自分の身体が、大変な事態になっていた。
二階に上がり、先程渡された鍵を使いドアを開けた。部屋の中を見渡せば、寝具と小棚があるだけのシンプルなつくりになっている。
所々に花が活けられた花瓶や観葉植物などが置いてあり、窓には薄紅のレースのカーテンが飾られていて、華やかな印象の部屋に見える。
宿の外観を裏切るような内装に遠夜は、彼女のセンスは凄いなと、感心する。
寝具に腰掛け、遠夜はポーチの中を漁り銀色に輝くカードを取り出した。
「ギルドカードはそのままだな。さて、中は・・・」
《シト》
竜人 男性
1023歳
冒険者ランク<S>
Lv.100
<職業> Main 召喚師
Sub 錬金術師
<プレイヤースキル>
復活体質
教員・師範
知識の竜
神の恩恵
「・・・・・。」
何だか凄いことになっていた。
ステータスはゲーム時代とあまり変わっていないが、自身の年齢とスキルの一つが増えていた。
「・・・あー。<神の恩恵>の方はなんとなく解るが、1023歳って。」
これが本当の事ならば、この世界<インディヴァール>は、ゲーム時代より1000年後の世界になるという事か。
遠夜は、スキルの一つに手で触れる。
<神の恩恵>
異世界人が主神ダグリムによって、
召喚されるときに与えられたもの。
これにより、ゲーム同様の種族、レベル、
ステータスを受け継ぎ、不老となる。
「何だこのチート感。つうか、主神が呼び出したのかよ。」
遠夜は、呆れたように溜め息を吐く。
この分だと、他のプレイヤーも召喚されているだろう。
「あ!にーちゃんだっ!」
「おや、どこかに行くのかい?」
下に降りると、先程遠夜の手を引いていた男の子と、シーラがは話し掛けてきた。
「ん?さっきの・・・。」
「おれは、ガイっていうんだ!にーちゃんの名前は!?」
「俺か?俺は・・、シトだ。よろしくなガイ。」
自身の本来の名を伏せ、アバターで使用していた名を名乗った。
ガイと名乗った男の子は、赤い髪と金の目、狼の耳と尾をもつ人狼族の子供で、今はその鋭い目をキラキラさせながら、遠夜を見上げている。
「シトにーちゃん!なぁなぁっ、にーちゃんはこの村に何しにきたんだ?なんもないだろ、ここ。」
「こら、そう言うんじゃないよ。けどそれは私もおもってたね。どうしてだい?」
確かにここベルム村は、近くに三つの国の間にあるメウンの街があるせいか、ほとんど人が来ることがない。ただこの村には、他にはない特徴がある。
「俺は、ここに精霊を呼び戻そうとおもってな。」