婚約者
「どちら様でしょうか」
「はぁっ!」
向かった先はキャンサー公爵家の一室。ルーレシア様が婚約者のアルタルフ様とお会いする間に呼び出された。
豪華な調度が置かれた部屋。Lv自体も高い上にセンス良く飾られ豪華だが下品ではない。
目の前にはこれまたLvの高い男。ダークブラウンに淡い色の目。と言うか、アルタルフ様の側近。そういえば、昔会ったな。たしか、
ヴィル・プレセペ。
「ヴィル・プレセペです。一応、ヤウ嬢の婚約者でした」
「はい?」
「……知らなかったのですか」
「はい」
「まあ、どちらにせよ変わりません。貴女との婚約は破棄されます。と言うか、なかった事にされました」
「はい」
……んん?
「これは私が望んだ事ですので、直接お伝えせよと」
「はい。了承いたしました」
「……。貴女は誰にも、ルーレシア様にさえ心を開かない。本当は一目惚れだったのですが。人形に恋するとは何とむなしい事か」
「……」
「しかし、貴女の主と私の主は結婚します。申し訳ありませんが、これからよろしくお願いします」
「はい。……いえ。申し訳なく思う必要はありません。立場としてはそちらが上司となるでしょう。こちらこそよろしくお願いします」
「ええ」
「一つ、よろしいですか?」
「ええ、どうぞ」
「私が婚約して居た事は知りませでした。そして今、婚約破棄。畏れ多くも私がアルタルフ様の愛妾になる可能性は?」
「……ございます。ですが、基本的に貴女はルーレシア様の侍女です。結婚後、アルタルフ様と同じ立場になるルーレシア様の許可なくお手つきになる事は有りません」
「……分かりました」
やられそうになったらやり返して逃げよう。
「貴女なら公爵相手でも逃げられそうな気がしますよ。学園での話は聞いています。貴女がやったのでしょう?」
どきっ。ってするからやめて欲しい。
「何故そう思ったのですか?私が出来ることでは無いでしょう」
「……勘、ですかね。動機も分かりやすい。そして、新たな魔法や魔道具は大抵それまでの常識を覆す物なのですよ」
「そうですか。ですが、私は道理に合わない事など何もしていません」
「……くっくっく。そうですか。貴女の道理は他と少々違うようだ。人としての道理を棄てた魔女のようです。くっくっく」
「……では」
「ヤウ。ここで学園の時のような騒ぎは許しません。あれでパイシーズ家は影響力を落としました。ですが、私から貴女に仕事を依頼する事がある事を覚えておいてください」
「……分かった」
「ええ。貴女が何者かは問いません。ですが、嘘は程々に。固有能力は神様の加護。自分の力を過信してはいけませんよ」
「……」
視る。
ヴィル・プレセペ 103歳 神人種 Lv97
【固有能力】
幸運 慧眼 雨垂れ
幸運:Fortune waits on honest toil and earnest endeavour.運が良くなる。
慧眼:本質を見抜く。言葉の中の真実のみを拾う。
雨垂れ:したことすべてが経験になる。(主人公の【読書百遍】と同じ効果)
神子か!
神子とはいえ側近か。進化もしていないのは分かっていたから油断した。
そして、また固有能力が厄介だ。嘘じゃない文ならなんとでもなるが、的確に真実だけを拾うのはごまかしが利かない。
そして【幸運】も、単純な分強力だ。恐らくこんな地位に居るのもこれのせいだろう。正直で真面目な働き者な間は運が味方をする。運なんてタイミングもなにもよめないのに。
正直、【雨垂れ】は時間が無いと有効に使えないから気にしない。
……うん。殺ろう。
「……神託……ですか」




