息子帰村報告。(可愛らしい便箋で。)
双子の友人を召喚した日から、二週間経ったある日の事。
「おやまぁ。今日帰ってくるのかい。随分と急だねぇ。」
シトが宿泊している宿屋<竜星の隠れ家>の女主人、シーラが一枚の白い紙を見ながら呟いていた。
「手紙か?可愛らしい便箋だな。」
「あぁ、すまないねぇ。口に出てたかい。コレは旅に出たバカ息子から来たんだけどさ、今日仲間と一緒に村に帰ってくるらしいんだよ。」
可愛らしい便箋はその仲間に選んでもらった物らしいよ。
そう呟くと同時にシーラは米神を揉んで長い溜め息を吐く。
因みに「あんた年下に見えないからさ、敬語は止めてくれないかい?」と真顔で言われたので、それ以降シトは敬語で話すのを止めている。
彼女が言うには「オレは将来冒険者になる!!」と言いながら村を飛び出したらしい。
本当にそんな事をする人間がいるのか、と呆れている間にもうその姿が見えなくなったのだと。
どうせ少ししたら帰ってくるだろうと思っていたのだが、予想に反ししっかりと冒険者になっていて尚且つ仲間達と共に冒険を繰り広げている。
端から息子の体の心配はしていないが、仲間達に迷惑を掛けていないかの心配はしているシーラは定期的に手紙を出せと頼んでいた。
その手紙が今回は帰村報告だった。
「急に言われてもねぇ。用意できる物なんて無いよ。」
「はぁん。その、仲間達ってのは何人来るのか解ってんのか?」
「5人だとさ。普段からがら空き状態で、今もシトの若君しか居ないってのに、まったく。」
「おい、若君は止めろ。別に俺は偉くねぇよ。」
「さて、どうしようかねぇ。若君、何かいい案あるかい?」
「いや、だから・・っ。・・・はぁ。ソルティナ。ルナリス。」
シトはシーラの自分に対しての呼び方の抗議を諦め、日に日に使用人化してきた精霊達を呼び出し用件を伝える。
「ちょっくら森の奥に行って何か狩ってこい。・・・そうだな。ランクBぐらいで頼む。余裕があれば果物や野草なんかも採ってこい。」
「了解した。ついでに害虫駆除でもしておこう。」
「解りました!美味しい物沢山採ってきますね!」
「結界は壊すなよ。」
「「はい。」」
命令を受け、二人は消える。
「本当に悪いねぇ。」
「別に謝る事じゃねぇだろ。食べ物に関しては俺にも関係してることだからな。」
「食材の事もだけど、森の事もあんたが結界を張ってくれたお陰で村の子供達が安心して遊べる。村の連中は皆あんたに感謝してるんだよ。」
「・・・そうか。なら俺のしていることは無駄じゃねぇな。一応村に置いていもらっているし、少しは恩返ししねぇと。」
「真面目だねぇ。もういっそのこと、この村に住んだらどうだい?馴染んでいるし。」
シーラが冗談半分にそう提案を出せば、案外いい話な様でシトはその後双子が大量の荷物を抱え帰ってくるまで考え込んでいた。