3仮の宿と従者
「注目してください!言葉分かりますか?I need everyone's attention please!」
「言葉は分かります。あなた方は?」
姫様が声を上げると、少しの沈黙の後こちらから一人が説明を求めた。
「私は、神国の第一皇女イルザと言います。説明をさせて頂きます。まずこの場を移動しましょう。椅子を用意しております」
というと、先に立って歩き始めた。
騎士らしき人は居たが、皇女、姫様を囲む様に数人剣も差していない。おとなしく全員ついていく。
どうやら高校の一学年、の約半数がこの場に居るらしい。
「ここは、あなた方神子様からみて、異世界の、神国神都、宮殿儀式場です」
「神子様は百年に一度の儀式にて喚ばれました」
「元の世界には行けません。神子様はこれからこの世界で過ごす事となります」
まあ、50億人もの人を召喚するのだ、結構な時間が経つに連れ、そう言う儀式へと変化したのだろう。
ステータス、固有能力は使える。動きに違和感があったり、何処か他人事なのは【キャラクター】が発動しているのだろう。
「もちろん、神殿がこの世界で生きて行く手伝いをさせて頂きます。場合によっては、一生保護させて頂きます。……では、仮宿に案内させて頂きます」
意外にも、他の神子がほとんど騒がなかった。
「ここが仮宿です。従者と、大銀貨10枚が支給されます。今後は従者に随時聞いて下さい」
まんまアパートだった。
大銀貨って?、と思いつつも硬貨の入った袋を受け取り、従者……メイド、執事を選ぶ。
異性を選ぶ人が多い様だ。
メイドを選ぶ。まずは部屋へと、階段の近くで、鍵が配られる。1階は食堂等、2階はすでに埋まり3階へ。
しっかり鍵を掛けて、メイドを見る。
「お選び頂き光栄でございます。私はアガーテと申します。以後よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします。自分はゆきです」
このキャラクターの名前はゆき。
「とりあえず今何時ですか?服と下着、紙と筆記用具くれません?」
「只今の時刻は、13時32分です。申し訳ありません。消耗品の類いは、購入する必要がございます。また、食堂、風呂の利用等、にも金銭が必要となります。世界に慣れる為、ご理解ください」
「分かりました。では、さっき言った物、服と下着は上下2着、紙は100枚ほど、最低限用意するといくらほどかかりますか。今日は疲れたので買ってきて欲しいです」
「畏まりました。あの、失礼ですが、ゆき様は女性でしょうか、男性でしょうか?」
「……女です。秘密ですよ?」
にっこり笑って言う。
「大変失礼致しました。大銀貨2枚ほどで最低限は揃います。服装の希望はございますでしょうか。場合によっては金額が上がります」
「女性らしさの無い服にしてください。元の世界の基準では一人の女性はいろいろ危ないので」
「畏まりました。この世界でも、男性は獣ですので用心するに越した事はないかと」
そう言って2枚の硬貨を袋から抜くと、失礼しますとアガーテは部屋を出ていった。
【キャラクター】を使おうとして、使える状態なのを確認する。【キャラクター】は、人が見てないところでしか変えられないので、今一人なのだと分かる。
「監視とかは付かないんですね」
いや、従者が監視か。百人も居ればそこまでは出来ないかな。むしろ選べるほどに従者を用意してあった方が驚きか。
あれ?……なるほど、人が居なくても声に出すとゆきの口調になるのか。演技ではなく勝手に口から言葉が出るとは、便利。
「だけど相手によって使い分け出来ないか?」
出来るな。
意識しないといけないから、話しづらいけど。うん。
……何か変なんだけど、わからない、イライラする。
【キャラクター】のせいか?空に……でもアガーテが戻って来るかもしれない。
はあ。
ゆきは備え付けのベッドに横になろうと、顔の横に手を持っていって、
「っ!眼鏡?ああ、ゆきだから。え?【キャラクター】は、なりきるだけであって、空と能力は変わらないはずです」
視力の悪い空がゆきのふりをしようが、視力が良くなるはずもない。しかし、今現在眼鏡が無いにも関わらずはっきり見えている。
これは、神様が身体を創った影響?
あれこれと思考を巡らせながらアガーテを待った。
安定したら、召喚。時間が経つ。
世界生まれと召喚者で対立。
一度召喚途切れる。
神様が召喚を促す。神事へと。
召喚者は事実を知るものからは、先祖の関係者かもと、
また、神様に招かれた者、神子と呼ばれる様に。