26独立
あれから2年。
「お前達独立しろ。薬草の供給も終わりだな。生活できるだけ自力で稼げるようになったはずだ」
「ええ!」
「そろそろ、言い出すとは思っていました」
「でも、また来ても良いんですよね」
「ああ。自分が暇なら相手してやる。薬草はやらないし売らないが。カールは冒険者付きになっても良いぞ」
「え?」
「どうして薬師を選んだのかは知らないが、よく冒険者の話を聞いているのは知っている。冒険者付きは商人から嫌われているのも分かっているが、カールがやりたいようにやると良い。一番苦労するのはお前自身だがな」
特定の冒険者から直接薬草を買い、直接薬を売る。商人を通さない為その分費用は抑えられるが、商人に嫌われるし、いつ死ぬかも分からない冒険者相手なので収入は不安定になる。また、一方的な関係になったりトラブルもある。
「俺、冒険者に憧れてたんだ!けど、妹が死んだ時近くに薬草が生えていて、それを使えたら妹は生きてたんじゃないかって……」
カールは5歳の時魔車に乗っている所を魔物に襲われ、奇跡的に近くにいた冒険者に救われた。これで家族を亡くし孤児院へ。
「それで薬師に。今でも、冒険者が好きなんだな。……まあ、好きにすると良い」
「でも、俺が商人に嫌われたら師匠の評判も……」
「ふん。自分は称号持ちだぞ?舐めるんじゃない」
そう。2年前称号持ちになった。
「おめでとうございます。本日より"星薬"、星の数程に薬を作る者、を名乗って頂きます。称号は一般人にも分かりやすい牽制・警告の為の物です。出来れば積極的に名乗って頂けると幸いです」
「意外とまともな称号」
「まあ、今の"万薬"様、"宝薬"様も進化前はそんなものだったらしいですし。それから例の薬に関しまして、その御二方共に「好きなようにすれば良い」と製法を公開するもしないも自由だ、とのことです。場合によっては貴族が煩いでしょうが」
「分かった」
「製法を売る場合は是非ギルドに」
「とりあえず、売る気は無いかな」
「残念です」
今
称号持ちになってから、商人も貴族も煩いなあ。
冒険者もか。元々ちょくちょく有ったが、黒どもで囲んでどうしようと言うのか。はっ。冒険者ギルドで大声で迷惑だと言ってやった。ルーカス(学園時代絡んできた"天眼")の言っていた事が役にたったのが腹立つ。薬は冒険者にも必需品だ、薬師にそっぽ向かれたら困るだろう。存分に迷惑かける奴はリンチしてくれ。
「師匠?僕の所に縁談が来たんですよ」
「とうとうか。弟子から懐柔しようって?この際だ。良いものが有れば結婚してしまえ」
「私の所にも来ました。それ、いくら良い家でも家も継げない穀潰し同然な存在嫌です」
「俺の所来てねぇ」
「自分の警戒も弛む頃だろうって、2年もかけたんだ。しっかり調べているだろう」
「カールはまだ出していない〈回復属性〉が高いからなあ。〈調薬〉だけだと僕達で一番レベル低いだろ?」
「カールは〈回復属性〉は身内、しっかり契約した冒険者の所で作れば良い」
「良いの?師匠」
「職人ギルドは知っているからな。弟子が出来ても不思議ではない。ユーリカもエーミルも自分が得た知識は自由にして良い。正直製法は広めるつもりでは有った。〈回復属性〉を上げないといけないから、そう易々とは試せない。だから初めから、実証として自分は弟子を利用した」
「ああ、そう言うことですか。僕達が使えば師匠の言が信用されると」
「お前達の独立までは待った。職人ギルドでも製法の公開をする。その中で、〈調薬〉と一緒にレベルを上げてきたお前達は有利に立てるだろう」
「……何から何までありがとうございます」
「「ありがとうございます」」
「自分の為だ」
弟子達が独立して、部屋が広くなった。調薬や錬金の場所が有れば良いから、もう少し狭い部屋に移動するか?うん。そうしよう。
