結婚
ルーレシア様は34歳になった。アルタルフ様は50歳だ。
アルタルフ様はぎりぎりの年での結婚で、まあ婚約の時よりも落ち着いたと思う。
わあぁぁぁぁぁ。
「おめでとうございます。ルーレシア様」
「ありがとう。ヤウ。始まりはこの結婚が政略だとしても私は絶対に幸せになるからみててね」
花嫁は純白の衣装で誓いを行った後、相手の色のドレスに変わる。ルーレシア様は美しい青のドレスに暗めの赤がアクセントに入る。
「……シア。私に聞こえるように言わないでくれ。私はシアの事を大切に思っているよ」
アルタルフ様は、新郎の方が華やかさに欠けるのはいつでも同じだ。深い青から緑がかった青。海のような色あいの服。
「あら、ルフ様。私は始まりは、と言いましてよ。ルフ様が私を大切に思っているのはこの4年でよく分かっておりますわ。だからこそ私は幸せになると確信していますわ」
「フッ。そうか。それは私も頑張らなければな。では、ヤウ嬢この辺りで」
「はい」
挨拶回り。自分はそこまで身分は高くないが、ちかしい人と言うことで始めの方で挨拶出来たが。もう抜けて良いかな。
「ヤウ嬢」
来た。
「はい。ヴィル様」
悲しそうな顔をしながら近づいてくる。
「いい加減、様を外してくれないでしょうか」
「表情に違和感しか有りません。大袈裟過ぎです。また、このような場でその顔は辞めたほうがよろしいかと」
すっと無表情に戻る。だから、こういう時こそ丁寧に表情を変化させないと〈演技〉は育たないと思うが。
「ヤウの演技指導は厳しいですね。では、ヤウならどうします」
どうって、眉を下げつつ目の下は少し力を入れて、口角は保ちつつ唇はきゅっと締める。
「寂しく思いつつも、結婚が喜ばしい表情です」
「くっくっ。……私には分かりません」
「そうでしょうね。こんな偽りの表情がヴィル様に伝わるはずも無いでしょう」真実では無い。
「……そうですね。ですが、必要な事も有ります。……美しい花を射止める時とか」
ふむ。
「理解してくれる方を口説けばよろしいかと」
「そんな奇特な方そうそういらっしゃらないのが現実です」
チッ。
「居ない訳では無いでしょう?……心当たりは?」
「そうですね。やはり少々毒舌な位が自分を見直すのによろしいでしょう。それだけよく見てくれている証拠でも有ります」
毒ね。よく見える、か。
「一本芯を持った方や、周囲を動かせるような方は良くも悪くも自分が主体ですからね。他者に任せます」
ああ。武器持ちの暗殺者や周囲を混乱させる役の敵は自分以外の仕事人が殺るのか。
「貴女はどうですか?」
「……私は毒を吐くような相手などごめんです。目の前に現れる事すら嫌ですね。……ああ。私は少々、お花を摘みに」
「ええ」
綺麗な毒花を摘み取りに。
毒は、と。そこそこ。やっぱり麻痺が上で毒はおまけ、それから沈黙。本命は暗殺者かな。動けないようにして、念のため毒でもHP削っとこうって?
まあいいや。戻ろう。
結婚式はキャンサー公爵家で。
よく、神殿とかでやるかと思われるが、本当に神様がいるのに神様に誓っちゃうと本当に離れられなくなる。滅多に離婚は無いとはいえいざとなって逃げられなくもなる危険が有るのは避けたい。
結婚は契約なので、進行はリーブラ侯爵家に頼む。
「おはようございます。現在の時刻は11時程。ルーレシア様、湯浴み、軽食のご用意は済んでおります」
「……ヤウ」
「……!ルーレシア様?声、が……大丈夫ですか?風邪でしょうか。……は、申し訳ありません。すぐに薬を」
「……ヤウ。……大丈夫だ。シアを先に湯に入れてくれ。私には軽食を」
「ああ。アルタルフ様。はい。すぐに。ヴィル様」
「はい。聞きました。アルタルフ様はこちらへ」
「私はヤウに何かしたか……?」
「ルーレシア様……私が運びます」
「大丈夫、よ……。すぐ隣だし」
「いえ。ルーレシア様は羽のように軽いので問題ありません。では、失礼します」
「きゃっ。や、ややや、ヤウ?」
「やはり、喉の様子がおかしいですね。後で阻害属性魔法使いにみて貰いましょう」
「こ、これは、その。……ヤウ?初夜を知らないの?」
「いえ。存じておりますが、……下では?……まさか、上も。そんな生産性の無い……!」
「ち、違うわ!ごほっけほっ……」
「ああ。申し訳ありません。今はゆっくり休みましょう。大丈夫です。それから、そうですね。4階の東の部屋が良いでしょうか。準備させますので」
「けほっ。ヤウ?いえ。私はルフ様に酷い事されたとかじゃなくて、むしろよくって、じゃなくて。声、声を出しすぎただけですわ」
「?」
声?やっぱり、声を上げる程痛いのか?想像がつかない。よくってって何?むしろ記憶では気持ち悪い感じしか無かったが。
取り込んで他者の記憶を自分の物に出来るとは言え、人は特に感情まで正解に記憶しているとは限らない。思い出補正や、冷静に思い返して見れば、という事も有る。




