第7話 神様は提案する
「エンリル様、武具のご入用ですかい?」
突然、髭のオッサンが現れた。
まーた神様が増えたよ。
美人ねーちゃんの神様なら大歓迎だけど、オッサンが多すぎじゃねぇ?
そろそろ把握しきれんぞ俺。
「ヘパイストス。実は今回の≪神々の遊戯≫、戦力に差があってな。鍛冶の神であるお主の武具を、チーム高天原に貸しては貰えぬか」
「…ほう」
ヘパイストスと呼ばれた髭のオッサンがこちらを見た。
値踏みするような目つきだ。
「俺の武具を、人間にねぇ…」
「な、何かありますかね? 勝手に戦ってくれる剣とか敵の攻撃を絶対通さない盾とか、そういうスゴいヤツを是非!」
今までのオッサン神と違って、このオッサンはいかにも職人気質って感じだ。
つまりなんだ、この人も怖い。
「あ、あたしも貸して欲しい…んですけど…!」
ウズメも控えめに主張する。
あー、キミも怖いのねこの神様が。
「ふん、ダメだな」
「えええええ!?」
「そんな…!」
ちょ、どういう事だ!?
「貸せぬか、ヘパイストス」
「意地悪で言ってるわけじゃねぇんですよエンリル様。人間なんかに扱える武具が手持ちにないんでさ」
「あ、あたしは何でダメなんですか? 神ですよ!」
「同じだよ、戦闘タイプの神でないお前に使える武器も手持ちにない」
つーかウズメ、お前って何だかんだで俺と扱い変わらないよな…。
ホントに神様かよ。
「なんだよオッサン! 武具のエキスパートみたいな感じで出て来たくせに、ロクに持ってないんじゃないか!」
「あぁん?」
ひっ!
思わず叫んでしまったがオッサンに睨まれたので慌ててアマノウズメの後ろに隠れた。
「こっ、怖ぇ~」
「キミねぇ…」
「小僧、超一流の俺が作るのは強くてカッコいい武器ばかりなんだ。お前らなんかが扱えるような半端な品は作ってねぇよ」
片手をひらひらさせながらへパイストスのオッサンが言う。
「ちっ、自分で超一流とか言ってんじゃねぇよ…!」
ウズメの尻の影から顔を除かせながら小声で文句を言う俺。
「タイチくん、不満があるならもっとハッキリ言いなさいよ…」
「つか、どうすんだよウズメ! 武具も借りられずに、このままじゃ死ぬぞ俺!」
「う、それは…あはは…どうしよっか?」
だいたい、武器があってもどうなるか分からんのに。
「え、エンリル様? 他に武器を貸してくれる神様はいないんすか?」
「そうだな…ふむ、この際パンテオンの武器屋で買ってくるか」
「武器屋なんてあるんすか!」
「ここ最近、戦もないのであまり品揃えは良くないがな。棍棒とか銅の剣とかなら売っていたはずだ」
RPGの最初の町かよ!
棍棒でゼウスやオーディンと戦えってか!?
「まぁ待てや小僧、俺は貸せねぇがアテならあるぜ?」
「…え?」
ヘパイストスのオッサンの意外な言葉だった。