自分の方にも大概穀潰しどもから縁談が来ているな。嘗めてるだろ。まあ、Lvの高い職人で有れば有るほど一辺倒になりやすい。何も知らないまま家族になったと、その家の言うことをホイホイ聞くのだろう。
逆に、我が道を行くタイプでその家で上手に自分の環境を整えるのもいるか。
ん?でも、何件か跡取りも混じって居るな。ついでに現当主も。これは特殊性癖。(クラウ見た目14歳)
あ。これ、いつぞやのフィデリオ商会の若旦那か。薬納品に行くと結構会うが、縁談の為か。凄くちらちら見られていたが、縁談が来たの1年前じゃないか。
ふん。全部燃やs……【等価交換】で有効活用しておこう。
弟子の薬草作りでMPをしょっちゅう空にしていたお陰で〈MP増加〉が高くなり、MP最大値が増えた。同じく高くなった〈錬金〉で必要なくなった低Lv薬草を高Lvにしていく。
MPを空にすると〈MP増加〉、MPをより多く自然回復させると〈MP回復〉のレベルが上がる。だから低Lvの時の方が〈MP増加〉は上がりやすい。そして、回復薬に頼ると回復スキルは上がらない。
結構高Lvなクラウの〈MP回復〉は凄い事に。もう本職の魔法使いレベル。ちなみに本職の魔法使いはMP切れは町とかの安全地帯でしか出来ないので、同Lv帯の錬金術師(MP回復薬で回復、空を繰り返し)よりMP総量は低い。
クラウはMP回復薬は今はあまり使わない。MP多くなって薬草増やすより回復量が追いつかないから。なら、他の事して回復時間潰そう。
弟子が出来る前の一人の生活が戻って来た。
多少、作る薬の量が増えたとか、来客(午前中限定それ以外は追い出す)が増えたとかは有るが、午後には外で素材集め、夕方に店で素材を買い漁って夜に生産。
あ、貯金は始めた。称号持ちは本当にお金が入る。"星薬"の名の通り数が多く、他の称号持ちに比べては安い価格なのだが黒の時より数も値段も高く、収入が文字通り桁違いだ。
素材漁りだけでは使い切れなく、いや高Lvを求めれば青天井なのだが、それでもそんな大金は……
となった所で"細鋼"であるクレメルさんに聞いた所。
「私は自分の使う分はとっておいて開拓村に投資しているわ。こうしておけばこのお金狙いの商人や貴族を大分かわせるし、何か有ったら開拓村の実力者が味方になってくれるし。だからこその投資ね」
「成る程」
「後、神殿に寄付って人も多いわね。私は薬都にずっといるから近い開拓村だけに投資しているけれど、あちこち回る冒険者や商人は神殿に寄付の方が多いわ。神殿はどこにでも有るし、寄付で定期的に情報を貰ったり貴族とのトラブルの時は強いわよ、神殿」
「そうなんだ、ありがとう」
「クラウちゃんが頼ってくれて嬉しいわ。今度お礼に買い物に付き合ってくれたら嬉しい♪」
「……はい」
寄付か。もう40年以上たったし神殿で大丈夫かな。いや、魔導都市は今度にして開拓村に行ってみるのは……危険か。うっかり村が呑まれた時ランク3から逃げ切らないといけない。そうなっても職人は冒険者に守られるらしいが。
結局神殿に寄付。
お金も無く薬都にたどり着いた頃が懐かしい。
……一度【キャラクター】で一から冒険者もありか。
そうだな。そうしよう。しかし、それだとこのクラウの人生は終わりだな。じゃあぎりぎり、300歳まで生きたら次は冒険者だ。
『老化』しないから。次がある。
ずるいなぁ。
口調が相手によって変わるのは、普通の人も同じ。しかしクラウは、〈演技〉が無駄に高いのではっきり使い分けられているだけ。
冒険者の集団の単位が3つ有る。
ソロ、1人行動。
パーティー、2~9人。普通6か8。
ファミリー、10人以上。全員で行動する訳ではなく、信用出来る仲間が集まり、このなかで自由にパーティーを組んだりして仕事する。また、新人育成や物質のやり取り、規律、拠点が有る場合がある。冒険者付き薬師とはこの集団の一員になること。




