第2話 神様は反省する
「頑張って戦ってね!…じゃねぇよ! なんで俺がそんな事しなきゃなんねーんだ! つーか、ここはどこなんだ!?」
「ここは神々の住む世界『パンテオン』。キミの周りにいるのはみーんな最高神クラスの超エライ神様だよ。キミ、さっきオーディン様の事を睨んでいたけど、無礼な態度でいると消されるよ?」
「なっ…!」
一回のセリフの中に色々と情報を詰め込まれたぞ。
えーっと…。
「神様の世界!? この半裸のオッサン達が神様…?」
チラリと視線をやるとさっきの白ヒゲのオッサンが目に入った。
半裸…神様…ひょっとしてあのオッサン、ギリシャ神話のゼウス様か?
「うん、まぁ神様は露出度が高いよねぇ。あたしも人の事は言えないけど」
「ってことは、キミ…いえ、あなたも神様?」
「いかにも! あたしは芸能の女神アマノウズメ! 人間よ、敬いたまえ! さもなくば神罰が下るぞよ!」
なんてこった。
さっきまでラーメン屋でチャーシューメン食っていたハズなのに、なんで俺はこんなトコ来ちゃってんだ!?
つーかまだチャーシュー食ってねぇぞ!
「ええっと、それでアマノウズメ様? なんで僕なんかが、その、なんとかってバトル大会の代表戦士なんでゲスかね、げへへへ」
「…キミ、いきなり謙ったりして気持ち悪いなぁ…別に神罰なんか下さないから、さっきみたいな感じで喋っていいよ。あと、アマノウズメだと長いからウズメって呼んでね」
こいつ…神罰とか自分で言っておいて…まぁいい。
「じゃあ…ウズメ。何で俺があんたの国の代表戦士なんだ!? フツーの高校生だぞ俺は!」
「それはね、まぁ事故っていうか…あはは」
「はぁ?」
ウズメの話はこうだ。
≪神々の遊戯≫の代表となる人間はその『国』の最高神が選ぶらしい。
代表に相応しい、強さと人格を備えた戦士を探して召喚するのだ。
だが高天原の最高神アマテラスは引きこもり癖があり、代表の戦士を探して選ぶ役目をウズメに押し付けて部屋に閉じこもってしまった。
普段からアマテラスのワガママに不満のあったウズメ。
この日はとうとう我慢の限界で、テキトーに代表戦士を喚びよせたそうで…。
「あー…、つまり?」
「つまり、むしゃくしゃして喚んじゃったのよね、キミを」
「なんじゃそりゃ! ふざけんなよ!」
「やー、ごめんごめん! 今は反省している! みたいな!」
みたいな、じゃねっつーの!
そんな理由で人間を神様の世界になんか喚ぶんじゃねぇ!
「しかもよく分からんバトル大会で神様と戦えだ? お断りだ! 俺は帰らせてもらう!」
「それは認められんな」
突然のシブい声に驚いて振り返ると、いつの間にか俺の後ろに浅黒い肌をしたオッサンが立っていた。
この人も上半身裸である。
「人間に≪神々の遊戯≫参加への拒否権はない。選ばれたからには戦ってもらうぞ」
「んだと!? そんな勝手な…むぐっ」
「あ、はい! 大丈夫ですインドラ様! 彼ってば口ではこんなこと言っていますが実は超やる気ですから! ビンビンですから!」
オッサンに文句を言おうと立ち上がった俺の顔を、ウズメが胸の谷間に押し込んだ。
ふおおおお! デカい! 柔らかい!
「ふん、それならば構わんがな。皆が待っておる。早く用意しろ」
「かしこまりましたぁ! もう少々お待ちを…! ふーーーー焦ったぁ。ちょっとキミね、インドラ様に口答えとかやめてよね!」
「ふぁ…い」
ほんの数秒だったが、ウズメのおっぱいは俺から反論する気力を奪うには十分な破壊力だった。