日常
結局、何事もなく日は過ぎて行った。
ルーレシア様達の仲は良好だし、パイシーズ家と違ってキャンサー家は安定している。
代わりに光に誘われた外の虫の巣が潰れたりしているが、問題ない。
「ヤウ?貴女私の侍女の他にヴィルの手伝いもしているのですって?大丈夫なの?働きすぎででは無いかしら?」
「ああ。毎日シアの侍女として立って居るのに、夜にはヴィルの手伝いだろ?ヴィルには言っておく」
「ヤウ、たまには休まなければ、無理をしてはいけないわ。今度休みを上げますからきちんと休みなさい。それと」
「久しぶりだな、ヤウ嬢。相変わらず美しくて何よりだ。特別魔導国研究資料の閲覧許可証だ。後で色々と書類も書いて貰うが、このカードは12家の当主が直接渡さねばならんのでな」
「当主様。ありがとうございます」
なんと!何時かは忍び込もうと思っていた資料室への入室許可。嬉しい!手に乗る程のカードは見た目より重く、頑丈そう。黒地に金でアクベンス・ゾディ・キャンサー、銀でヤウ・メシエ、虹色の蛇?の絵が書かれた物だ。パッと見るだけで鍵の魔道具にみえる。ん?〈観察〉効果……
「注意として、その証は鍵になっているのだが、ヤウ嬢以外の者が触ると使えなくなってしまう。絶対に触らせないように。それから、資料室の場所だがアリーズ家に行け。案内される」
「はい」
ああ。名前が正しいかのみステータスを見る機構か。合致しなければ鍵の部分が破壊される仕組みだな。
「よかったわね。ヤウ。お義父様、わがままを聞いて頂きありがとうございました」
「なに。可愛い娘の頼みだ。それにヤウ嬢の有能さは聞いている。では、私は忙しいのでな。早くアルタルフも進化して当主の座を譲りたい物だ」
数日後、本当に休みが当たった。しかも1ヶ月。さっそく資料室に行こう。
が、
「ヤウ、少し仕事を頼みたいのですが」
「ヴィル様。私は休暇中です。この休暇はルーレシア様及びアルタルフ様に認められた物です。なので仕事はいたしません」
「ヤウ……」
「困った顔をしても殺りません。大体、最近は緊急性の低い物ばかりですし、やり過ぎて通信と情報、暗部のジェミニ家に睨まれては元も子も無いでしょう」
「貴女はまだ事の重要さが分かって居ないだけですよ。貴女ならジェミニ家も掴めないはずです。このままでは、キャンサー家に歯向かうバカどもがのさばるのですよ!」
「賢い者の方が厄介です。バカは好きにさせとけば良い。ヴィル様こそヤウを使う事に慣れすぎてはいませんか?ヤウはそもそもルーレシア様の侍女で、ヴィル様の部下ではありません」
「それでも、貴女は私よりも立場は低い。上役の指示には従って貰う」
「この休暇はルーレシア様達の指示でもありますが」
「休暇中に何をするかまでは決まって居ない」
「……はあ。……分かりました。それで、報酬はどのくらい貰えますか」
「は?……報酬?」
「今回は、休暇中にヴィル様から仕事を受けた、という形にしましょうということです。私も無条件に仕事を受け続けたくはありません。やりたい事も有りますし」
「……そうですね。では、今回の仕事は~という内容で、報酬に小金貨2枚を出しましょう」
侍女としての給金が小金貨3枚なのを考えると良い値段か。だが、それこそ、
「魔工場の見学許可が欲しいです」
お金等、給金分で十分だし、それこそ匿名で魔女の薬でも売れば大金貨も余裕で稼げる。そもそも使い道がそんなに無い。
「見学許可ですか……。それはアルタルフ様に一声許可を得てからでしょうか。ですが、蛇の鍵を渡される位です。すぐに許可はおりるでしょう。貴女なら忍び込むのも簡単でしょうに、律儀ですねえ」
「簡単に手に入る手段が有るのにわざわざ危険は犯したくはない。ヴィル様も居ますし」
「では、そのように」
また、下らない。気にする価値も無い集団、底辺技術者を。粗悪品をキャンサー家を騙って売るって?量産品の方もLvは低いしそこまで品質も変わらないだろうに。治安維持隊にでも任せれば良いものを。恐らく、ジェミニ家の密偵だろうが、増えたな。ヴィルはやり過ぎ。後、リーブラ家もか。恐らく、人口調査。国との契約者、国民の管理もリーブラ家の仕事だし。
終わったら、報告書はヴィルの部屋に置いておこう。そのまま休暇一杯は家に戻らない!
「……どうだ?」
「……分からない。ヴィルという奴が指示だししているのは掴めたが、実行者が分からない」
「普通逆では?こちらは、キャンサー家に何かしらの不利益を与えているのは確認した」
「だが、正直手詰まりだな。ここまで綺麗に隠れられると手に負えない。この会話すら聞かれて居ない保障は無い」
「……」
「そういう物だ」
「では、別の話だが、調べている途中別の事が判明した。詳細はこれに」
「そういう事か……。では、山羊と瓶、こちらとそちらに話を通そう。魔導国も大きく変わるかね……」




