え細身の剣先で突かれれば今着てる騎士服ごと身体をあっさり貫通してしまうだろう。

 対する俺の武器はブロードソートの様な少し幅広く少し肉厚な剣。この剣はユイの剣と比べると重いが、少々打ち合ったとしても折れたり曲がったりしない様丈夫に作られている。魔物と戦うには武器の丈夫さは大事なので、この城の騎士に一般的に支給されてるのはこの剣だ。


「準備はいいか?始め!」



「そこまでだ」


 型の練習なので、本来から比べると少しゆっくりとした動きで型に沿って切り合ったのだが、ゆっくりとはいえ正確なユイの動きには驚愕の一言だ。動きを見てる限り普通にやったら勝てないんじゃないかな。


『ミズキ、模擬戦もやろ?』

「えぇ?」

『私は本気で行くからミズキも本気ね』

「マジで?俺、勝てるかなぁ」

「はっは、見届けてやるぞミズキ」


 ガイさんは乗り気だ。


「じゃあ適当に向かい合って、合図と同時に試合な」

『はーい』「うぃっす」

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