落ち着いているように見えて、内心は驚いてるぞ?
いわゆるトリップもの。
「あー・・・。空がキレイだ・・・。」
漆黒の黒髪を靡かせ、普段無表情でいる鋭利な顔は、突然の出来事に少々歪んでいる。
彼の名は小鳥遊 遠夜。23歳の大学生である。
今日も自分は、いつもの様に大学に行き、いつもの様にパソコンに向かい、長年続けていたMMORPG<Benefit of God>通称BOGを起動した。
MMORPGは、正式名称を<Massively Multiplayer Online Role Playing Game>と言い、大規模多人数同時参加型オンラインRPGとも称される。常にゲーム世界が存在し時間が流れ、たとえプレイヤーが一人も接続しなかったとしても、ゲーム世界が存在し続けている。
そんなMMORPGの中で大勢の人間が参加しているオンラインRPGが、<Benefit of God>だ。
10年続く大作で、自分でアバターを作成する事ができるキャラクターメイキングのパーツが細かく、そして豊富にあり、人間やエルフ、魔族や獣型など八種類の種族が選択可能。
職業も多彩で、メインとサブの職業を選ぶことができる。メインの下位職業は6種、サブは8種。メインの職業はクラスチェンジ可能で、中位、高位とチェンジする。
外観や見た目もクオリティが高い。着せ替えることも出来、自分だけのアバターが作成できる。
もちろんダンジョンや戦闘も魅力的で、日替わりダンジョンがあったり同じ職業のプレイヤー同士で、合体技、合成魔法など出来たりする。
そんなBOGの始動開始時期の、いわゆる廃人プレイヤーの一人が遠夜である。
「どうなってんだこりゃ。つうか、何処だここ。」
周りを見渡しても草木ばかりであり、自分がいる場所さえ解らない。しかも日本にはいないであろう獣を、チラホラ見かける。考えたくはないが、ここはやはりゲームの中であろう。
「あいつが此処にいたら、トリップものだって瞳をキラキラしながら悶えるんだろうな・・。」
ゲーム仲間であり中学時代からの付き合いがある友人の顔を思い浮かべ、思わずため息をつく。
改めて周りを見てみれば、ひとつだけ変わった樹木があった。
「これは、透蜜花の木か?これがあるっつうことは、ここは<イルシーヌの森>か・・・。なら、近くに村があるはず。」
どちらにしろ、此処から動かなければ確信が出来ない。遠夜は、イルシーヌの森を後にした。
主人公は、男前で面倒見がいいですが、
顔は常時無表情です。