ショータ
他者視点。今後、ちょくちょく入る予定。
俺は高木翔太。中学2年生だった。
両親は幼い頃に死んだ。
一人っ子だった両親はそのまた両親も老人ホームか死んだらしいし、保護者が居ない俺は児童養護施設で暮らした。
児童養護施設には他にも子供が居たが、虐待や育児放棄等、俺みたいに本当の意味で両親が居ない子供は居なかった。そういう些細な違いからか、俺は同年代の中で浮いていた。
幼い頃からあまり人と関わらなかったのは社会において致命的で、小学生ではいじめにあった。
「仮面野郎!」表情が変わらなくとも何も思わない訳では無い。
「親無し!」俺が望んだ訳じゃない。
「オカマ!」小学生に性差などほとんど無い。髪が長いのは……。
「バーカ」「あーほ」「うんこ」
話が合わないのも仕方ない。
テレビもゲームもオモチャも。
そんな贅沢を親も居ない俺が望んでも良いのか分からなかった。少しでも話しについていけるように、本なら沢山読んだ。図書室の読書数ランキングで一番になったのは嬉しかった。
足の速い男の子が皆に囲まれて居るのを見て、俺も練習した。持久走大会で一番になった。嬉しかった。
テストも国語も算数も……。
どうして俺には誉めてくれる人が居ないんだろう……。
中学2年生のある日、俺は覚えている限りで初めて、子供が親に我儘を言うように大声で泣いた。周囲が俺を遠巻きに見て慌てているのを感じ……むなしくなった。
不思議な夢を見た。
痛っ!いだだだだだだだっ!
何!目の前が真っ赤だ。
痛すぎて赤い訳じゃない。血、血が……!
眠る前以上に泣きわめいた。
何故か真っ赤な人が俺の母親で、俺がその中から産まれた事を理解してしまった。夢の続きなのか、俺は二度も母親を亡くすのか!嫌だ!ぉかぁさんっ……お母さん!
寝て起きて、少し冷静になって理解した。
夢は夢ではなく、本当に転生したのだと。でなくてはこの状況はあり得ない。恐らく赤ちゃんに俺はなって居た。
恐らくというか確定で。
お母さん……。大丈夫かな。
「ショータ様、お目覚めですか。ではお食事の時間ですね」
ビクッ。
「……お、……だー!」
この感じ、喋ろうと思えば喋れる。多少呂律は回らないけど。本当に異世界。赤ちゃんってこんなのじゃないだろ。でも急に話し出したら不気味だろうし。
というか、メイドさん?居たの気付かなかった。
……うお!めっちゃ綺麗。……奴隷とか、居るのかな?首輪してる。メイドって事は貴族?貴族の家に産まれたのか。さすが貴族、奴隷の首輪も豪華だなあ。綺麗だし。黒髪に大きな金の目が猫みたいだ。
「はい。Lv67の乳牛の血ですよ」
血!?
「だぁうぅ~!」
「嫌ですか。困りました。……仕方ありません。ショータ様申し訳ありません」
うぐっ。このメイド見た目はお人形みたいなのに、力業かよ!
「んくっんくっ……」
って、牛乳?まったりしたちょっと甘い牛乳だ。しかもめっちゃ美味しい。
「気に入りましたか、それは宜しゅうございました。乳牛、ランク4の魔物で全身の血が白く優しい味わいの通称"牛乳"ですよ。産地はここから魔車で3週間程かかるはずですが、さすがはキャンサー公爵家です」
都合良く、メイドさんが説明してくれた。本当に異世界。体に牛乳が流れる生物……魔物!?が居るんだ。魔車は馬車の魔物バージョンだな、きっと。
そして、家はキャンサー公爵家。あれ?侯爵?まあ、どっちにしろ偉い家、と。
「……はい。お腹一杯ですね。〈観察〉……ステータスに異常はありませんね」
「……けふっ。あー!」
お腹いっぱい。ありがとう。
そして気になるステータス。俺だって異世界物の小説もデスゲーム物の小説も知っている。
「はい。お休みなさいませ」
さっき起きたばかり……と言いたい所だが、異世界のくせにこんな所ばっかり同じ……もう……ねむ……。
「すぅーすぅー」
「ルーレシア様!まだ休まれないと」
「ヤウ、もう大丈夫よ。それより私の子、ショータにあわせて」
「今は就寝中です」
「赤子は寝るのが仕事だろう?」
「そうよ、さあ。起こさない内に黙って会わせなさい」
「はい」
うるさい。
「……だあー!」
あれ?なんか、ちょっとの不満に声が出た。前は仮面野郎って言われる位には感情を出すのが苦手だったのに。
「ほら。起こしてしまったわ?ごめんなさいねえ。うるさかったわよね。ショータちゃん」
「申し訳ございません」
「……あー!ぶぅぅぅ」
お母さんとお父さん!?
「ショータは元気だなあ。パパですよぉ~」
うおっ。美青年がだらしなく顔を崩してる。
「ショータ様が目が覚めてしまったようなのでお食事が必要なのですが」
「私がやりたいわ!ママだもの」
「畏まりました」
「あー!だあー!」
ママ!お母さんが居る!血は?大丈夫なの?
「はいはい。ママですよぉ~?可愛い子。ショータちゃん。そんなに暴れなくてもご飯はもうすぐですよ~」
「あー!」
良かった。大丈夫そう。俺のお母さん。俺の……。
当然、ヤウは理解できると知っていて説明している。




